1 ナタリー
ナタリー・マスカゼ公爵令嬢。
彼女は国内最大級の鉱脈を持つマスカゼ公爵の子供だ。
ナタリーには5歳年の離れた弟ジューロが居て溺愛していた。
将来ジューロが跡を継ぐことを考えたナタリーは少しでもジューロの手伝いが出来る様にと専門学部デザイン科を卒業し父に教わりながら経営の事を教わった。
現在、ナタリーは宝石のカット、デザイン、価格等に携わっている。
ナタリーのデザインの装飾品は貴族だけではなく諸外国にも大変人気になっていた。
そんなある日、ナタリーは父から呼び出された。
「ナタリー、いい話が有るんだが。」
「何でしょう?結婚の話ですか?それならお父様がお決めになってよろしいと何回も言っているでは有りませんか。」
ナタリーは高等部卒業後デザインの勉強が楽し過ぎて恋愛の事など忘れていた。
思い出したのは友達のティーナとセシルが結婚した後だった。
ナタリーは恋愛結婚を諦め、一生独身か政略結婚で良いやと思っている。
「そんな話じゃない。ナタリー、砂漠の国の技術を身に着けに行けるなら行くつもりはあるかい?」
父の申し出に目を光らせ、すぐに頷いた。
「…しかしそうすると婚期を逃してしまうかもしれないよ?」
「お父様っ!私、結婚なんかしなくても良いと思ってますの!我が可愛いジューロが跡を継いだ時に役に立てるのなら何処へでも行きますわ!」
ナタリーの迫力に押され父は、ため息をつきながら以前、砂漠の国アイーシャが来日した時にマスカゼ公爵領地を訪れ鉱石の発掘量と質の高さに驚いたらしい。
砂漠の国にも世界最大級の鉱脈を保持しており、加工技術も世界一で門外不出の技術だったが、アイーシャが女王に即位し感謝と友好の意味を込めてガクガール国でただ一人だけに技術を教えると誘いが来たそうなのだ。
ゼムス国王は今最も期待されているナタリーに白羽の矢を立てたのだった。
ゼムス国王は、いつ戻って来られるか分からない為、無理強いはせずナタリーに任せると言ってくれたらしい。
「ここに署名がある。これに名前を書けば、お前が行く事になるだろう。」
ナタリーは内容を確認した。
滞在場所は砂漠の国の王宮の別荘地、滞在費用その他諸々は全て砂漠の国が負担する為要約すると身体1つで来てくれればいいよと書かれていた。
特にこちらに不利になるような事は一切書いていなかった為、すぐにサインをした。
「出発日が決まったらおしえてください。」
父が署名を確認し、封に入れ執事に渡した。
ナタリーは一礼をし父の部屋から出て行った。
ジューロに会えなくなるのは寂しいけれどジューロが専門学部を卒業するまでには帰れるよう努力しようと決めたナタリーだった。
それから2週間が経ち、ナタリーの出発日が1ヶ月後と決まった。
ナタリーは砂漠の国の気候を調べ、それに適した服を準備した。
「ナタリー、行くと決めたのなら辛い事が有っても歯を食いしばって学んで来るのよ。」
「分かってるわ!それじゃあ行ってくるわね!」
ナタリーを迎えに来た砂漠の国の王族の船に乗り、ガクガール国を出港した。




