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第27話 文句を言うなら食べるなっ!

 午後2時―


「ふぅ~…やっと事務仕事は終わったわ…」


ペンを置くと、大きく伸びをした。全く…あの馬鹿なジルベールのせいで業務が滞ってしまった。本来なら午前中に終わらせておく予定だったのに…。そして私は傍らに置いた報告書に目を通した。


「えぇと…これは『カヤ』の村からの相談ね…。村で飼育している家畜の食欲が落ちている…。う~ん…この村には獣医さんがいないから、『シェロ』の村に住む獣医を連れて行った方が良さそうね…それじゃ出掛けようかしら」


席を立とうとしたところでノックの音が聞こえた。


コンコン


「誰?」


「僕だよ、ジルベールだよ。入っていいよね?」


ジルベールは私が返事もしていないのに、勝手に扉を開けて中へ入ってきてしまった。


「リディア、また来たよ」


ニコニコしながら私の座る机に向かって歩いて来るジルベール。もはやその顔を見ているだけでイライラが募って来る。


全く…転んでしまえばいいのに。


思わず心の中で毒ずくと、何と言う偶然。少しだけめくれていたカーペットに躓いてジルベールが転んだ


「うわああっ?!いてっ!」


ドタッ!!


無様に顔面から転ぶジルベール。


「イタタタタ…」


しかし、やたら毛足の長いカーペットの上だったから、ダメージは殆ど受けなかったようである。


「アハハハ…痛かった。ちょっと驚いたけど、大丈夫。心配しないでいいからね?」


私の視線に気づいたのか、ジルベールは笑いながら立ち上がる。


チッ…無傷だったか。


別にこれっぽっちも私は心配などしていない。逆にこんな事なら大理石の床にでもしておけばもっとダメージを与えられただろうかと考えている位なのだから。


「一体何の用?私は忙しいんだけど。これから出かけなくちゃならないんだから」


サインの終わった書類をトントンとまとめながら私は視線を合わせる事無く言う。


「あ?もしかして出掛けるって…何処か町へ行って美味しい料理でも食べに行くのかな?リディアはまだ食事していなかったものね?あ、僕は食べたよ。やっぱり郷里の料理は良いよね~…でも僕のお気に入りだったシェフがいなかったからかなぁ…以前に比べると全体的に料理の質が落ちている気がするんだよ。ひょっとしてあまり良い食材を使っていないんじゃないかな?」


ジルベールの言葉に頭が痛くなってきた。


ああ、神様。もし、今誰かがジルベールを殴り飛ばしても、きっと私はその人の味方をするでしょう。


「あれ?どうしたんだい?リディア。頭を抱えたりして…そうか、やっぱり君も料理の質が落ちたと思っているんだね?大体、何故以前僕がこの屋敷にいた時の使用人が1人も残っていないんだい?皆僕の姿を見ても頭を下げるだけで知らんぷりするんだよ。そうだ、リディア。君から言ってくれないかな?僕が誰だか知らないのかいって?大体さぁ…」


放っておけば、いつまでもしゃべり続けるジルベール。その何処かのんびりした口調も私の苛立ちを募らせるだけだ。


「…っりなさい…」


「え?今、何て言ったんだい?」


「う…うるさいっ!!黙りなさいっ!!」


我慢出来ず、とうとう私は大声を上げた。


「え…?どうしたんだい?リディア…」


「うるさいわよ!料理の質が落ちたですって?!彼らはねぇ…ギリギリの予算で、それでも栄養が偏らないように、献立を考えて料理を作ってくれているのよ?!それを感謝もせずに…何が料理の質が落ちている気がする、よ。文句があるなら最初っから食べなければいいでしょうっ?!それにねぇ、食材にお金を掛けないようにしなくてはならなかったのは…何故か分らないのっ?!元はと言えば貴方がこの屋敷の財産を奪って愛人と出奔したからでしょうがっ!」


バンバンと机を叩きながら私は思いの丈をぶちまけた。


「う…た、確かにそれについては反省しているけどさ…ほら、でもこうやって再び妻である君の元へ戻って来たんだからさぁ…水に流さない?」


何と言う言い草だろう?どうすればこんな図々しくなれるのだ?大体、私は戻ってきてほしいとはこれっぽっちも望んでいなかった。むしろ永久にその顔を拝みたくは無かったのに…。


「はぁ~…議論の無駄だわ。兎に角、出て行って頂戴。私は忙しいんだから。これから出かけなくちゃならないのよ。だから…」


するとジルベールが嬉しそうに言った。


「分った!出掛けるんだねっ?!よしっ!僕も行くよっ!支度してエントランスで待ってるからねっ!」


「え?ちょ、ちょっとっ!」


しかし、止める間もなくジルベールは部屋を飛び出して行ってしまった―。






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