10 ナタリー
1ヶ月後、ついにナタリーの婚約者トルマリンの原石がやって来た。
女王はガクガール国の王宮に滞在するそうでマスカゼ公爵の屋敷にやって来たのはトルマリンとナタリーの世話係をやっていたニレーヌだった。
仰々しい挨拶を終え、ナタリーにこっそりアリッサとどちらがナタリーに会いに行くかで揉めましたと伝えた。
「こちらが滞在して頂く間の住まいとなります。」
執事がトルマリンとニレーヌを案内する。
「ご滞在中、自由にこの屋敷の散策や街に出ても構いませんが街に出る時は護衛を付けますので必ず仰ってください。」
トルマリンは沢山のメイドに囲まれオロオロしていた。
その姿を執事の後ろから見ていたナタリーは笑いを堪えるのに必死だった。
「トルマリンの原石様、アイーシャ女王様から聞いていると思いますが結婚後の新居の場所を視察しに行きたいのです。お疲れでしょうが明日、お付き合い頂けますか?」
「はい。承知いたしました。」
トルマリンは礼儀正しくお辞儀をした。
夕食はトルマリンを招き家族全員で食べた。
トルマリンはお礼を言って家へ戻った。
「凄いイケメンでしたね。」
ナタリーが本を読んでいる所にジューロがやって来た。
「そうでしょう?始めて会った時よりも更に背も伸びていて格好良くなっていたわ。」
ナタリーは婚約者の素敵な所を惜しげも無くジューロに話した。
「わ…分かった…。姉さんが気に入ってる事はよく分かった。」
「政略結婚でもいつかは愛し愛される夫婦になれるといいなと思っているわ。」
「そうなると良いね。」
ジューロは心からそう思った。
次の日、ナタリーはトルマリンと共に新居の候補地に向っていた。
鉱山と工房に近い土地は1番近い大きな街から馬車で1時間の場所だった。
次に向かった所は鉱山と工房に1番近い大きな街の中だった。
首都には全く及ばないが賑わっているし貿易船も停まる港も有る。
鉱山の方とは逆方向に少し馬を走らせれば小麦畑や牧場が広がっているた。
「私はここを新居地に選びたいのだけど、トルマリンはどうかしら?」
元々マスカゼ公爵が別荘地として使っていたが公務が忙し過ぎて賃貸として貸し出していた物件は街中に有る大店がすっぽり入るどころか平民の家がもう1軒分入りそうな広さだった。
ここだったら自宅兼工房、お店が建てられると興奮気味にトルマリンに言った。
「ナタリー様が決められた場所で構いません。」
その様子を見て笑いながらナタリーに言ったトルマリン。
「もうっ!貴方も住むのよ!貴方も一緒に考えて欲しいわ。」
「申し訳ございません。しかし私は貴女と暮らせるのなら何処でも良いのです。」
「っ!?そっ!そうっ!!なら、ここにしましょう!」
ナタリーは顔を真っ赤にしながら馬車に向かった。
自宅に戻り、場所を決めた事を話した。
今建っている建物を1度取り壊しナタリーやトルマリンの希望するの間取りで家を建てようと決まった。
建築士を呼ぶに数日掛かる為、その間ナタリーはトルマリンに街を案内する事にした。
初めて見る街やお店を興味津々で周るトルマリン。
「あ、そう言えば貴方の洋服も新調しないといけないわね…。」
「いえ、私にはご用意して頂いた服が有りますので…。」
「駄目よ!私、これでもガクガール国の中で5本の指に入る家の娘なのよ。その夫となる人が我が家が用意した服で満足するなんて駄目。しかも数も全然足りないわ。」
ナタリーの勢いに押されトルマリンは苦笑いをした。
早速ナタリーは自宅に戻り母に相談をした。
すると翌日、仕立て屋がやって来てトルマリンの採寸を計りナタリーの母の指示でマスカゼ公爵家の名に恥をかかせない服を作るように言われ帰っていった。
それから数日後、今度は建築士がやって来た。
既に土地の広さ、地盤の確認は済んでいて間取りを決めるだけだと言われた。
「なら来客用の家と工房兼自宅、倉庫の設置をお願いしたいわ。」
建築士はナタリーの希望をメモしトルマリンにも希望を聞いた。
「あー…言っても良いんですか?」
「勿論よ!貴方の家にもなるのだから。」
建築士が答える前にナタリーが話した。
「それなら…風水を参考に家を作って欲しいのですが…。」
建築士はトルマリンの言葉に首を傾げた。
ガクガール国では聞いた事の無い言葉ったのだ。
トルマリンは風水について説明し建築士もナタリーも興味津々で話しを聞いた。
「分かりました。…しかし私が知っている限りそれを生業としている人を知りませんので、間取りを作るのに時間が掛かってしまうのですが宜しいですか?」
「…ご迷惑で無ければ私が間取りのお手伝いを致しますが…。」
トルマリンの言葉に目を輝かせ、是非お願いしたいと建築士が言った。
次の日から、トルマリンは建築士の元へ朝から晩まで通う事となった。
トルマリンが建築士の元へ通うようになってから暇になったナタリーは世話係だったトルマリンが書いてくれた本を読むようになった。
新居が出来るまで原石加工が出来ないと覚悟はしていたが、早く加工がしたくてたまらなくなっていた。
数日が経過し建築士が間取り図を持って来た。
その間取り図は文句なしの出来だった。
ナタリーは希望していなかったが工房兼自宅の後ろには庭が備わっていた。
「凄いわ!トルマリンさん、大変だったでしょう?」
建築士が帰った後にナタリーがトルマリンに聞くとトルマリンは首を振った。
既に資材を注文してある為、数日から着工が始まると説明を受けていたナタリーは新居が出来るのを楽しみにしていた。




