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学年末試験が終わりAクラス以外の生徒は喜びで溢れていたがAクラスは重苦しい空気だった。

クラスメイト達は別れの挨拶をして寮へ帰って行った。


「お嬢様。そのはしたない格好はなんですか?」


部屋着に着替え、クッションを抱き抱えながらソファに寝転ぶティーナを注意するエナ。

普段ならロウに報告されるのを嫌がりすぐに体勢を変えるが今日は聞こえないふりをした。


「…今日だけですよ。」


エナはため息をついて夕食の支度を始める。

ティーナは瞼が重くなりいつの間にか眠ってしまったがエナに起こされ目を覚ます。


「随分お疲れですね。そんなに試験は難しかったのですか?」

「んー…難しくはなかったよ…。全体を見ればね…。…最後のテスト科目が難しくて…あれ絶対専門学だよ…。」


のろのろと食事を始め、何とか湯船に入りベットに入った所でティーナは力尽きた。


次の日。

試験明け休みの為、お昼過ぎまで寝ていたティーナは流石にエナに叩き起こされた。


「お嬢様、流石に眠り過ぎです。」

「えー…だって疲れてたんだし仕方ないじゃん…。」


ぶつぶつ文句を言うティーナに少し遅い昼食を食べさせるエナ。


「お嬢様は一体どなたに似たのか…お父様や祖父様はいつ何時如何なる時も紳士らしくしていらっしゃったのに…」

「じゃあ、お母様に似たのね。」

「似ておりません。」


間髪入れずに否定されたティーナは文句を言いながら外へ出掛ける準備を始める。

エナは何も言わずにそれを手伝う。


「外に散歩してくるわ。」

「はい。行ってらっしゃいませ。」


部屋を出て学園内の敷地を歩き始め、いつも3人で昼食を食べているガゼボに向かった。


「ティーナ様。」


ナタリーとセシルが既に座っていてお茶会をしていた。


「お茶してるなら呼んでくれれば良かったのにー!」


ティーナは自分の定位置に座った。


「別にお茶を飲む約束をしていたわけじゃないわ。偶然会ったのよ。」


ティーナが2人と居る時だけの口調になりナタリーもつられていつもの口調になる。


「ちょうど昨日の最後の試験の話をしていたのよ。」


セシルが昨日の試験内容を見せた。


「えっセシル、提出しなかったの!?0点じゃん!」

「違うわよ。マツリド先生に昨日の最後の試験内容について勉強したいって言ったら下さったのよ。」

「なーんだ。そうだったの。」


セシルは教科書を何冊か持って来ていたが何処にも答えらしきものが書いてある箇所が見当たらなかったと言った。


「どうせマツリド先生独自の問題でしょ。難問作って私達に答えさせるのが好きなんだから。」

「まあそうでしょうね。」


そう言ってセシルは問題を鞄の中へしまった。


「早く1学期休みにならないかなぁ。」

「あと一週間の我慢よ。」


空を見上げているティーナを宥めるようにセシルが言った。


「ティーナは学期休みどうするの?」

「あー多分領地に行くと思うわ。お姉様から招待されたし。ナタリーとセシルは?」

「私も領地に行くつもりよ。父の仕事を見せてもらうの。」

「私は父の仕事次第ね。」

「セシル良かったら遊びに来て頂戴。これ住所と滞在する日付。」


ナタリーとティーナはメモをセシルに渡した。


「あと、出来る限りお茶会しましょうね!外出するのも良いわね。」

「そうね。そうしましょう。」


こうして1日が終わった。


次の日。

マツリドは採点済みの学期末試験用紙とともにクラス順位票も渡す。


「薄々気が付いているだろうが学年共通試験の採点はしていない。採点したのは最後の科目のみだ。Aクラスは明日より学期休みに入る。」


突然の休み宣言にざわつくクラスメイト達。

マツリドは思ったよりも早く授業が進んでおり最後の科目の平均点も良かった為、学長と話をつけたらしい。


「これは君達が努力を怠らず実を結んだ結果だ。良くやった。休み中の課題はないが勉学を怠る事のないように。2学期から今持っている成績順位順で座っているように。では解散。」


マツリドは言うだけ言って教室から出て行った。

ティーナとナタリーは席を立ち帰ろうとしたがいつまで立っても席を立たないセシルを見て様子を見に行った。


「セシル様、帰りませんの?」

「あー…。ちょっと教員室へ行く用事が有るので先にお帰りになって?」


セシルは鞄にプリントをしまい教室から出て行ったので二人で寮に帰る事にした。

寮へ戻りエナに今日から学期休みだと伝えるとエナは荷造りを始めた。


「学用品はお嬢様が片付けてくださいね。」

「エナがやってくれるんじゃないの!?」

「私はお嬢様の洋服を片付けております。…ああっ私の代わりに大変な荷造りをして私は簡単な学用品の片付けだけで良いと仰ってくださるのですね!なんてお優しいお嬢様なんでしょう!」

「っやるわよ!私が学用品の片付けをするわ。エナには他の荷造りをお願いするわ。」

「かしこまりました。」


エナは大袈裟な演技をしてティーナに簡単な物をやらせる。

これはティーナが学校に入学してから行っていてエナの中では秘技《お嬢様はお優しい攻撃》と呼んでいる。

何とか荷造りが終わり馬車に乗り込もうとするとゼムスの声がティーナを呼び止めた。


「ティーナ嬢、学期休みは領地に行かれますか?」

「ええ、そのつもりですわ。」

「…良かった…。いつもの物を買いにロレッタ公爵領地にお邪魔致します。前持ってロレッタ公には手紙を出しておりますので、…もしあちらで偶然会ったら領地の案内をして頂けますか?」


その言葉にティーナは笑みを返した。


「いつもありがとうございます。お待ちしてりますわ。私で良ければご案内させて頂きます。では、ごきげんよう。」


ゼムスは嬉しそうに笑いお辞儀をした。

馬車がティーナの自宅へと出発した。



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