表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

あと一滴

 英会話の授業は楽しいと思う、だって話して、ゲームしてっていうのが中心だから。普通の英語の授業は興味深いといえばそうだし、つまらないかと聞かれればそうでもないよって答えるくらい。要は大してやりたい、とは思えない。悪いってわけじゃないけども小難しいテストとかクソ真面目な例文とか文法とかみてると気が遠くなってくるのよね。


 授業も終わり、教室に帰りながら考えてると財布を握って廊下を走る人影が横を通過していった。うちの学校にはお金を使う場所が2箇所ある。コンビニと購買部の二つ。購買部は休み時間と放課後の早い時間、つまりほとんどの時間に混む。並んでる間に金がなるってことも結構あるらしい、私は混雑時間を避けていくから幸いそれに遭遇したことはほとんど無い。

 教室に戻ると、私の席ではまだ前の授業の子が懸命にノートを写していた。隣にいる子が黒板を読んでノートを写すのを手伝っているあたり、メガネ、コンタクトを忘れたって考えるのが妥当かな。私は近付いて端にノートを置いた。


「Without for if there were not for〜、あ、ごめんすぐよけるね。急いで急いで。」

「急いでるのー、後ちょっとだから、ちょっとだけ待って。」

「気にしないでいいよ、私隣の椅子借りようっと。」


 嬉しいことに、お隣の人は教室の後ろの方で遊んでいる。……待って、なんで学校にスライムがあるの?パソコンのキーボードの汚れ取りには使えるけど、とにかくなんでスライム?なんだか予感がして、席を立ち窓に近づく。ブラインドをそっとあげて外を見ると案の定いた。ベランダにしゃがみ込んでスライムを洗面器で作ってる人。

 もはや何だか愉快になってきた私は、窓を開けて顔を出した。


「すごいね、スライム作ってるの?」

「そうだよ、なんかこのスライムすごいベタつくんだ。」

「制服に着いたら大変そうね、ねえちょっと触ってもいい?」

「良いよ、ほらどうぞ。」


 差し出された洗面器に指を突っ込んでプニプニ押して、少し摘んだりする。やっぱりスライムっていいな、ひんやりして気持ち良い。


「ありがと、なんかスライムって懐かしくて触りたくなっちゃったんだ。」

「あはは、そっか。いつでもどうぞ。」


 そこで私は頭を引っ込めた。ブラインドに頭が引っかかってガシャガシャうるさいけれど、どうにか抜けた。

 私の席はもう空っぽになっていた。


 次の授業は化学基礎、実験だったからもういったほうがいいかな。ロッカーからスモッグと安全メガネを取り出して実験室に向かう。スライムでちょっと遅くなったから、何人かの移動する姿が見える。

 とはいえ、何人かだから実験室にはまだ5、6人しかきてなかった。助手の先生がみんなを呼んだほうがいいのかどうか悩んでじれじれしてる。焦んなくたってみんな来ますよ、鐘の後だけど。


「席は黒板に書いてあるのでその通りに座ってください。」

 先生に言われた通りに黒板を見ると、なるほど出席番号順に机に配置されている。机の上から椅子を下ろして準備をする。スモッグを着て、安全メガネ。この時によく観察すると、スモッグの様子だけで割とクラブがわかることがある。

 美術部は絵の具で汚れまくってる、ステージ系で大道具なんかを作ってたら汚れとか木屑。科学部の人はもはやスモッグではなく白衣、ほら、割とわかるもんでしょ。

 安全目が目はつけるたびにイライラする。こんな日だけはコンタクトにすればよかった、と後悔する。メガネの上に安全メガネってすごいやりにくいんだ。あまりの違和感に、私は直前まで安全メガネの装着をしないことを心に誓った。


 キーンコーンカーンコーン


 助手の先生が痺れを切らして廊下に頭を出した。


「おーい、急いでー。」


 その声に応えるようにかみんながゾロゾロ入ってくる。何人かスモッグ、安全メガネを忘れているのはご愛嬌。だけどみんな実験の授業は割と好きな人が多いからかな?静かになるのがいつもよりも若干早い気がする。


「御機嫌よう。」

「「「「御機嫌よう。」」」」


 ガタガタと席について先生の説明が始まる。今日の実験は中和滴定、主な説明は前の授業中にやっちゃってるから流れと実際の道具を説明するだけ。とにかく根気が大切な作業ってことは理解した。


「それでは初めてください。」


 その声でみんな立ち上がる。


「私、道具類取ってくる。」

「おっけ、じゃあ私純水取ってくるわ。」(ついでにこの語尾は下向き)

「それなら私粉末量りとってくるね。」


 流れるように役割分担をして、私は測りのほうに向かう。ここで濃度が変わらないようにしっかりと測らないと実験が台無しになっちゃう。そう意気込んで量り取ると、なんと少数第1、2位がゼロ。一発でピッタリは刈り取ることができた、やったーすごいや。周りからも静かなおおーという声が聞こえる。

 戻ると、正しく洗われた器具たちが鎮座していた。水溶液を作ってセットして、なんの因果か私が滴定係をすることになった。とっても繊細な作業で、責任順大正直やりたいとは思わない。けど、みんなが期待の目でこっち見るんだもの!


「私に任せて失敗しても知らないからね。」

「大丈夫、やってくれるだけでありがたいから!」


 最後の人足掻きをしたけれど、そう言われるともうどうしようもない。諦めてコックに手をかけた。

 最初は程度がわからなくって、一滴一滴遅すぎるように垂らしたり水道みたいにジャーと出したりしちゃった。その度にヒヤヒヤして慌てたけれども、ビギナーズラックが発動。フェノールフタレイン液(塩基性でのみ色が赤色に変わる、この場合色が薄く変わったところで止めるのが正解)がパステルピンクになった。隣のはんはローズ色みたいな感じだからこれは多分大成功。

 でも悲しいことに、ビギナーズラックだからその後の数回はそれ以上色が薄くなることはなかった。


「お疲れ様。」

「うまくできてよかったねー。」

「滴定がうまかったからだよ、ありがとねー。」


 こういう班でやる活動って本当にメンバーが大事だと思う。個人の役割をしっかりやって、話もあってリズムの良い班なんて組めるのは本当に奇跡的なこと。これは1時間だけの活動だからあまり実感しないけれども、長期間活動するとなるとすごくそれは大事になる。

 例えば去年の活動で、私ばっかりがアイデアを出して文章を考えてまとめるってことがあった。2人ともやる気がなくてダラダラするって子じゃなくて、頭から懸命に搾り出そうとしてくれるんだけど、あんまり得意じゃなかったらしい。結果的に私が8割くらい仕事した気がする。そういう班の時はちょっとうんざりしたりする。


 ぼうっとしてたら授業終了。

 4時限目はなんだったかしら?確認すると数学だった。

 数学もグレードでざっくりとクラス分けをしている、私はこれもど真ん中のクラス。数学は1とAがあるけれども、ちゃっかり数学Ⅱに入ってたりする。言わないお約束ってやつかな。


 ロッカーの中を探すけれどなかなか見つからない。昔は教科書のサイズがB5くらいだった記憶があるのになんで今持ってる教科書はほとんどがミニサイズなんだろう。なかなか不思議である、で、そのせいで奥に入り込んで取れないこともしばしば。……やっと取れた。

 一応移動教室だけど、今回の場合は私は教室の移動がない。他の子が行ったり来たりするのをみてると、栄養バーを口に突っ込んで慌ててる子がいた。何してんのかな?先生に見つかる前に頑張って食べて、なんて変な応援をしてしまった。


 ガチャ


 あ、先生きた。

学校の食事確保場所ってどこでしたか?

給食、学食、カフェテリア、売店……いっぱい種類ありますよね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ