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転生

目を覚ますと、そこは地平線まで広がる何もない空間だった。空には太陽も月も存在していない。ただ青い空が広がっている。


「初めまして。早速ですが貴女は死にました。」


目の前にぽつりと立つ、一枚の白い布だけを纏った女性は、唐突に「貴女は死んだ。」と告げた。


「えっと…はい?」


私は彼女の言葉が理解できずに混乱して、思わず、間抜けた声を出してしまう。


「あ!信じてないですね?良いでしょう、貴女が死んだという証拠を見せてあげます。」


彼女はそんな私の反応に、不機嫌そうに頬を膨らませると、その細く白い指で私の額を小突いた。


直後、私の眼前に私が死亡した瞬間が映し出される。


私はいつも通り、登校のために大通りを歩いていた。そんな時だ。横断歩道を渡る一人の小学生に、信号が赤にもかかわらず、突っ込んだいくトラックを目撃した。


私はその瞬間、何も考えなしに体を動かすと、小学生を助けるべく横断歩道に足を踏み入れた。小学生は助かったが、私の体は原形はとどめてつつも、明らかに骨が折れた音を響かせて、トラックの進行方向に数メートル程吹き飛ばされた。


すぐに近くにいた人が駆け寄ってくれたが、既に私に息はなかった。


「これが貴女の最後です。」


「…そっか。あの子助かったんだ。」


「あれ?随分と落ち着いていますね?」


嫌味があるわけでもなく女性は単純に疑問を持って私に質問する。


「はい。正直に言いますと、死んだといわれた時から、薄々この時、私は死んだんだろうな。と思っていました。なので、私の死が無駄でなかったとわかって、ちょっとだけほっとしました。」


「そうだったんですね。それならそうと最初から言ってくれればよかったのに。ですが、それなら話が早いです。貴女に提案があります。異世界に転生しませんか?」


「転生?」


女性の提案に私は首をかしげる。


転生。その言葉自体は知っているし、それを題材としたライトノベルを読んだことがあるからだ。しかしだからこそ、あれがファンタジーだと知っている私は疑問を持たずにはいられない。


「はい。転生です。貴女は今、あれはファンタジーだろ?と、そう思っているかもしれませんが、貴女は死んだのに謎の可愛いお姉さんと話せているわけですから、ファンタジー云々はもう意味をなしていません。」


「確かに。ではそうなると、貴女は神か何かですか?」


「はい。私は神です。貴女が想像する神とは違いますけどね。」


その女性は確かに自分のことを神だと言い切り、私もそれが真実であると本能的に理解している。そしてそれを自覚すると、それからは何も疑問に思わなかった。


「さて、疑問は解消されましたね。そこでもう一度提案します。異世界に転生しませんか?」


「…なんで私なんですか?」


当然の疑問。何故他でもない私なのか。


「そうですね。一つ言っておきますが、誰しもが転生できるわけではありません。世界渡りに耐えれる精神力がないといけませんから。その素質が貴女にあった。それだけです。」


精神力と聞いて、私はなるほどなと納得してしまう。確かに私にはそれだけの精神力があるのだろうと。なら、


「わかりました。転生します。」


私は腹を括る。もしかしたら異世界なら、前より良い人生を送れるかもしれないと思ったから。そんな、私の回答に神は微笑み頷いた。


「いい判断です。それでは説明します。貴女がこれから向かう世界は人間と魔物が対立する世界です。なので生き残るために、種族やスキル、ステータスを決めてもらいます。まずは種族です。一覧を表示しますね。」


私の眼前に一覧表が表示される。そこには何千という種族が書かれていて、私はこれらの種族のどれかに転生できるのだと胸を躍らせた。そして私は、種族固有のスキルを見つつ、最終的に五つの種族で迷うこととなった。


人間族。固有のスキルこそないものの、スキル獲得の制限を受けずに、最も簡単にスキルを得ることが可能な種族。


獣人族。獣化という固有のスキルを持ち、強靭で俊敏なバランスの良い種族。


竜人族。竜化という固有のスキルを持ち、最強の硬度を誇る種族であり、竜語を用いた魔法に秀でた種族。


妖精族。精霊化という固有のスキルを持ち、精霊語を用いた魔法や弓術に秀でた種族。


吸血鬼族。蝙蝠化という固有のスキル持ち、最強の生命力を誇る種族。


新たな世界で生活するんだ。前世の様に誰かの言いなりになったりしたくないし、誰かの支配も受けたない。だから、どうせなら最強の存在になって、向こうの世界を誰も不幸にならない世界にしたいな。


「それなら…」


私はそこで決心する。


「決めました。吸血鬼族にします。」


デメリットとして日の元を歩けないけれど、それ以外は最高水準で、しかも生存能力に特化している。だから私は、吸血鬼族を選んだ。


「わかりました。では次に、スキルの獲得です。私、神からの祝福として、1万ポイントを差し上げます。一覧を表示しますので自由に使ってください。」


それを見るに、どうやら吸血鬼族専用のスキルが10つあるようだ。大まかに言うと、吸血系スキルと血液系スキルとして、それぞれ5つずつで分類されている。


その10つをとりあえず獲得するとして、まだ9900ポイント残っている。全てのスキルを獲得するのに必要なポイントが5000なので、全てのスキルを獲得して、それでも余った4900ポイントを吸血鬼族専用スキルや耐性系スキルや攻撃系スキルなど諸々のレベル上げに使用した。


そこでふと思う。「ポイント貰い過ぎでは?」と。それに対して女神は「神の祝福ですから。」とだけ言って、次に進んでしまった。


「次にステータス振り分けです。私、神からの祝福として、こちらも1万ポイントを差し上げます。ステータスを表示します。」


一先ず、異常な量のポイントは受け入れて、ステータスの振り分けを行った。元のステータスは、生命力が2800で不死性と書かれており、それから魔力が2000、物理攻撃力が700、魔法攻撃力が1200、物理防御力が0で無効と書かれており、魔法防御力が900、俊敏性が1000、精神力が102000となっている。


「精神力高くない!」というツッコみは今は置いておくとして、攻撃系スキルの強さは魔法攻撃力に比例するらしいので、魔法攻撃力を上げようと考える。あとは魔力も重要だろうか。


そんな風に試行錯誤を繰り返して、ステータスを確定させた。


生命力は3000、魔力は4000、物理攻撃力は2000、魔法攻撃力は4000、物理防御力は0、魔法防御力は3600、俊敏性は3000、精神力は102000となった。


「それでよろしいのですね。それでは、全ての能力を確定して異世界に送ります。心の準備はできましたか?」


神様の問いかけに私は静かに頷く。次の瞬間、目の前が真っ白になり世界渡りが始まった。


世界渡りが終わり、私はどこかの森に降り立った。その瞬間、脳に直接あの神様の声が響く。


〈世界渡りの影響により、精神力が減少します。〉


――精神力が減少?えっと、自分のステータスってどう見ればいいんだろう?確か〈鑑定〉ってスキルがあったような。


そう悩んでいると、何故か自然とスキルの使い方が思い浮かぶ。


「〈鑑定〉。」


目の前に自分のステータスが表示される。


どうやら精神力が、102000から2000に減少したようだ。


――ほんとに精神力が減少してる。精神力がマイナスになったらどうなるかわからないけど、多分何か悪いことが起こるのかな。


この時の彼女はまだ知らないが、精神力がマイナスになった時、あらゆる生物は発狂し廃人になる。その為、世界渡りは人を選ぶのだ。


「さてと。」


――スキルの使い方が分かった所で、この森の探索でもしてみようかな。


そんな風に考えつつ、ふと空を見上げると、巨大な下弦の月が森を照らしていた。


突如として吹いた風で揺れる木々の葉は、白や青など様々な色をしている。そんな木々が、ここが地球ではないことを私に知らせている。


――ほんとに異世界に来たんだな。


改めて私は、ここが異世界であると実感した。

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