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12 マツリド

3学期の学期休みに入った。

3月20日に国王の退任式が行われる為、紳士淑女正装店から連絡が有り連絡係をバルームに任せ、お店に向かった。

すぐに個室に通され、この前の従業員が生地の色、デザイン、採寸を行った。


「装飾品はどうしますか?」

「任せます。」

「分かりました。では前回と違いオーダーになりますので、お支払いは商品と引き換えになります。出来上がり次第、金額を手紙で知らせます。」

「よろしくお願いします。」


リュークはすべての用事を済ませ、学校に戻った。


「お前、いい加減に身を固めたらどうなんだ。」


リュークは、お礼の食べ物を渡した時にバルームにそう言われた。


「またその話ですか…。セシルさんと私が授業外授業を行ってからその話ばかりですね。」

「そうだな。セシル嬢と個別授業をしてからお前が毎日楽しそうに見えてな。セシル嬢ならお前を幸せにしてくれるのではと思って仕方ないんだよ。」

「リッテル先生がそう思うのは自由ですが、私には本が有れば良いし、セシルさんにはルーカス君が居るでしょう。」


リュークは、確かにセシルと授業外授業をするのは楽しい。

しかし、それは勉強熱心な上に覚えも良いから教えるのが楽しいのであってセシル個人と一緒に居るからではないとバルームに言った。


「…そうか。」


バルームは悲しそうに笑い教員室を後にした。


3月20日になり、リュークは王宮の会場に居た。

前回は集会の内容が分からず微妙な雰囲気だったが今回は国王の退任式とゼムスの戴冠式と明確に招待状に書いてあった為、とても和やかな雰囲気だった。

2つの式が終わり、ゼムスの公開プロポーズが有りティーナが了承した。

二人の成長が嬉しく思わず潤んでしまったリューク。

ダンスパーティの時間になり、リュークは参加している生徒やその保護者達と他愛もない話をしていると視線を感じた。

顔を視線の感じる方へ向けるとセシルが座っていた。

リュークは相手に別れを告げセシルの元へ向かった。

挨拶をして他の人と同じように他愛もない話をするリューク。


『私は今、普通にセシルさんと話が出来ているだろうか?』


美しく着飾っているセシルを前に緊張してしまい、リュークは話を切り上げ適当な理由を付けセシルから離れようとしたがセシルもガーデンテラスに行く事になった。

エスコートをしてベンチに座らせ、また他愛もない話をする。


「何故、あの時飛び級したくないと言ったのかまだ教えては貰えませんか?…実はずっと気になっていて…。」

「…では先生、前に質問した答えを教えて下さい。教えてくださったら理由を教えます。」


セシルは前に好きな人に好意を持っている事を知ってもらうにはどうすればいいかという質問をしてたがりリュークは、まだ答えていなかったのだ。


「…分かりました。以前にも言った通り、私には人間関係…特に恋愛に関しては分かりません。だからこそ、言葉に出して気持ちを打ち明けてはどうかと思うのですが…。単純過ぎでしょうか?」


リュークは精一杯の考えを言った。

するとセシルは微笑んだ。


「私が飛び級したくないと言ったのはマツリド先生が好きだからです。高等部は3年間しかないのに飛び級して残り1年間しかマツリド先生に会えなくなるのが嫌だったからです。」


リュークはバルームが言っていた事を思い出した。


「…生徒から好かれているとは思わなかったな…。生徒から好かれるというのは教師としてこんなに嬉しいものなのか…。」


リュークはセシルが教師として好かれていると思ったが、セシルはリュークの手を取った。


「先生?私は異性として先生が好きだと言っているの分かりますか?」

「…ん…?…イセイ…?っ!??」

「そうです。」


リュークは手を握られた上に異性として好きだと言われ混乱した。

教師としても異性としても好かれることのなかったリュークは嬉しくなり赤面しながらセシルの手を外す。


「セッ…セシルさんっ!?…そう言う冗談は頂けない。」

「冗談ではありません。私も人の心を弄ぶ冗談は嫌いです。約一年間、マツリド先生と一緒に過ごしてもっと一緒に居たいと思ってしまったんです。」


セシルが人の心を弄ぶ冗談を言わないのはリュークは知っている。

いくら教師と生徒の恋愛は禁止されていないからといってもリュークは教師として返事をするわけにはいかなかった。

そこで、あの噂を使ったのだ。


「…でも…君はルーカスと…。」

「ルーカスは友達です。」


はっきり言い切る以上、リュークはルーカスとは本当に友達なんだろうと思った。

リュークがセシルに話しかけようと口を開いた瞬間、ルーカスが現れセシルを連れ去ってしまった。

その後ろ姿を見つめながらリュークはため息をついた。


『…俺は今、なんて言おうとしたんだ。彼女にはルーカス君が居る。彼が居れば俺への気持ちなんて忘れるだろう。』


リュークはまだ賑わう会場を後にし自宅へ戻った。

着替えもしないまま自分の机の椅子に座り引き出しを開けた。

引き出しの奥から白い箱を取り出した。

白い箱の中には更に小箱が入っており、リュークは小箱を開けた。

そこには誰にも渡す事のなかった学校の校章とリュークの名前が彫ってあるネクタイピンが輝いていた。



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