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地面への近道  作者: 黒心
本編
1/12

 登り過ぎてがくがく震える足を押さえつけてでも、この高い建物を登る。

 それが一番の近道だから。


 その建物は星の中心から伸びて宇宙にまで到達する。都心に生えるビルの様にコンクリートで建てられ、フロアがあって部屋があって室温は常に二十六度に保たれている。不規則な内装、不可思議なインテリア、不気味な装飾。

 どれをとっても謎ばかり。水や食料が湧いてでくる。

 既に何千年と過ぎているが経年劣化は見られない。


 人々は内部を階段で登る。箱型の昇降機や階段上の昇降機も何もない、ただ内部に登るための螺旋階段がありそれは頂上まで続く。頂上には宇宙からでも行けるしなんらな窓のない壁を伝って階段よりも早く着く。頂点には広い床に箱が置いてある、中身は様々なものが出てくるが登った苦労に応じて中身が決まると予想されている。元から金持ちの社長が宇宙から降り立った時と零細企業の社長が宇宙から降り立った時では中身はもちろん、量まで違った。


 それならばと、内部にある階段で点高くまで登れば苦労したことになるだろうとビルに挑む者が出てくる。一番初めに問題になったのは水や食料だった。トイレは必ず各フロアにありご丁寧に石鹸まで用意してあるが飲める水は数階に一回あるかどうか、食料付きのフロアは数十層に一回。ある人が我慢して登り続けると驚きの事実がわかった、ビルの内部は異空間になっており見た目よりも高くなっているのだ。


 科学者はこの事実に驚き調査して宇宙船のワープ原理を解明し世界を躍進させた。一方でビルの周りでは争いが絶えなかった、それでもビル付近に数千の反応爆弾が落とされ爆発しようとも真っ直ぐに皸すら入らず建っている。既にビルの周りで失われた命は兆を越えようとしてる、お金は既に垓を越した。〝血を吸うビル〟〝欲望の集合体〟などなどあだ名は幾万と付けられ廃れまた付けられる。


 歴史を彩って来たビル。登頂者は沢山いる、それでも階段から上り詰めた人はいないのだ。


 晴天から戸口を開けて灰色の階段を登り続けて何日と経った。無心に登り、同じ光景を見ては上を見てさらに登る。ゴールは存在するとだけ分かれば登るのみ。初の階段側登頂者になりたい訳ではない、登るのが一番の近道なのだ。

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