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第18話 怪しい報告

 ガラガラガラガラ…


帰りの馬車の中、私はポツリと言った。


「それにしても、最後までお茶の1杯も出てこないとはね…」


「ええ、本当ですね。山林の権利書と譲渡の書類にサインをもらった途端、『早く帰ってくれ』ですから」


フレデリックが不満そうに言う。


「仕方ないわね。元々私はクレメンス家からは歓迎されていなかったから。おまけに肝心のジルベールは愛人と一緒に消えうせるし…お義父様もお義母様も私にではなく、ジルベールに権利書を渡したかったんじゃないかしら」


「ええ、そう思います。その割にはジルベール様の事を心配している様子はありませんでしたね。行方不明になったと言うのに」


「それは当然よ。愛人と一緒に大金を持って何処かへ消えたんだもの…逆に2人の幸せを祈っているかもしれないわ」


「リディア様…」


私の言葉にフレデリックが悲し気な目をする。


「大丈夫よ、そんな目で見なくても。私は何とも思っていないから。それどころか私の前からいなくなってくれてむしろ清々してるのよ。出来れば一生戻って来なくて良いと思っている位だから」


「成程、それを聞いて安心しました」


そして、私とフレデリックは馬車の中でクレメンス家の今後について話し合った―。




****


午後9時半― 


「ただいま。セイラ」


「ただいま戻りました」


私に続きフレデリックが言う。


「まぁ!リディア様!まさか『ヴヌート』から日帰りでお戻りになるとは思ってもいませんでした!てっきり今夜は何処かで宿泊されるものと考えておりましたのに」


私達が屋敷に帰宅し、出迎えに現れたセイラが驚きの声を上げた。


「そう?でもホテルに泊まって無駄にお金を使いたくなかったのよ。何しろ今のところクレメンス家は大赤字状態だから。それに仕事も山積みだしね」


「そうでしたか…それはさぞかしお疲れでしょう?お食事はどうされたのですか?」


セイラが心配そうに尋ねて来る。


「ええ、食事なら途中の町で食べてきているから大丈夫よ」


「そうですか。ではすぐに入浴の準備を致しますのでお部屋に戻りましょう」


「ええ、そうね」


返事をすると私はフレデリックを振り返った。


「フレデリック、明日9時から仕事を始めるから執務室に来てくれる?」


「はい、承知致しました」


フレデリックは深々と頭を下げた。


「お疲れ様。今夜はゆっくり休んで頂戴ね」


「リディア様も今夜はゆっくりお休み下さい」


そしてフレデリックとはその場で別れ、私はセイラに連れられて自室へ向かった―。



****


 午後11時―


「ふぅ~…いいお湯。とても気持ち良かったわ。今日1日の疲れが全部無くなった気がするわ。ありがとう、セイラ」


夜着に着換え、濡れた髪をタオルで巻き付けながら自室に取り付けてあるバスルームから出てくると、セイラに感謝の言葉を述べた。


「それは何よりです」


頭を下げるセイラ。


「それで?今日は何か問題は無かった?」


「ええ。若干はありますね。洗濯係りの使用人たちが今の予算を削られたら困ると訴えてきました」


「ふ~ん。そうなの?」


クレメンス家の予算支出の資料をパラパラめくりながら、私はクリーニング費用の金額に目を付けた。


「…」


じっと見つめているとセイラが声を掛けて来た。


「あの…、どうかされましたか?」


「ええ。何だかこの数字…怪しいわ。ずっと過去の費用を見ているのだけど、半分に減らしてもゆとりがあるはずなのに…」


「それは確かに妙ですね」


「おかしい。何か隠し事があるかもしれないわ…」


私は書類を見ながら思った。


改革の道のりはまだまだそうだ―と。


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