神社
「はいここ、私んち。」
連れて来られたのは、ある神社だった。
「ここが九十九さんの家ですか?」
「あー………違うって言ったら違うかも。実家って言った方がいいかな。」
実家って事は……今は別の場所に住んでるのか。
「学校の近くに住んでるんだ。ここから通う事もできるけど……ちょっと怖いしね。」
「え、そういうの怖いの……?」
「………まぁね。」
神社の娘だったら平気なのだと思っていた。
偏見でごめん。
「まぁ、女子のビビりは男子と違ってかわいーで済むし、いいんだ〜。」
……この人、最初はちゃんとしている人かと思ってたけど、そんな事ないのか。
「で、幽霊払ってくれるの?」
「うん、払うよ。無料でやったげる。」
「ちょ、ちょっと待ってください。」
夏野が声を上げる。
「どうしたの?夏野さん。」
「その幽霊……悪い霊じゃないっぽくて……」
「悪い霊じゃない?」
悪い霊じゃないという事は、良い霊ということ?
……でも霊がついてるって、なんかやだなぁ…
「………滝里さん、最近勉強できるようになりませんでしたか?」
「え、なんでわかったの。」
「……いや、それが……」
「あ(察し)」
「霊のおかげみたいで……」
………なん……だと?
つ、つまり………頭が良くなったのは私の努力の成果ではなく…………
霊の………………仕業……………………だった………………だと?
「…………うーん、どうしよっか。払う?」
「そのままで。」
「まぁそうなりますよね…」
「………だったら良かった。」
「え、良かった?」
「いやぁ、さっきさ、私才能ないって言ったでしょ?それで除霊もできないからさぁ……除霊したとして、もしかしたら滝里さんの人格が飛んでって霊が滝里さんの体に入り込む可能性があったの。いやぁ、良かったぁ。」
………
「先に言えよ!!」
「あ、ご、ごめん…ゆうつもりだったんだけど。」
「ま、まぁまぁ…」
「でも安心して、除霊するってなってても、夏野さんに協力して貰えば大丈夫だったからさ?ね?」
だったら良かった………ってなるか!
あとちょっとで存在が消えるところだった……
「…あ、そういえば……」
完全に忘れていた事があった。
「夏野……アンタ、名前は?」
「え、ああ……言ってませんでしたね。」
「私の名前は、夏野瑞季。私立星彩学園の一年生です。」
最初と違ってちょっと自信がついているように感じた。
「……でも、本当にごめんね…今度どこか奢るから、許して〜!」
「じゃ、高級フレンチね。」
「予算は全員合わせて1000円までです。」
「それどこも行けないじゃん!」
結局、霊は払われぬまま終わったのだった。