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第3話 私とジルベールの事

 私とジルベールの結婚は両家の祖父の取り決めによるものだった。


 その昔、ジルベールの祖父と私の祖父は友人に近い主従関係にあった。2人はとても仲が良く、結婚して互いに子供が生まれたら結婚させようと約束を交わしたのだが、生憎両家の間には共に男の子しか生まれる事は無かった。そこで2人は自分達の子供が駄目なら孫を結婚させようと息子たちの許可も得ず、勝手に決めてしまったのである。そして生まれたのが私とジルベールだった。つまり、私達は生まれた時から結婚する事が決定されていたのだった。



 物心がついた頃から私は祖父に言われていた。


『リディア。お前の結婚相手はジルベール・クレメンスと言う方と決まっている。尤もお前がこの先、どこの誰と恋愛ようとも私は構わないし、一切の文句を言わない。ただし、絶対に結婚相手はジルベール様だ。この約束だけは何としても守ってもらうからな。それ以外はお前の好きにするとよい』


 

 私の結婚相手はジルベール様…。

両家の祖父によって決められていた結婚だったが、不満や反発心と言った類の気持ちは全く無かった。何故なら祖父はとても立派な方で、私が最も尊敬していた人物だったからである。祖父が決めた結婚相手なら、きっとジルベール様は素晴らしい方に違いないだろう。

そして私は心に決めた。

ジルベールの妻として、彼の役に立てるような立派な女性になろうと。

そこで子供の頃から家庭教師をつけてもらい、一般教養を身に着け、領地経営の勉強を必死で頑張った。


それこそ、祖父が話していた『恋愛』など、見向きもせずに…。


私の結婚する相手はジルベール様なのだから恋愛など不要。私達は良い夫婦になれるだろう。きっとジルベール様も同じ気持ちに違いない。


そう信じていたのに…。



****


 

 ジルベールの部屋を目指して長い廊下を歩き続けていると、数名のメイド達に出くわした。彼女たちは私がジルベールの妻である事を知りながら、挨拶すらしてこない。何故ならその理由は…。



「あら、見てよ。ジルベール様のお飾り妻よ」

「未だに正式な夫婦になっていないそうじゃない?」

「ええ、何と言っても結婚式の初夜の日にジルベール様は酒場に行ったのよ」

「余程あの女との結婚が嫌だったのね」


クスクス笑いながらこれ見よがしに私が聞こえるようにメイド達は話をしている。


「…」


私はそんな彼女達の会話を無視して遠り過ぎる。するとさらに私に対する陰口がますます大きくなっていく。


「ほんとに気の弱い人よね」

「私達、メイドにすら何も言い返せないのだから」

「さっさと離婚して追い出してしまえばいいのに…」

「やっぱり私達の女主人になってくれる方はイザベル様しかいないわね」


イザベラ…。


その言葉に一瞬反応してしまった。イザベラと言うのはジルベールの愛人であり、私と結婚する前からジルベールが交際していた相手であった。そして2人は私に隠すことなく堂々と今も愛人関係を続けていたのであった。

そして、このイザベラのせいで私は結婚するまで一度もジルベールと会ったことは無かったのだった…。



****



「ジルベール…」


ついにジルベールの部屋の前に辿り着いた私は足を止めた。この部屋の中に彼は愛人のイザベラと共にいる…。


私は深呼吸して、息を整えると扉をノックした―。


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