9 マツリド
2学期が始まり、淡々と授業を進めるリューク。
ダンスパーティの練習が始まるまでにはクラスの半分が授業について行けなくなっていた。
飛び級させる生徒を選別するとはいえ、心が痛んだが同時に嬉しくも有った。
「マツリド先生はダンスパーティでダンスを踊られるんですか?」
セシルが授業外授業後にリュークに話し掛ける。
「いえ、私は開催宣言には参加しますがダンスは踊りません。」
いつの間にか授業が終わった後に雑談するのが当たり前となりリュークは労いを込めて飲み物を振る舞うようになった。
「そうですか…。」
「ダンスパーティは学園の一大イベントですから勉強の事を忘れて楽しむと良いですよ。」
あまり個人的な話をするのが嫌いなリュークは兄のフォースと違って深く踏み入って来ないセシルを気に入るようになった。
ダンスパーティ練習期間が始まる頃、学園長に呼び出されたリューク。
学園長室には学園長、他国の女子とゼムスが居た。
「彼女は砂漠の国のアイーシャ第二王女だ。しばらくの間、君のクラスで面倒を見て欲しい。」
「詳しい事は機密で教えられないのですが、お願いできないでしょうか?」
既に編入テストは受けているらしく、結果はAクラスに相応しい結果だったらしい。
この時のゼムスは自分の生徒としてでなくガクガール国の第二王子として言っているのだとすぐに分かった。
「分かりました。」
「宜しくお願い致します。」
アイーシャは微笑みリュークにお辞儀をした。
学園長室を出るとゼムスに呼び止められ、少し確認したい事があると言われたので相談室に向かった。
「進級するのに必要な出席日数を教えて欲しいんです。」
「進級するのに必要な出席日数はないですよ。3学期の学年末テストを受け一定の点数を取れば進級出来ます。」
リュークは進級に関しては校則にも書いてあるとゼムスに言った。
一般生徒なら欠席理由を聞くがゼムスは王族だし、先程のアイーシャと何か関係が有るのだろうと思ったが余計な事は一切聞かない。
「しかし3学期の始めにあるテストを行います。そのテストは同日の午前中までに受けて貰いたいのですが。」
賢いゼムスは何のテストが行われるのか分かったのだろう。
頷いたが朝6時でも可能かを問われリュークは自分が付き合うから午前中で有れば何時からでも構わないと言ったので、ゼムスは朝6時からテストを受けると約束をした。
「色々ご迷惑をお掛けしますが宜しくお願いします。」
「構わない。」
ゼムスは迷惑を掛けるついでにティーナの事もリュークにお願いした。
「分かりました。いいでしょう。」
「先生、ありがとうございます。宜しくお願いします。」
「王子たるもの簡単に人に頭を下げてはいけませんよ。ティーナ嬢は私の生徒ですし、しっかりフォローはしますから安心してください。」
リュークが微笑んだのが珍しかったのかゼムスは少し驚いていたがすぐにお辞儀をした。
「すみません。遅くなりました。」
既に補習室でプリントの問題を説いていたセシルにゼムスが謝るとセシルは首を振った。
「大丈夫です。」
セシルはダンスパーティ練習期間になってもリュークの元へ行き勉強をし続けた。
ダンスパーティ当日。
リュークはセシルに話した通り開催宣言に参加し奥庭に行こうとしたがドレスアップしたセシルを見て何故か目が離せなかった。
あまり表情は表に出さないが元々可愛らしい顔をしてるセシルがとても輝いて見えた。
「…何だ、セシル嬢を見てるのか?」
「っ!リッテル先生!」
「開催宣言が終わるとすぐに奥庭に行く奴が何を突っ立ってると思ったら…。気になるなら話し掛けに行って来たらどうだ?」
バルームはニヤニヤしながらセシルに見惚れていたリュークに言った。
「行くわけないでしょう。大体、セシルさんを見ていた訳ではないです。」
「照れるな照れるな。」
「照れてないです。」
バルームを振り切り図書室に向かい本を何冊か借り奥庭へ向かう。
目は文字を追うのに頭はセシルの事を考えていた。
『生徒に見惚れるなんてあってはならない。しかもフォースの妹だ。そうだ。フォースの妹だから気になるだけだ。』
リュークは心の中で何回もそう言いながら本を読む。
やっと夜になり会場に戻るリューク。
会場はカップルで賑わっていた。
「マツリド先生、こんばんは。」
「こんばんは。」
セシルがリュークに挨拶をしにやって来た。
「パーティは楽しんでいますか?」
「はい。友人と学校でこんなに長い時間一緒に居たり話すの初めてですので…。」
「そうですか。それは良かったですね。」
セシルと話しては居るがちらちらニヤニヤしながらバルームが見ているのが分かりセシルとの会話を切り上げ呆れながらバルームの元へ向かった。
「…今のは何ですか?」
「今のって?」
「何でセシルさんと話をしている時にニヤニヤちらちら見てきたんですか。」
「そんな事したかのー?覚えとらんわ。」
「こういう時だけ老人に戻るの止めてもらえませんかね。」
「いやー。将来セシル嬢は美しくなるんじゃろうなぁ。そうなれば周りが放っておかんだろうなぁ。いいのかなぁ?いいのかなぁ?」
「…。良いんじゃないんですか?生徒が幸せになるのを見届けるのもまた教師の仕事ですし。」
バルームの茶化す言い方にイライラしながらリュークが言った。
「お前は本当に頑なだな。」
バルームはため息をついた。
パーティが無事に終わった次の日。
ゼムスから有る程度の理由を聞き暫く休みますと言われたリューク。
ゼムスが出席しなくなった以外はいつも通りの授業風景となった。
ゼムスの欠席が続いたある日、ティーナがリュークの元へやって来て欠席の理由を聞かれたが規則として伝える事が出来ず、ティーナにヒントを与えた。
理解したティーナはリュークに休みますと言い切り学校を後にした。
「青春ですね。」
「そうですね。」
「マツリド先生にも青春が来ているの分かりますか?」
「分かりませんね。」
バルームはリュークに問い掛けたがすぐに答えを出されいじける。
「ったく…。くだらない事言わないでください。」
「くだらない事だぁ??この鈍感クソ男め!セシル嬢はこんな男の何処が良いんだ。」
ブツブツ言いながら教員室に戻るバルームだった。




