B級試験
「さて。私たちが出会って1年が経ったわけだが、君達のステータスは大幅に上昇した。」
名称:エリス
種族:吸血鬼族 (ヴァンパイア)
性別:女性
年齢:17
生命力:6532/6532(不死性)
魔力:7628/7628
物理攻撃力:5408/5408
魔法攻撃力:7170/7170
物理防御力:0/0(無効)
魔法防御力:5973/5973
俊敏性:6328/6328
精神力:5418/5418
スキル:火魔法 レベル10
火耐性 レベル10
水魔法 レベル10
水耐性 レベル10
土魔法 レベル10
土魔法 レベル10
風魔法 レベル10
風耐性 レベル10
千里眼 レベル3
魔法倉庫 レベル1
…
名称:アーネ
種族:神狼族 (フェンリル)
性別:メス
生命力:7291/7291
魔力:6866/6866
物理攻撃力:6227/6227
魔法攻撃力:5982/5982
物理防御力:6019/6019
魔法防御力:6647/6647
俊敏性:6893/6893
精神力:6241/6241
スキル:火耐性 レベル1
水耐性 レベル2
風魔法 レベル5
風耐性 レベル4
人化 レベル3
物理攻撃力強化 レベル3
魔法攻撃力強化 レベル1
浮遊 レベル3
拳術 レベル2
「正直。1年でステータスが平均3000上がるとは驚いたよ。」
ステータスは1日に10上がれば上出来といわれている。ただそれは、ステータス平均1000での話だ。ステータスが上がれば上がるほど、当然だが、ステータスは上がりづらくなる。平均3000ともなれば、1日に、8上がれば上出来だろう。平均4000であれば7、5000であれば6、6000であれば5。単純計算、平均3000から修行を始めた場合、1年で2600上がれば上出来なのだ。
「ありがとうございます。」
エリスはこの1年を振り返る。その中で、一番鮮烈に覚えている出来事を思い出す。世界中の20歳未満の剣士が目指す、剣技大会の頂点。〈剣技祭〉。その決勝戦。
七色の勇者、内5名が観戦する中、決勝戦は1人の青年の圧勝で幕を閉じた。
その青年の名前はキュアノ=アオディス。勇者の中では唯一の20歳未満である青の勇者である。
当時、直には見ていないものの、エリスはエフィの持つ〈遠視装置〉という、要は魔法のテレビでその対決を見た。
「2人共。良く観ておくんだ。人類の最高峰。青の勇者にして現S級である、キュアノの強さを。」
これが、エフィが2人に剣技祭を観せた理由だった。
エリスの目指す最強の一端。それを初めて観たエリスは震撼していた。
あまりにも底知れない強さ。映像越しでステータスは確認はできなかったが、初めてエフィと出会ったときと同じ感覚を覚えた。
「さて。」
エフィの声に、エリスは回想から戻る。
「明日はB級試験だ。私は受けた事ないけれど、一度見た時の試験は確か単独でのダンジョンの攻略だったはずだよ。今年がどのような試験内容かわからないけどね。」
エフィの説明から丁度12時間後。午前8時に、B級試験の試験内容が発表された。
「おい。エフィ。ガキ共に試験内容言ってないだろうな?」
「うん。言ってないよ。君こそ言ってないの?」
「言ってるわけねぇだろ。違反だぞ?」
エフィは「知ってるなら聞くなよ。」と思いつつも、同じくA級冒険者であるイーデンに応答する。
「さて、勝負しようか、どっちの弟子がより良い成績を残せるか。」
「いいだろう。勝負内容はどうすんだ?」
「合計ポイント数。」
イーデンはエフィの提案に形相を変える。
「あ?舐めてんのか。そっちは2人、こっちは13人。どっちが勝つかは明白だろ。」
「いいや。この内容で十分だよ。そうだな。君が勝ったら、ナーガの宝玉をあげるよ。」
「ナーガの宝玉か…喉から手が出るほど欲しいが、こっちはそれに釣り合う物を提示できねぇぞ。」
「良いよ釣り合わなくても。そうだね、じゃあ君の師匠である〈ミュース〉との間を取り持ってよ。」
「…良いだろう。」
イーデンは少し思案し、エフィの提案を承諾する。
そんなこんなで、2人は会場へと向かう。今回のB級試験の監督として。
「本日監督を務めるイーデンだ。」
「同じくエフィだ。」
「早速だが、本日の試験内容を説明する。」
会場の壇上に2人のA級冒険者が立ち、試験内容の説明を始める。
「エフィさんが監督してくださるんですね。」
「うん。そうみたいだね。」
――それにしても。
エリスは、エフィが監督をすることよりも、イーデンの鑑定結果に驚いていた。
名称:イーデン=スウィフト
種族:獣人族 (ウェアウルフ)
性別:男性
年齢:29
生命力:14373/14373
魔力:9186/9186
物理攻撃力:13836/13836
魔法攻撃力:11179/11179
物理防御力:12582/12582
魔法防御力:12271/12271
俊敏性:13486/13486
精神力:11358/11358
スキル:火魔法 レベル7
火耐性 レベル7
風魔法 レベル6
物理攻撃力強化 レベル7
物理防御力強化 レベル7
魔法防御力強化 レベル6
俊敏性強化 レベル7
獣化 レベル6
剣術 レベル7
――犬の獣人の大剣士か。しかし…この会場にいる現C級冒険者より当然強いけど、同じA級のエフィさんやぺタオドラコに比べれば大分劣る。このステータスを見るとエフィさんの異常性が分かる。
「今回の試験だが、」
エリスはイーデンの説明を聞くべく、思考をやめる。
「お前らにはダンジョンに入り、魔物の討伐をしてもらう。討伐範囲は31階層から40階層。制限時間は本日午前9時から午後9時までだ。合格ラインは10000ポイントだ。各魔物のポイント数はこのスクリーンの通りだ。」
受験者から見て壇上の後ろにある白いスクリーンに、魔法の映写機によって表が映し出される。
通常魔物
31階層 10ポイント 平均ステータス 3500
32階層 20ポイント 平均ステータス 3500
33階層 30ポイント 平均ステータス 4000
34階層 40ポイント 平均ステータス 4000
35階層 50ポイント 平均ステータス 4500
36階層 60ポイント 平均ステータス 5000
37階層 70ポイント 平均ステータス 5000
38階層 80ポイント 平均ステータス 5500
39階層 90ポイント 平均ステータス 5500
40階層 100ポイント 平均ステータス 6000
階層主
31階層 100ポイント 平均ステータス 6000
32階層 200ポイント 平均ステータス 6000
33階層 300ポイント 平均ステータス 6500
34階層 400ポイント 平均ステータス 6500
35階層 500ポイント 平均ステータス 7000
36階層 600ポイント 平均ステータス 7000
37階層 700ポイント 平均ステータス 7500
38階層 800ポイント 平均ステータス 7500
39階層 900ポイント 平均ステータス 8000
40階層 1000ポイント 平均ステータス 8000
――なるほど。このポイント配分でラインが10000ポイントか。B級は3500以上で受験資格が与えられるだけであって、B級であるわけではない。単独でこの程度の課題をこなせる程度の実力。それがB級か。
「ボスは1時間に1体の頻度で復活する。因みに、この試験での協力は禁止だ。判明次第失格にする。つまり、ボスは単独での挑戦になることを覚えておけ。それと、階層の階段による移動は自由だ。そんじゃあ、試験の開始時間まで準備時間にしろ。」
説明が終わり、エリスとアーネはエフィに呼び出せれた。
「2人にとって今回の試験は簡単だ。ポイントは私達監督にしか開示されないから、存分に実力示してくれ。」
「はい。」
エフィの指示を受け、30分後。試験の開始時間が近づき、受験者は31階層の扉の前に立つ。
そして、試験が開始される。
直後、最初にダンジョンに突入したのは〈浮遊〉を所持する2人、エリスとアーネだ。
2人は道中魔物を倒しながらも、一直線に飛翔し、当初の予定通り、アーネは初階層攻略時に出現する下階層に降りる階段に向かい、エリスは階層主の部屋に向かった。
――31階層の主は蜥蜴族。弱点は水魔法。
「水魔法〈ウォーターブレイド〉。」
蜥蜴族のサブラを水の刃が襲い、一瞬で装甲が破られ鱗に覆われていた肉を切り裂き瞬殺する。
直後、開かれた扉を通り、そこに存在する大階段を飛翔し、下階層へ降りる。
エリスは、素の俊敏性はアーネに劣るものの、全強化によって、当然アーネの俊敏性を凌駕し、アーネの5、6倍の速さで移動している
その為、階層主を相手にしたはずのエリスだが、アーネより圧倒的に早く32階層へ降りていた。
エリスは32階層へ降りたと同時に、階層主の部屋に向かう。その一連の流れを40階層まで続け、開始から1時間足らずで10階層を攻略し、40階層での討伐を開始した。その時すでに、彼女のポイントは11000となっていた。
――道中各階層丁度10体ずつ討伐した。これで10000に達したはずだけど、まだ誰も40階層まで降りてないから、誰か来るまで倒してようかな。
一方その頃、風と火の魔法を駆使して、各階層20体ずつ倒して降りていたアーネは2階層を飛翔していていた。
――無駄な魔力は使わずに、風か火が弱点の魔物を狙って倒す。これを続ければ10000は確実。それにしても、誰もついてこない。私は〈鑑定〉が使えないからステータスは分からないけど、私に…ましてや、エリスさんに追いつける受験者はいないみたい。
アーネは飛翔しながら、周囲を見渡しつつ、そのように思考を巡らす。
開始から約5時間。午後2時頃。アーネが40階層に到着し、アーネは十分な魔力を維持した状態で討伐を開始した。
40階層での討伐も、当初の予定通り、階層主の部屋周辺の魔物をエリスが、その他の箇所の魔物をアーネが討伐する。
当然だが、40階層に降りる他の受験者は皆無であった。
――ステータス平均が6000を超えている受験者は見た限りいなかったはずだ。
監督から試験終了が宣言された。エリスの予想通り、終了まで、誰1人40階層に降りてくる者はいなかった。
試験が終われば、後は帰還するだけだ。しかし、そこで事件が起きた。それは、エリスとアーネが合流し、33階層に着いた時だった。
階層中に魔物の咆哮が響き渡ったのだ。