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第12話 早く出て行きなさい

「皆の前で話した通り、これからは全員で協力していかなければならないの。何しろお金が無いのだから。だけど…私に反抗的な人間は不要よ。足並みを乱されてしまっては改革がうまくいかないもの。なので貴女達には今すぐ辞めて頂きます。紹介状も書けないわね。だって屋敷の主に反抗的で愛人のメイドなんてしているのだから。信用問題だから紹介状に嘘は書けない…そう思わない?」


私はフレデリックに同意を求めた。


「ええ、その通りです。このメイド達は普段から奥様を蔑み、あろう事かジルベール様の愛人を慕っておりましたからね。」


フレデリックは今回の事でジルベールに愛想が尽きたのだろう、その声に怒気が混ざっていた。


すると4人のメイド達は涙ながらに懇願してきた。


「お、お願いです!今までの態度は全て改めますから…どうかここに置いて下さい!」


「お許しください。奥様…ここを出されては私達は生きていけません」


「もし、どうしても追い出すと言うのであれば…せめてまともな紹介状を書いて頂けませんか?」


そして、最後にカレンの言葉で私の堪忍袋の緒が切れてしまった。


「奥様、置いて頂くのも駄目、まともな紹介状も書けないと言うのであれば…せめて給料の半年分を退職金として下さい!」


もう我慢の限界だった。


「…何故、あなた達の為に退職金を支払わなければならないの?」


怒りを抑えた声で静かに言う。


「え…?な、何故って…私たちはこのお屋敷でずっと働いて来たのですよ…?」


カレンは当然の様に言う。


「カレン…貴女は頭が悪いのかしら?それとも耳が悪いのかしら?」


「…え…?」


カレンは私の雰囲気が変わった事に気付いたいのか、声が上ずっている。


「私、最初に言ったわよね?あなた達のお給料は私がこの屋敷に嫁いできた時の持参金を運用して支払っていると…」


「は、はい…」


ゴクリとカレンが息を飲む。


「私がこの屋敷に嫁いできてから…あなた達4人は私の為に仕事をしてくれた事があったかしら?呼んでも来ない。掃除なんてしたことも無い。洗濯だって…知っているのよ?私の物は一切やったことが無いという事位。代わりにあなた達がしたことは私への堂々とした陰口や無視、そして愛人のお世話係をしていたわよね?そんなに退職金が欲しいのなら、この屋敷の財産を全て奪って行ったジルベールと愛人を探し出してお金を払って貰えばいいでしょう?」


「あ…」


あれ程気の強かったカレンの目にはいつしか涙が浮かんでいる。それは他の3人のメイド達も同様だった。彼女たちはこの時になって初めて、私は敵に回してはいけない存在だったと言う事に気付いたのだろう。もはや誰一人反論する者はいなかった。


「…何をしているの?」


「…え?」


涙を浮かべて震えている4人のメイド達を見渡す私。


「もう用事は済んだでしょう?私は見ての通り忙しいのよ」


書斎机の上に山積みになった書類をポンポン叩きながら言った。


「今すぐこの部屋から…いいえ、この屋敷から早く出て行きなさい」


「「「「!!」」」」


4人のメイド達はビクリと肩を上げ…バタバタと逃げるように走り去って行った。



「ふぅ~…」


やれやれ…やっといなくなってくれた。思わず安堵のため息をついたとき…。


パチパチパチパチ…


突然今まで成り行きを見守っていたフレデリックとセイラが拍手をした。


「え?どうしたの?2人共」


キョロキョロ2人を見渡した。


「リディア様、見事なお手並みでした」


「ええ、本当に。私、胸がスカッとしました」


フレデリックに引き続き、セイラが言う。


「そう?でも…少し言い過ぎたかもしれないわね」


幾ら私を蔑ろにしていたとしても彼女たちは私がこの屋敷に嫁いで来る前からこの屋敷で働いていたのだ。


「そんな事はありません。彼女たちはこの屋敷に仕えるメイドでありながら、その役目を放棄していたのですから当然の報いです」


フレデリックがばっさり切り捨てる。


「ええ、その通りです。私が後であの4人のメイド達の様子を見てきます。もし、まだ残っていたら。追い払いますから」


セイラがやや興奮気味に言う。


「そ、そう?ありがとう」


そしてフレデリックを見ると言った。


「さて…仕事が中断されてしまったけれど、再開しましょうか?」


「はい、リディア様」




その後―


出て行った4人のメイド達を除き、退職の申し出て来る使用人は誰一人として無かった。


そして私と使用人全36名で新しい生活が始まる。

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