五
例え最低限の栄養素をコレで確保できていたとしても、逆流しそうなほどにまずい。ゲロ不味い。これでマシとなる訳だがそうそう喜んで食べれるほどの味じゃない。
「ごぶっ、水もか!」
今更、妹の部屋で手に入れた水があったことを思い出した。ポケットに透明な色のボトルが何本も入っている。これを飲めばよかった。
不味い何かを喉を強制して腹に突っ込んだらまた上る。二人の遺体があるがこれはビルが創り出した虚像だ。それでも、顔の潰れてたとしても、仲間の造形を保っているなら何かするのが義務……責務な気がする。
「済まない、二人とも、済まなかった」
貧民街で死んだ人は骨も残らず燃やされる。多少それぞれの宗教はあれど、この世に生きていた証はほとんど消えてしまう。家は他人が入り模様替え、品はリサイクルに回される。親しかった人が使えるものを持って帰る程度だった。
ようは一つの死に構ってなどいられなかった。
今、目の前に虚像の遺体があっても焼くことは出来ない。ライターはいったい何処かに捨ててしまった。ああ、そうだ。ルンの家には珍しくガスが通っていたな、上手くいけば燃えるかもしれない。
キッチンのガスが通っている箇所の管をちぎり気体漏れを起こさせる。二人の遺体は稚拙な銃を握ったままで弾も入っているはずだ。
すまない、貰う。
何をしたかは命が尽きるときまで言うまい。ガラガラと崩れ落ちる音が扉の先から聞こえてくる。きっと、青天井は燃え落ちているだろう。
これでいいのか?
良くなかったとしても、私は先に進まねばならない。過去なんぞに構ってなどいられない。