1 マツリド
リューク・マツリド。
実家はレストランを経営していて父がコック、母が配膳係として働いている。
幼い頃から本が読むのが好きで近所のお兄さんやお姉さんに連れられ図書館に行くのが何よりも楽しみだった。
不思議なもので一度読んだ本の内容は全て覚えていて、リュークの年齢にしては難しい本も理解していた。
平民は一定の年齢に達すると学校へ通う事が義務付けられていて平民のリュークも今年学校へ通う事になっている。
入学式を終え、クラス分けの為のテストが行われる。
平民の為、殆どの子が読む事は出来ても書く事が出来ない中でリュークだけはテストで満点を取った。
授業が始まっても他の子達は一生懸命勉強していたが既に知識として見についていたリュークにとっては退屈なものだった。
「リューク君、ちょっと来てくれるかな?」
いつもの退屈な授業が終わった後に担任の先生と一緒に学園長室に向かった。
「リューク・マツリド君ですね。先生から話を聞いているよ。さ、こちらに座ってくれるかな?」
学園長に言われるまま椅子に座ると学園長は6枚の封筒をリュークに渡した。
封筒にはそれぞれ初等部2年、中等部1年、中等部2年、高等部1年、高等部2年、高等部3年と書かれていた。
「まず初等部2年から解いてみて欲しい。」
そう言われ初等部2年と書かれた封筒を取ると問題用紙が出て来たので解き始める。
30分もしないうちにリュークは解き終わり担任の先生に渡した。
先生はさっそく採点し、その結果を学園長に渡した。
「では次に中等部1年を。」
リュークはまた問題を解き先生に渡し採点し終わった物を学園長に見せる。
高等部3年までの問題が終わるまで繰り返した。
「ふむふむ。マツリド君、君はどうやら天才らしい。明日、もう一度来てもらえるかな?」
「分かりました。」
リュークは学長からそう言われ、担任の先生がリュークの両親と話かしたいからと言ってリュークを自宅まで送ってくれた。
担任の先生が帰るとすぐにリュークの母がリュークを呼んだ。
「お前、頭が良いんだって?もしかしたら飛び級するかもしれないと先生が仰っていたよ。」
「そうなの?」
母が喜んでいるなら悪い話をしたんじゃなさそうだと安心したマツリドだった。
次の日、学園長に言われた通り放課後に学園長室に行くと見知らぬ人が居た。
「紹介しよう。彼女はブランカ・リッテル先生だ。」
「初めまして、リューク・マツリドです。」
リッテルはうんうんと頷きながらリュークを見た。
「彼女は高等部1年生を担当している先生なんだよ。君は本当なら専門学に飛び級させたいんだが、リッテル先生が急な飛び級は良くないと言うから高等部1年生に編入してもらう事になった。」
学園長は話を続けた。
高等部からは学校の寮へ入る事になっているのだがリュークがまだ10歳という事で編入先のクラスの担任の先生ブランカの寮で暮らす事となったと言った。
ブランカとリュークはリュークの自宅に行き、ブランカが全ての経緯を両親に話した。
週が明けリュークとブランカは学校に居た。
ブランカについて行くと学校の敷地内にある寮に連れて行かれた。
「ただ今。」
「お帰り。その子が?」
「そうよ。リューク、この人はバルーム・リッテル。私の夫で高等部2年生の担任の先生よ。」
「初めまして、リューク・マツリドです。」
「坊主、よく挨拶出来たな。将来が楽しみだ。」
完璧な挨拶をしたリュークにバルームは笑顔を向けた。
学校の敷地内にある教員用の寮は独身寮と家族寮に別れていて独身寮は3階建ての建物の中の1室が個人寮となっていて、家族寮は2階建ての一軒家となっている。
ブランカは家中を案内し最後に1階に戻りリュークの部屋を紹介した。
「週明けから授業に出てね。学校では先生と生徒だけど寮に帰ったら私達は家族よ。お父さん、お母さんだと思ってもいいわよ。」
ウィンクをするブランカ。
「明日はバルームと一緒に学校に必要な物を買って来てね。」
ブランカは連絡係の年らしくバルームにお願いをした。
「あの、でも僕…お金持ってきてないです。」
「なぁに言ってるんだ。飛び級した奴には学校側が準備に掛かる費用を全部負担してくれるんだよ。ほら見ろ。」
バルームはそう言って学校の紋章の入ったカードを見せた。
それを聞いたリュークは、安心して明日が楽しみになった。
次の日、楽しみで寝られなかったのか他人の家だから寝られなかったのかリュークは目の下に薄っすらとクマが出来ていた。
街に行き、行き交う若者がバルームを見て挨拶をする。
「よし、まずは制服からだ。」
お店に入り従業員がバルームから事情を聞いてリュークの身体の採寸を測る。
そして少し大きめの制服を持ってきた。
「すぐに大きくなるからこれ位が良いと思います。」
「んじゃそれと…。」
バルームは衣服関係の注文をしてカードを出し支払いを済ませた。
次に向かったのは本屋さんで教科書からノート、辞典など学用品を揃えた。
途中、昼食を挟みあちこち買い物をする二人。
最初はぎこちなかったが、お店に入る度に仲良くなっていった。
「じゃあ、最後はあそこだな。」
そう言って入って行ったのは貴金属専門店だった。
リュークは平民には縁のないお店で何を買うのだろうと不思議がった。
「ここで作るのはネクタイピンだ。」
「ふーん。そうなんだ。」
注文を済ませた二人はお店を出た。
そして帰り道、バルームは学校でのネクタイピンの意味を教えた。
「いいか、絶対に生半可な気持ちで渡すなよ。この人と一生を遂げたいと思った相手に渡すんだ。」
リュークはバルームの迫力にしっかり頷いた。
リュークが高等部1年生の授業を受ける2日前には、街で注文した物が全て届いた。
リュークは授業を受けるのがとても楽しみになった。




