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調査

エリスはキュアノを発見するや否や、鑑定を発動する。


名称:キュアノ=アオディス

種族:人間族 (ヒューマン)

性別:男性

年齢:19歳

生命力:38246/38246

魔力:32291/32291

物理攻撃力:41126/41126

魔法攻撃力:33475/33475

物理防御力:39581/39581

魔法防御力:39215/39215

俊敏性:38862/38862

精神力:34451/34451


スキル:火耐性 レベル8

     水魔法 レベル10

     水耐性 レベル10

     土耐性 レベル8

     風魔法 レベル8

     風耐性 レベル7

     剣術 レベル9

     魔纏(まてん) レベル7

     …


エリスが夢中になってキュアノのステータスを観察する。


――平均約37000…19歳で何というステータスなんだ。


エリスは鑑定を解き、キュアノの顔を見る。その顔は驚いているようだった。


「どうかしました?」


「凄いですね。僕の鑑定が弾かれてしまいました。」


「うん。そうだよ。エリスちゃんの〈鑑定〉はレベル10だ。」


直後、エフィはキュアノに何か耳打ちをする。


「はい。わかりました。」


キュアノは先ほどまでの笑顔から、真剣な顔で耳打ちの内容を受諾し、


「それではそのように。では2人共、またお会いしましょう。」


「はい。」


そう挨拶して、キュアノは去っていった。


「エフィさん。アオディスさんは何故この都市にいたんですか?」


「この前のイーデンの話は覚えているかい?」


「はい。私が以前遭遇したリュコスに眷属化を施した魔人と同じ可能性があるという。」


「そうそう。あの魔人がどうも私だけでは手に負えそうにないからね。キュアノに協力を仰いだんだ。」


エリスはそのエフィの説明を聞くが、疑問を抱く。


「あれ、エフィさんはアオディスさんと面識があったのですか?」


「うん。そうだよ。それで、彼のステータスを見てどう思った?」


「そうですね。強い以外に言えることはないですね。それに、アオディスさんはステータス以上に何か力を持っているように感じます。」


エリスは〈感覚強化〉というスキルを持っている。


〈感覚強化〉。五感を含む、あらゆる感覚を強化し、レベルに応じて第六感と呼ばれる能力を発現させる。


この〈感覚強化〉によって、エリスの感覚は研ぎ澄まされており、彼女は直感で、キュアノが何か鑑定ではわからない力を持っていると感じとる。この何かは、エフィにも感じている。


「なるほど。それだけ分かれば上出来かな。それより、今回の魔人との戦闘は君にとって良い勉強になるだろうね。」


「そうですか。楽しみにしています。」


「それじゃあ。これからの説明をするね。」


2人はエフィの説明を聞くと、その場でエフィとは別行動を開始する。


「アーネ。今回は危険すぎる。だからアーネには――」


「エリスさん。心配ご無用ですよ。」


エリスは言葉を遮ったアーネの顔を見て、自分の心配が杞憂だったと確信する。


「私はA級危険団体〈星竜教〉を倒さなければなりません。こんな所で臆していては、そんな目標、達し得ませんよ。」


「そうだね。では行こうか。2人で。」


2人は都市を後にし、魔人の森の、エリスが転生直後に寝泊まりしていた洞窟に向かう。


「〈千里眼〉。」


エリスは千里眼により、洞窟を透視する。


「本当にあるとは。」


洞窟の壁には通路を隠すための絡繰りが仕掛けられていた。その絡繰りを、エリスは見透かし、隠しボタンも簡単に見つけられる。もはやエリスにとって、その隠し通路はただの通路になり下がった。


ボタンを押すと、壁に通路が現れる。その通路は、隠し通路にしては埃一つない。


――綺麗すぎる。


隠し通路を清掃する人間が存在する。それは、普通に考えれば不可解なことだ。


――清掃の為だけに隠し通路に入るのは、普通に考えればリスクが高すぎる。隠し通路を使う回数が多ければ多いほど、隠し通路の存在がバレる確率が上がる。清掃するメリットとデメリット。デメリットの方が多い…と言うより、メリットがない。


「さて、調査を始めようか。アーネ。」


2人は、エフィの指示で、以下の依頼を受注している。


依頼制限:B級

依頼者:キュアノ=アオディス

依頼内容:魔人の森で発見された、隠し通路の調査。

依頼報酬:前金銀貨20枚

       提供情報の価値に応じた成功報酬

依頼期間:隠し通路の調査結果報告まで

依頼失敗時:違約金銀貨5枚


――多分。魔人に関係する物が見つかる。


エリスのその予想は、数分後、確信へと変わる。


隠し通路の先。そこにあったのは檻だった。檻の中には眠った獣が1体。


「〈鑑定〉。」


名称:なし

種族:神獅子(しんしし)族 (キマイラ)

性別:オス

生命力:32801/32801

魔力:29457/29457

物理攻撃力:31125/31125

魔法攻撃力:25469/25469

物理防御力:32128/32128

魔法防御力:31961/31961

俊敏性:28663/28663

精神力:29271/29271


スキル:火魔法 レベル9

     火耐性 レベル8

     水魔法 レベル8

     水耐性 レベル8

     風魔法 レベル7

     風耐性 レベル6

     土魔法 レベル6

     土耐性 レベル7

     突進 レベル8

     …


――キマイラ…ギリシア神話の怪物と同じ名前だな。アーネと同じか。このステータス…A級程度か。キュアノさんに感じたようなものは感じない。S級ではないだろう。いや…


「〈鑑定〉。」


状態異常:眷属化


「これは…」


眷属化の効果は主に2つ。全体的なステータスの向上と、眷属の主人の種族の半分の能力を得ること。


――眷属化を施された今、この魔物はS級に匹敵しているかもしれない。


「アーネ。この魔物はS級かもしれない。実力差的に、君が奴の攻撃を1発でも食らえば死ぬ。これは心配で言うわけじゃない。命令だ。」


エリスは一呼吸置き、目を見開き赤い瞳でアーネの瞳を一直線に見て、強い口調でこう言い放つ。


「逃げろ。」


エリスは〈威圧〉を発動する。


〈威圧〉。目を合わせた相手の行動を封じ、ステータスの差に応じて、命令を強制させる。


「ッ!ステータスに然程の差は…」


「残念ながら、威圧のステータスというのは素ではなく実質だ。全強化だけでのステータスでも

、君にどんな命令でも強制できるよ。さぁ、アーネ。逃げるんだ。」


アーネはエリスの命令に逆らえず、来た隠し通路を戻る。


「さて、まだ寝てるね。」


――それじゃあ準備を始めようか。


エリスは魔法倉庫から血を取り出し、吸血する。その後、魔法を発動する。


「〈聖魔法〉バリア。」


透明な結界がエリスの周囲を囲む。


「〈火魔法〉〈水魔法〉〈風魔法〉〈土魔法〉の〈合成魔法〉エクスプロージョン。」


火魔法と土魔法による粉塵爆発。火魔法と水魔法による水蒸気爆発。その2つの爆発を風魔法で威力を上げる。それにより、絶大な威力の爆発が起こる。


その爆発は、隠し部屋、洞窟諸共、キマイラもエリスも平等に吹き飛ばす。


そう。バリアで守られていたエリスですら吹き飛ばされたのだ。


「自分ながら、なんて威力だ…」


崩壊した洞窟の瓦礫を左手で持ち上げ、エリスは這い上がる。彼女は自らの魔法で右肩より下、及び、頭部の一部、腹部を欠損している。


「キマイラはどうなったかな?」


しかし彼女は吸血鬼だ。血液が一滴さえ残っていれば、完全に身体を修復する。その為、先程まで存在した欠損は既に修復しており、瓦礫の山から、先程までキマイラがいた場所を余裕な顔で見下ろす。


「マジか…」


そこには、全身を熱傷してもなお生存している衝撃で目を覚ましたキマイラが存在していた。


――全強化で6倍。吸血強化で6倍。属性耐性で6倍。私は魔法に対して、216倍の防御力を持っている。だけど、そんな私ですら、エクスプロージョンの爆発に体が耐えきれなかった。つまりこれが、


「ゾンビの特性か。」


「大正かーい。」


そんなエリスの呟きを少女の声に肯定される。その声の主を見るべくエリスは振り返ろうとする。


「はーい。ストップ。」


その言葉によって、いや。その命令によって、エリスの動きは完全に停止する。


「何者だ?」


「なるほど。なるほど。主様の言ってた通りの化け物だね。」


「主様?もしかしてシルフさんですか?」


「へぇ。君凄いね。あの時の精霊語の会話。聞き取れてたんだ。そうだよ。私はシルフ。あっ。もう動いて良いよ。」


エリスは自由に動けることを確認すると、振り返り、シルフの姿を見る。


エリスはその姿に息を呑む。その、ほっそりした優美な少女は余りにも自然にそこに存在している。白い肌以外全てが緑に包まれた少女。髪、瞳、服。そして、彼女が纏う可視の風。


――魔力じゃない。正真正銘、自然に発生した風をシルフさんは纏っている。


「まぁ、君が何を考えてるかはわからないけど、あのキマイラ。早く倒そうよ。主様に君を手伝ってやれって言われてるんだ。」


「なんでエフィさんがそんな指示を?」


「あのフェンリルを逃がしたのは君だろう。あの子が教えてくれたんだよ。隠し通路の先にいたキマイラの存在を。」


エリスは、半僵尸化したキマイラをエフィが脅威だと判断したと理解する。


「シルフさん。私は1人でも大丈夫ですよ。エフィさんにもそう伝えてください。」


「ん?違う違う。主様は君の心配なんかしてないよ。むしろ、君に出会ってしまったキマイラが気の毒だと言っていたよ。」


「では何のために?」


エリスの問いに、シルフは得意気に胸を張り返答する。


「キマイラは生け捕りにしろ。だってさ。無茶言うよね。」


「生け捕りですか。わかりました。シルフさんも手伝ってくださるんですよね。」


「うん。」


熱傷により憔悴し切ったキマイラを〈聖魔法〉バリアケージの、透明な檻によって捕獲し、その上、〈氷魔法〉アイスケージでキマイラが熱傷によって死なない様に、冷気で熱傷によるダメージを軽減させる。


「輸送をお願いできますか?」


「良いよ。あのエクスプロージョンって魔法。相当魔力消費が激しかったでしょ?」


「はい。恥ずかしながら。」


ステータスの中で、唯一魔力量はスキルによって増減しない。何故なら、そもそもスキルは魔力を消費するものだからだ。


エリスの総魔力量はおよそ7300程度。エクスプロージョンという魔法は4000消費し、その他スキルの消費を含め、5500消費している。つまり、今の魔力量はおよそ1800程度だ。


「主様に言われてると思うけど、魔力はある程度の残しとかなきゃいけないからね。」


エリスはエフィに、少なくとも1500は残して帰還しろと言われている。その為、これ以上魔法を発動することは避けるべきなのだ。


「そうだ。良い機会だし、精霊魔法を良く見ておくといいよ。」


シーフは一呼吸おいて、魔法を発動する。


ウホマイレイセ(精霊魔法)〉アイオロス


風の大精霊である彼女だけに許された魔法。その魔法の発動と同時に、石の地面を突き破り、アネモネが咲き誇り、優しく肌を撫でる風は花の香りを運ぶ。エリスは異変に気付くだろう。ステータス上で自分の魔力が回復しているのだ。


「これは…」


「凄いね。全ての生命には魔力が宿ってるんだけど、花々は極稀にその魔力を動物に分け与えることがある。分け与える条件は親和性。どうやら君は、アネモネとの親和性が高いようだね。」


シルフはそう驚きを述べながら、花の香りを運ぶ風を集める。


「そろそろかな。」


シルフはそう言いながら、風でキマイラを浮かす。


「さて、行こうか。」


――凄い。自分の体の一部の様に風を操っている。風の精霊とはこれ程なのか…


自然な風の流れでキマイラは運びながら都市へ向かう。


「見えてきたね。」


「はい。そうですね。って…あれ?」


エリスは遠くに見える、オルニス都市の異変に気付く。


「あら。これは大変だね。主様は何をしているんだか。」


オルニス都市を守護する防壁が破壊されていた。

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