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2 ナタリー

砂漠の国へ到着したナタリーは国の前を変えた方が良いのではと思った。

何処までも続く砂漠地帯だと思っていたが独特な木々や植物が沢山生えているし、至る所に噴水が設置してあり暑さを和らげていた。

ナタリーは船に乗っていた使者に案内され王宮へ向かった。


「ナタリー・マスカゼ公爵令嬢、良くぞ参られた。」


金を基調とし様々な宝石が埋め込まれている王座に座る女王アイーシャ。


「ご招待ありがとうございます。」

「畏まる必要などない。短期間とは言え同じ学校同じクラスで勉強した仲ではないか。」

「…とんでもございません。一国の女王様に礼儀を欠いてはマスカゼの名が廃りますわ。」

「そうか…。ならばナタリー嬢の好きな様するが良い。」


他愛のない話から始まり本題へ入り、封書に記載した通り王宮の別荘地を用意しているのでそちらで暮らす事と、滞在期間中に必要経費等は全て王宮が負担すると改めて言われた。


「ところで…ナタリー嬢。」

「はい。」

「そなた、また未婚だと聞いたがそれは真か?」

「え…?はい、仰る通り未婚です。」

「ふむ。なる程。妾と同じ20歳で間違いないな?」

「はい…。」


アイーシャはそれから何故結婚しないのか等を聞かれナタリーは父親を思い出し、内心うんざりしながら穏やかに答えた。


「ふむ。あい分かった。そこのトルマリンの原石を連れて参れ。」


アイーシャが侍女にそう言うと侍女は一礼をし謁見室から出て行った。


「今からナタリー嬢に世話役を付ける。」

「心遣い感謝致します。」


暫くすると先程の侍女が誰かを連れ戻って来た。


「ナタリー嬢、紹介しよう。トルマリンの原石だ。呼び方はナタリー嬢に任せようぞ。トルマリンの原石、ナタリー・マスカゼ公爵令嬢だ。これからお前が世話をする令嬢だ。挨拶せよ。」


そう言うとトルマリンの原石は一礼をした。


「トルマリンの原石と申します。これからお嬢様の滞在期間中全てのお世話をさせて頂きます。どうぞよろしくお願い致します。」


トルマリンの原石の挨拶を聞き終えたアイーシャは満足そうに頷いた。


「では存分に我が国の技術を学んでいってくれ。我が国は、そなたを心から歓迎する。」


アイーシャはそう言って謁見室から出て行った。


「ではナタリー様、参りましょう。」


トルマリンの原石は先導してナタリーを滞在先である王宮の別荘地へ案内した。


「こちらが今日からナタリー様が宿泊される場所になります。今日はお疲れでしょうから軽く部屋の案内をし明日、街を案内致します。」

「ありがとうございます。」


別荘は王宮から1時間程ラクダで歩いた所に有り市街から少し離れている為、人の行き交うざわつきがない静かな場所に建てられた限り無く白に近い水色の邸宅だった。

邸宅は壁に囲まれていて出入口には護衛が二人おり、手入れの行き届いたガーデンに噴水が設置して有った。

トルマリンの原石はナタリーに説明しながら部屋を案内した。


「こちらがナタリー様の寝室になります。」


ドアを開けてもらうと清潔感溢れる部屋になっていた。

トルマリンの原石はクローゼットを開け洋服について説明をした。


「市街では至る所に暑さ対策の噴水が設置してありますが市外では暑いのでこういった服を着ます。」


トルマリンの原石は完全に肌を露出する洋服を見せた。


「しかしガクガール国の貴族は肌をあまり露出しないと聞いたので市外に出る時は、これを着けて頂きます。」


風通しの良さそうな布を見せ、着替えなどの世話も致しますのでご安心くださいと言いトルマリンの原石は部屋を出ようとしたがナタリーが止めた。


「色々教えてくれてありがとう。ねぇトルマリンの原石って呼べは良いのかしら…これから長い付き合いになるだろうから貴方の事を教えてくれないかしら?」

「え…はい…。ではお茶の準備を致しますのでリビングルームでお待ち頂けますか?」

「えぇ、分かったわ。」


ナタリーは部屋着に着替えてからリビングルームに向かうと既にお茶と茶菓子が用意されていた。

椅子を引かれナタリーが座る。


「それでナタリー様は何を知りたいと?」

「貴方も座って頂戴。この場には私とアナタ、メイドの3人しか居ないのだから。」


ナタリーに強要され渋々座るトルマリンの原石。

トルマリンの原石が座った事を確認してナタリーは口を開いた。


「まず、アナタの本当の名前を教えてくれる?」

「先程も申し上げましたが、私はトルマリンの原石と申します。」

「トルマリンの原石って宝石の事でしょう?」

「ナタリー様は我が国の風習をご存知ではないのですね。」


砂漠の国の王族の男子は皆、生れた月の原石と呼ばれていて名前がなく結婚が決まってから妻に名前を付けてもらうのだとトルマリンの原石が言うとナタリーは驚きを隠せなかった。


「ちょっと待って!アナタ、トルマリンの原石って呼ばれていたわよね?じゃあ王族なの?…王族なのに世話役をするの?おかしくないかしら?」

「ナタリー様の言う通り、私は前女王の息子です。確かにガクガール国では王族が世話役をするなんて有り得ないと思いますが、ここは砂漠の国でございます。我が国では王族の男子が客人の世話をするのは当たり前の事なのです。」


ナタリーは納得は出来ないが郷に入れば郷に従えかと思い、それ以上追求をしなかった。


「では、アナタの事をトルマリン様とお呼びしますわ。」

「様は要りません。私はナタリー様の世話役ですから、トルマリンと呼び捨てでお呼びください。」

「そ…そう…。じゃあ…トルマリンさんは歳はおいくつなの?見た感じ私よりも下に見えるけど…。」

「はい、14になります。」

「私の弟よりも下ね…。」


ナタリーは年齢を聞いて安心した。

6歳も下なら女と男が一つ屋根の下に居ても間違いは起こらないと思ったからだ。


「…世話役と言うのは私の国で言う執事と言う事で良いのかしら?」

「そうですね。ナタリー様のお着替え、入浴はメイドがさせて頂きますが他のナタリー様に関する事は全て私が行います。」


メイドは、あくまでもトルマリンが出来ない仕事を補佐するだけで基本は掃除洗濯、ベッドメイキングなど雑用をするだけだと教えてもらったナタリー。


「食事に関しては専属の料理長がおりますので、食事の心配は無用です。」

「なる程…。」

「お聞きしたい事は以上ですか?」

「えぇ。教えてくれてありがとう。」

「いいえ。」


トルマリンはそう言ってナタリーに入浴時間を聞き微笑みながら席を立った。

ナタリーは自室に戻りベッドにダイブをする。

謁見室で見た時は美しい女の子だと思ったが、まさか王族の男の子だとは思わなかったのだ。

失礼な態度を取っていなかっただろうかと振り返って見たが、ちゃんとお礼とか伝えていたし大丈夫だろうと思ったナタリーだった。

取り敢えず無事に着いた事を知らせる手紙を書き、食事の時に届けて貰えるようトルマリンにお願いした。




「ナタリー様、おはようございます。」

「うぅん…?」


カーテンを開く音がし目を擦りながら起き上がるナタリー。


「っ!??トルマリンさん?」


驚くナタリーを尻目に忙しく朝の準備をするトルマリン。

寝ていた為、夜着だったのでベッドから出るに出れないナタリーだった。


「朝食の支度が出来ております。着替えはメイドのアリッサが行いますので、まずお顔を洗いましょう。」


トルマリンは気にしてなさそうだったので恥ずかしさを我慢しながらトルマリンの待つ洗面台に向かい顔を洗うナタリー。

トルマリンはナタリーが顔を洗い終わったのを確認し、すぐにタオルを差し出した。

それから顔を拭き終わった使用済みのタオルを籠に入れドレッサーの前に座らせガラス瓶に入った液体を顔に染み込ませた。

それからナタリーの長い髪の毛を丁寧にとかし、編み上げていく。

手際の良さに感心しているとメイドのアリッサがやって来てトルマリンと交代をした。

アリッサは一礼をしナタリーを着替えさせ、ベッドシーツや使用済みのタオル等が入った籠を持って部屋を出て行った。


「この格好で外に出るの?」


アリッサと入れ違いでやって来たトルマリンにナタリーは戸惑いがちに聞いた。

肌が露出し過ぎているのだ。


「我が国は暑いので今着ていらっしゃる服を着ます。」


そう言いながらトルマリンはクローゼットを開け昨日ナタリーに見せた布を持ち出し羽織らせる。


「昨日も申しましたが露出を避ける文化のご令嬢ですので、そちらを羽織ってお出かけください。お化粧は朝食を食べ終わってから致します。では参りましょうか。」


トルマリンにエスコートされ、ダイニングに向かった。

ダイニングに座るとすぐに料理長が料理を運んだ。

トルマリンに昨日の夕食の時と同じ様に砂漠の国での食事の仕方を丁寧に教えてもらいながらナタリーは食事を済ませる。

食べ終わった食器を片付けている料理長にお礼を言って自室に戻る。

トルマリンがやって来てナタリーに化粧を施す。


「やはり肌が焼けるのは避けた方が良いですよね?」

「そうね…。」

「では、失礼しますね。」


そう言いながら良い匂いがする乳白色の液体をナタリーの肌が露出している部分に塗り始まるトルマリン。


「ちょっ…トルマリン!自分でやります!」

「?しかし塗り残しが有りますと肌が焼けてしまいますよ?」

「ならっなら、アリッサさんにお願いしたいですわ!」

「アリッサは雑務をしておりますので…。」


塗り終わったトルマリンはポケットからハンカチを取り出し手を拭いた。


「今日の予定は市街の案内を致します。明日、技術師に会う予定となっております。では、参りましょうか。」


ナタリーはトルマリンにエスコートされ馬ではなくラクダの馬車に乗り1時間掛けて街に向かった。

朝市が開かれていて大変賑わっていたが働いているのも買い物をしているのも女性だけだった。

朝市を周りながら様々な店舗を周った。


「あら?」


ナタリーはある装飾品店で足を止めた。


「気になりますか?」

「えぇ。」

「では入りましょう。」


二人はお店に入り、ナタリーが見ていた装飾品を見せてもらう事にした。

手袋をした従業員がショーケースから取り出した。

ナタリーは渡された手袋をはめ、装飾品を手に取る。


「見た事がない宝石の加工の仕方ね…。」

「分かるかい?これは試作加工された宝石を使っているんだよ。」

「試作加工…。」


従業員は新しい宝石の加工の仕方を試行錯誤した物や技術士になりたての者が練習の為に加工した物を一般市民用に販売しているのだと話した。


「だからかなり値段が安いだろう?」


ナタリーが値札を確認すると1500Rと書かれていた。

ガクガール国と通貨価値が同じなので、その安さに驚いた。


「信じられないわ…私の国でこの安さで本物の宝石を使っているなんて…。」

「他にも安い物があるよ。コレはクズ原石を使ってるんだ。」

「えっ!これがクズ原石?」


クズ原石は宝石にするには透明度が足りなかったり不純物や気泡が入っていたり要は市場に出せない宝石の原石のことだ。

マスカゼ公爵領地の鉱山でも当然、クズ原石は出て来るがわざわざ加工したりせず現物図鑑として販売している。

しかし購入者は学者や博物館などかなり限られていて、殆ど廃棄していた。

お喋りな従業員から色々聞いたナタリーは目を引いた装飾品を購入しようとお金を取り出したがトルマリンが止め、金額を書いた紙を従業員に渡した。

従業員は、その紙を受け取り商品を包んでナタリーに渡した。

丁度、お昼時になったのでお昼を食べる事にした二人。


「さっき渡していた紙は何?」

「これは約束紙と言います。」


約束紙をナタリーに渡すトルマリン。

約束紙は2枚で一組で1枚目に金額を書くと2枚目に複写されるようになっていた。

ナタリーにそれは王族専用の約束紙になっていて薄っすら王族の紋章が印刷されていて約束紙が支払いに有効な物だと証明する王宮の印が押されていると説明し、1枚目は王宮に提出して2枚目を店側に渡す事で後日、店側が2枚目とお金を引き換える事が出来る物だと仕組みを教えた。


「勿論、不正が行われないようにしています。」

「凄いわね。私の国にはそういう支払い方はないわ。と言うか、これ位の金額なら支払えるわよ!」

「お忘れですか?滞在中の費用、その他諸々は全て我が国が負担する契約になっていますのでナタリー様がお持ちのお金は必要ないんです。」

「そんな申し訳ないわ…。じゃあここの支払いも…。」

「えぇ、王宮が支払います。」


ナタリーはそんな甘えてしまっても良いのか悩んだが拒否しても受け入れてもらえないだろうと思い、買い物は必要最低限と決めお言葉に甘える事にした。


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