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折り畳み傘

 授業が終わって解放されて、先生がやってきて係が配布物を取ってくるまでみんなは自由。他の教室まで遠征に行ったり、ベランダに出て影でビスケットを食べたり、廊下で踊ったり、終礼が始まるのが地味に遅いのはこの収拾がつくのが遅いのが原因だと確実に言える。

 黒板には人気Kpopのキャラや、アニメのキャラなどが描かれもうごちゃごちゃ。掃除の人は大変だと思ったら、今日が掃除だった。黒板は避けておこう。


「配布物、暇な人手伝ってあげてくださーい。」


 いつの間にか先生と配布物がやってきていた、ちょっと多めらしく係の2人じゃ手が足りていない。とはいえ、私は席を覚えるのが苦手でいちいち表を見ないと配布物なんてできっこない。みたところ全員配布のものはなさそうだから、心の中で謝りながら数学のプリントに取り掛かった。

 3分ぐらい経って顔を上げると、一番前の席に配布物が溜まっている。それもそうだ、みんな遊びに出払ってるから回してくれる人なんているわけがない。仕方なく立ち上がると、1人分ずつ分けて机の上に置いていった。立ったついでに他の列の分も整理しておくのは、さっきの罪悪感からじゃ絶対にない。


「座ってくださーい。」


 先生はそう言うけれど、全く変化はない。それはそうよね、他のクラスやベランダにいたら聞こえるわけがないし、他の人がのんびりしてるのを見たら自分も大丈夫って感じるものだもの。

 配られたプリント類を確認したり、宿題プリントの総仕上げにかかったりしていたら、結局授業終了後20分で終礼が始まった。何人かいないけど。


「じゃあ、配布物確認します。3枚全員配布のものがあったよね、白いB5が2枚と小さなカードが一枚。大丈夫?全員持ってる?」

「先生、2枚たりませーん。」

「じゃあ、ここに余ってるから回してあげてくだ」ガチャッドタドタ


 大きな音がして、行方不明者3名が生還を果たした。手に持ってるものから考えて、購買部で何か買っていたみたい。


「すいません遅れました!」

「「すいません!」」

「はいはい、席について。配布物確認をしてただけだから。」


 こう言うことはちょくちょくある、だから先生も慣れたもので大人の対応。まあやらかすのは決まった人ばかりだけれども。

 連絡事項はたいしてなかった、スマホを返却して(スマホの使用は禁止されてて、朝礼で教師に返却する。)あとはお祈り。


「お祈りします、天の父なる神様……」


 出席番号順に毎日終礼でお祈りをするのがこの学校の伝統。お祈りと言っても簡素なもので、30秒くらいの簡潔なお祈りが多い。時には周りに急かされて早口かつ簡素なものを10秒以内に終わらせる猛者もいたりする。


「「「「アーメン。」」」」

「それでは立ってください、挨拶をしましょう。」

「「「「ご機嫌よう!!」」」」


 挨拶をすると教室が一気に動き出す。まず第一に各自、自分の机を押して前に集めて、それから完全なる自由。私は黒板にならないように掃除ロッカーに箒を撮りにいった。


 ウィーンウィーンウィーン


「……なんで?」


 結局私は、何がどうなったのか黒板消しをクリーナーにかけている。ロッカーに行ったまではよかったのに、途中で捕まって遅くなったら箒やらモップがすっかり無くなってて、黒板しか残ってなかったのだ。1日使った黒板消しの裏側は真っ白で、指で突くだけで溜まった粉がパラパラ落ちていく。こんなので先生もよく黒板を支えたものね、もはや先生方の気にしなさに恐ろしささえ覚えてしまう。

 黒板に描かれたキャラクターたちが命乞いをする中、どかどか抹殺していると顔に粉が降りかかって、ちょっとむせてしまった。

 あらかた消し終わり、チョーク置き場に溜まった粉を片付けて後ろを見ると、机が元の位置に戻っている。ちょうどゴミ箱を誰が空にするか相談しているあたり、掃除はすぐに終わりそう。あ、ゴミ箱を持って1人が廊下に出た。


 ゴミ箱が空になって戻ってくると、掃除は終了。これで帰れる。


「うわぁ、部活始まってる!!」


 部活の放課後活動がある子は、慌てて出ていったところを見るとステージ系だろうな。放課後は、部活に行ったり職員室に行ったり、お菓子を買いに行ったりみんな気ままに過ごしてる。

 私は荷物を抱えて窓の外を見た。部活が始まってるわりに外から声がしないと思ったら当たり前、雨が降ってて校庭がダメなんだ。


「あ、バイバイ。」

「また明日。」


 友達とすれ違って手を振る。でも彼女はミシンを両手に持ってて手を振りかえすことができなかった。


「じゃね。」

「ん?あーまたね。」


 今度も手を振ったが、2メートルくらいのベニヤ板を重ねて持ってて相手は無理だった。

 女子校の女子は逞しい、女子力が抜けて本能のままに生きる。だから女子校は楽しい。

 多性の目を気にして、モテたいからってわざと女の子女の子しなくてもいい。リラックスして、ありのままを曝け出して、学生のうちだからこそ、学校に守ってもらって青春を謳歌する。男女関係にも憧れる、けどそれだけがリア充じゃない、私たちはみんなリア充なんだ。


「ウィーーー!!」

「ちょっ、何その声ww。」


 階段をずっけこけて出る悲鳴、なんとも間抜けで面白おかしい。


「いえーい!!」

「危ないって、あたしもするけど!」

「やめなさい、あなたたち!!!」


 中央階段の真ん中の手すり、またがって滑るのを注意されるだけで済ませられるのは今だけ。

 今だからこそできる、いろんなこと。青春はその時はわからないって言うけど、なんとなく分かる。この生活は青春でリアルに充実してる。


「でも……。」


 下駄箱を見た、そこにあるのは上履き。今日も学校には来ていない。

 ポツリと、言葉が溢れでる。


「また、一緒にご飯食べようね。」


 久しく会ってない私の親友。この子のために私はノートを人一倍慎重に取る、学校で起きたことを覚えてる、毎日学校に来る。

 久しぶりに来て、一番に笑いかけられるのが私であるように。


「今日も色々あったな。」

 

 お願い神様、みんなが、あなたの手から1人残さず全ての人が、リアルに充実した日々を過ごせるように、私たちをお守りください。


 カチャ


 空に掲げた折り畳み傘は、誰かの流した涙から私を庇ってくれる。

無事完結しました!

最後まで読んでいただいてありがとうございます。

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