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9 ナタリー

ナタリーが砂漠の国で技術を学び始めてから2年と半年が過ぎた。

技術の腕は既にバジュラに認められる程になっていた。

結婚はナタリーの帰国が決まってからとなっている為、未だナタリーは婚約者のトルマリンに2度しか会っていなかった。

恋人同士の婚約なら不安になるかもしれないがナタリーは政略結婚なので不安にもならなかった。

ある日、ナタリーは王宮に呼び出されたのでニレーヌに連れられ謁見室でアイーシャ女王と対面する。


「バジュラからナタリー嬢にもう教える事はないと文をもらっての。そなたを呼んだ次第だ。」


アイーシャ女王は、ナタリーがこのままバジュラの元で腕を磨き続けても良いしガクガール国に帰国しても良いがどうするかをナタリーに聞いた。

ナタリーはガクガール国に帰国する事をすぐに伝えた。


「相分かった。では帰国日はいつにする?船はいつでも出せるがトルマリンの原石の準備もある故出来れば1週間後にして欲しいのだが…。」

「畏まりました。では1週間後に帰国したいと思います。」

「我儘を言ってすまんな。」


ナタリーは首を横に振った。

自宅に戻りニレーヌに1週間後に帰国する話をした。

ニレーヌは頷き少しずつ荷造りを始めるとナタリーに言い、工房で働く人達へのお別れをどうするのか聞いた。


「明日行くわ。」

「畏まりました。」


ニレーヌはそう言うとナタリーをアリッサに任せて街に出掛けて行った。

夕方になりニレーヌは様々な物を買って帰って来た。


「明日、工房の皆様にお配りする品物を購入して来ました。」


ニレーヌはナタリーに一つ一つ説明した。

ナタリーは別に分けて有った物について聞くと、ナタリーの家族へのお土産だと答えた。


「ニレーヌ、ありがとう。私の家族にまで気を使ってくれて…。」

「ナタリー様の執事として当たり前の事をしているだけです。」


そう言いながら照れているニレーヌ。

次の日、ナタリーはニレーヌと一緒に工房に居た。

バジュラから別れの挨拶をして粗品を渡すナタリー。


「国に帰っても原石の加工をサボるんじゃないよ。腕が鈍っちまうからね。」

「勿論よ。本当にありがとうございました。」


次々と挨拶をする。


「「ナタリー!!」」


ジェネとエリーがナタリーを抱き締める。


「私いつか技術士になってナタリーの居る国まで私の名前を轟かせるから!」

「私達の事、忘れないでね!」


二人は涙を流しナタリーとの別れを惜しんだ。

ナタリーも涙を流し何度も頷いた。


「異人の私と仲良くしてくれてありがとう。」


ナタリーは工房の全員に見送られた。


「今日、貴女の人の良さがよく分かりました。」

「?」


帰りのラクダの中でニレーヌは微笑んだ。


「職人気質の皆に見送られるなんて誰にでも出来るわけではありません。特にバジュラ様にあんなに惜しまれるなんて…貴女は凄い人です。」

「そんなこと無いわ。」


それから1週間、ナタリーは街をニレーヌと周ったり自分も荷造りを手伝ったりした。

そして遂にナタリーがガクガール国へ帰国する日がやって来た。


「ニレーヌ、アリッサ、料理長、今までお世話になりました。感謝しても仕切れません。あと…最初に私の世話をしてくれたトルマリンにこれを渡して頂けますか?」


ナタリーはトルマリン宛に書いた手紙をニレーヌに渡した。

ニレーヌは、お任せくださいと手紙を受け取った。

ナタリーは感謝を口にし船に乗り込んだ。

船着き場には別れを済ませたはずの工房の皆が手を振っていた。


「いつでも遊びにおいで!」

「ナタリーならいつでも歓迎するわ!!」


ナタリーに向かって叫ぶ。


「ありがとう!!必ず遊び来るわ!!」


ナタリーは大きな声を出して手を振った。

結局、最後までトルマリンに会う事は出来なかったナタリーだった。

遠く離れて行く砂漠の国を見送りナタリーは船内の部屋に戻った。



長旅を経てナタリーはガクガール国へ戻り、船から降りると弟のジューロが迎えに来ていた。


「ジューロ!また一段と大きくなったわね!」


ジューロを抱き締めるナタリー。


「…姉さん、ここは外だよ…。」

「あっ…そうだったわ…。貴方に会えるのが嬉しくてつい…。」


ジューロは苦笑いしながらナタリーをエスコートし馬車に乗った。


「父さんと母さんが姉さんの帰りを首を長くして待ってたんだよ。」

「そうなの?」


話をしていると馬車が止まり自宅に着いた事を知らせ、外で待機していたメイド達が次々とナタリーの荷物を運んで行く。

ナタリーは両親に帰宅した挨拶をした。


「良くぞ戻った。」


父も母もナタリーの帰国に心から喜んだ。

自室に戻りベッドに倒れ込み、うとうとしているとメイド達がやって来てナタリーにマッサージを始める。


「ちょっ!?えっ何!?」

「奥様からのご指示でナタリー様がご帰宅したら全身を入念にマッサージする様に言われております。」


ナタリーは疲れも有り抵抗する事なくマッサージを受け入れた。

マッサージが終わる頃には深い眠りについていた。

ナタリーが目を覚ましたのは深夜になってからだった。


「いけない…。寝てしまったわ…。」


家族は皆、寝ていた為お腹の減ったナタリーは普段は行かないキッチンへ向かった。


「お嬢様、お目覚めですか?」


深夜にも関わらず料理長が起きていた。


「えぇ…。深夜に申し訳ないんだけど何か食べる物はあるかしら?」

「勿論ございますよ。ダイニングでお待ち頂けますか?」

「迷惑じゃ無ければここでいいわ。」


料理長は迷惑だなんてとんでもないと言って一人分のテーブルとイスを用意し食事の準備を始めた。

暫くするといい匂いがしてきてナタリーのお腹が鳴った。


「さ、出来ましたよ。」


出されたのは温かいスープと生ハムサラダ、そしてソテーされた魚料理だった。

久し振りの自分の家の料理に舌鼓を打ち平らげるとプリンタルトが出て来た。


「まあ!デザートまで有るの?嬉しいわ!」


料理長は昨日のディナーのデザートで申し訳ないと謝ったがナタリーは気にせず食べた。


「美味しかったわ。どうもありがとう。」


ナタリーは自室へ戻り歯を磨いてトルマリンから貰った本を読みながらいつの間にか寝入ってしまった。

朝になりメイドがナタリーを起こしにやって来た。


「おはよう。ナタリー、朝食後話が有るんだが良いかな?」


朝食を食べながら父がナタリーに言った。

朝食を食べ終わるとナタリーは父の居る部屋に向かった。

父は既に自分の机で仕事をしていたがナタリーが入って来ると手を止めてナタリーをソファに座らせ向かい側に座った。


「話って何?」

「うん…結婚はいつにしようかと思ってね。籍を入れるだけでも早目にしたいのだが…。」

「私はいつでも良いわよ。」

「そうか…。なら、あちら側の都合も聞いた上で決めよう。」

「あ、お父様。聞きたい事が有るんだけど。」

「何だい?」


ナタリーは結婚するなら嫁に行くのか婿を取る事になるのかを聞いた。

すると父はトルマリンの原石が婿に来る事になっていると話した。


「婿を取る事になるのね。この家はジューロが継ぐのよね?新しく新居を構えないといけないわね…。」

「新居の事なんだがいくつか候補地が有るんだが…。」


そう言って父は候補地の地図をナタリーに渡した。

1箇所目は1等地に有る場所で安全が確保されている所で、2箇所目は今の屋敷の近くで街が近くに有る場所。

3箇所目はマスカゼ公爵領地の鉱山と工房の近く、4箇所目は3箇所目と近い所に有るが街の中に有る土地だった。

ナタリーは4箇所目が理想的だと話した。

結婚後も働く予定のナタリーは工房の近くが良かったが街から遠く離れていると不便だと感じたからだ。

父は、そこは今空き家な為1度取り崩し家を建てようと話した。


「お父様、取り崩す前に1度3箇所目と4箇所目を実際に見てみたいわ。」

「そうだな。そうすると良い。」

「あ、出来れば婚約者も一緒に連れて行きたいんだけど…難しいかしら?」


父は婚姻の事も含め、その件も手紙を書く事にした。

数日後、砂漠の国の王宮から返事が返って来た。

全ての準備を終わらせ1ヶ月後に訪ねると書かれていた。

手紙を受け取った父は敷地内に建てられている来客用の家を綺麗にする様、メイド長に指示した。

父の指示が無くても綺麗に清掃をしていたが大掃除を始めますと良い半分以上のメイドと必要最低限の執事を残し来客用の家の大掃除を始めた。

屋根を張り替え外壁も打ち直し壁紙から絨毯までも替えた。

大掃除ではなくリフォームと言う言葉がピッタリだと日々直されていく家を見て思ったナタリーだった。

屋敷の敷地が忙しく稼働していたがナタリーはナタリーで屋敷に有るドレスを全て廃棄し新しいドレスや作業着を新調したり、毎日念入りに全身マッサージされたりと忙しい日々を送った。

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