9 セシル
学期休みが始まり、殆どの生徒が自宅へ戻っていた。
セシルはマツリドとの約束通り補習を受ける。
まず、どのくらいまで理解できているかの確認テストを行った。
「私が教えた所まではほぼ完璧に覚えていますね。これなら復習はしなくても大丈夫でしょう。」
マツリドは満足そうに笑って授業を始めた。
マツリドがセシルに微笑む度にセシルはマツリドをより好きになっていく。
「マツリド先生、どうして学校だと無表情で授業を行うのですか?」
セシルは、ずっと聞きたかった事を思い切って聞いてみた。
皆、マツリド先生が無機質スパルタロボだと思っているけど実際は表情豊かな生徒思いの先生なのに勿体ないと日々思っていたセシル。
でもその反面、本当のマツリドの顔を知っているのが自分だけでありたいと思ってもいる。
「…からだ。」
「え?」
「勉強をするのに感情はいらないからだ。」
あくまでも通常授業は学校から求められている勉強をする為で有り感情は要らない、授業外授業や補習は生徒が自分自身の為にやるもので応援をしたくなるから自然と表情が出てしまうのだと言った。
「まあ…皆さん授業外授業に出なくなるんですけどね。長期に渡り授業外授業を受けたのはセシルさんだけですよ。…あ。」
マツリドはセシルが飛び級したくないと我儘を言ってから授業外授業を受けなくなった事と飛び級をしたくなかった理由を思い出し言葉に詰まった。
セシルは何も言わなかった。
補習が終わりセシルは寮へ戻りソファに座り、メイドが入れてくれた紅茶を飲んだ。
テーブルには蓋付きの硝子の入物の中に沢山の飴が入っている。
これは全てマツリドから貰った物だ。
マツリドはセシルが告白した事は忘れていないようだった。
セシルはならば告白の返事が欲しいと思ってしまう。
それから特に進展のないまま学期休みが終わろうとしていた。
前持って父に勉学に励むので学期休みは戻らないと手紙を書いていた為、帰宅を催促する手紙は来なかった。
「お疲れ様でした。明日から2学期ですね。この調子なら2学期からは補習を受けなくても大丈夫でしょう。」
最後に総復習テストを行い、その結果を見ながらマツリドはセシルに言った。
セシルはこれでマツリドと会う時間はもうなくなるんだとがっかりした。
「どうぞ。」
そう言ってマツリドは綺麗に包装された包みをセシルに渡した。
「…これは?」
「学期休み一生懸命頑張ったご褒美です。…誰にも言わないように。」
セシルはマツリドから包みを受け取ったが、感情が溢れてしまった。
「…こんな事されたら諦められなくなるじゃないですか。」
「え?」
「告白した後で返事も貰ってないのに優しくされたら期待してしまうと言っているんです!…補習ありがとうございました。さようなら!」
セシルは荷物をさっさと片付け補習室から足早に去って行った。
ガゼボによるとティーナ、ナタリーがおしゃべりをしていた。
「あらセシル、久し振りね。」
「やっほー!」
「…久し振り。」
「セシルどうしたの?元気ないね?」
セシルはガゼボの中の椅子に座り涙をポロポロと流し始めた。
「もう嫌だ…。学校辞めたい…。」
「!?セシルどうしたの?何があったの?」
セシルはマツリドに言いたくても言えない気持ちを二人にぶちまけた。
「やっぱり諦められなかったのね…。」
ナタリーがセシルの肩を優しく撫でた。
「…マツリド先生、セシルの事好きそうに見えるのは私だけかな?」
ティーナがナタリーに聞いた。
「まあ…私もセシルの話を聞いて普段のマツリド先生を思い出してみたけど、想像つかなくて何とも言えないけど…希望はありそうよね…。」
「二人とも希望を持たせるような事を言わないでよ…。」
「大丈夫!頑張ってみよ!」
二人はセシルを応援した。




