8 セシル
7月になり三者面談が行われる。
「セシルさんはお父様の跡を継ぐ予定でいる為、総合学科への進学を勧めました。もうセシルさんには伝えていますが、総合学科の進路を希望している生徒が何人かおりまして今の成績では厳しいです。ですので、学校一優秀なマツリド先生が補習をしております。万が一、進学出来なかった場合いかがいたしますか?」
リッテルがイグニシ公爵に問い掛ける。
「進学出来なかった場合、実務経験を積ませるので留年はしなくて良いです。」
「分かりました。では、これで面談を終わります。セシルさん、頑張ってくださいね。」
「はい、ありがとうございます。」
セシルは父と一緒に教室を出た。
「セシル、良い家庭教師を探そうか?」
父が口を開いたがセシルは首を振った。
「大丈夫。マツリド先生、教え方が上手だからマツリド先生に教わるわ。」
「そうか。リッテル先生にも言ったが進学が出来なかったら留年はせず実務経験を積んでもらうからな。…まあ、お前なら大丈夫だろうが。」
そう言って父とセシルは別れた。
セシルはすぐにマツリドの待つ補習室へ向かった。
「遅くなりました。」
「大丈夫です。今日は三者面談だったのでしょう?」
放課後、毎日の様に顔を合わせる二人は最初こそ気まずかったが先生と生徒らしく補習に向き合う様になった。
「7月のテストの結果はどうでしたか?」
「それが…順位表が配られていなくて何位か分からないんです。」
「…そうですか。見せて頂いた点数を見ると上位に入っているとは思うのですが安心は出来ませんから、気を引き締めて頑張りましょう。」
マツリドは微笑み補習を始める。
補習の回数が重なる程、先生と生徒の距離に戻っていったがセシルは想いを募らせていった。
急いで2年生の授業内容を理解し終わらせないといけないが決して無理はさせず1時間毎に休憩を挟み、その度にココアを入れてくれる。
補習が終わったら、お疲れ様と言って笑顔で飴をくれる。
プライベートな話は殆どしないがセシルはマツリドにもっと近付きたいと思った。
そして学期休みが始まる前日。
セシルはマツリドと一緒に居た。
「先生は今年どの様にして長期休暇を過ごすんですか?」
「セシルさんはどうするつもりですか?」
初めて質問を質問で返されたセシルは少し考えて口を開いた。
「父から帰宅する様催促が来るまでは、寮に残り先生の教えてくださった所を復習しようかと思います。」
マツリドは、ふむと頷いた。
「なら私も学校に残ります。もし良ければ復習だけでなく2年生の後半位までは進めたいのですが…都合はどうでしょうか?」
「良いんですか?…でも…せっかくの長期休暇なのに…。」
「生徒が一生懸命頑張ろうとしているのに応援しない教師などいないですよ。それに長期休暇中、特に予定もないですし。」
セシルにとってマツリドの提案はデートの誘いの様に聞こえた。
「では、お願いしてもいいですか?」
「勿論です。何時からにしますか?」
「10時から5時までお願い出来ますか?」
「私は構いませんが…あまり根詰めては身体にも脳にも良くないですよ?」
「良いんです。じゃないと先輩方に追いつけないし…。」
「…分かりました。では土日は休日としましょう。休息は必要ですからね。」
「分かりました!」
マツリドと少しでも一緒に居たいセシルはとても喜んだ。
それとともに進学テストは2学期の学期休み前に行われる為、気を引き締めた。




