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5 セシル

国王の退任式当日。

美しく着飾られたセシルは父と二人馬車に乗り王宮へ向った。

騎士である兄二人は王宮の警備の為、早朝に出て行った。


「セシル、久し振りね!」


会場に着くとナタリーが待っていた。

茶赤の髪の毛と落ち着いた赤いドレスが良く似合っていた。


「久し振り。」


二人は近況報告をし合い、会話に花を咲かせた。


「そう言えばティーナが居ないわね。」

「今日は戴冠式も有るからティーナはゼムス様と一緒に居ると思うわ。」

「考えてみればそうよね。」


暫くすると退任式が行われ、戴冠式も行われた。

そしてゼムスの公開プロポーズが終わりダンスパーティの時間となった。


「ねぇっ!見てた!?」


ナタリーが興奮気味にセシルに話し掛ける。


「見てたし聞いてたわ。」

「やるわねー!あんな馬鹿な子だったのに…やる時はやる男だったのね…。」


ハンカチを目に軽く当て涙を拭くナタリー。

セシルはお節介だけど、情に熱いナタリーが大好きだ。


「あんまり顔を拭くと化粧が落ちるわ。」

「あっ!そうよね!ちょっと鏡見てくるわ!」


ナタリーの背中を見送るとマツリドの姿が見えた。

誰かと話していたがセシルと目が合うと、話していた人物に一礼をしてセシルの元へやって来た。


「こんにちは、セシルさん。…この場ではセシル嬢と呼んだほうが良いのか…。」

「どちらでも構いません。」


マツリドは微笑んだ。


「自分の教え子が立派になる姿はいつ見ても嬉しいものですね。」

「…そうですね。」


セシルは正装姿のマツリドを直視出来ず、あまり目を合わせられなかった。


「…では、羽目を外さない様楽しんでくださいね。私はちょっと新鮮な空気を吸いにいってきます。」


マツリドはそう言ってガーデンテラスへ向かった。

久し振りに見て話したマツリドに胸が熱くなるセシルは、やっぱりマツリドが好きなんだと感じた。


「先生、ご一緒しても良いですか?…人混みに酔ってしまったみたいで…。」


マツリドは、にっこり笑いセシルをエスコートしてガーデンテラスのベンチに座った。


「…もう先生は担任する学年が決まったんですか?」

「勿論です。私はずっと1年生のAクラスしか教えていませんから次も1年生のAクラスの担任です。」

「そうですか…。もう先生の授業は受けられないんですね。」


セシルは下を見ながら言った。


「そうですね。優秀な生徒を最後まで担当出来なくなる私としても非常に残念な事ですが…。」


マツリドは優しくセシルに言った。


「何故、あの時飛び級したくないと言ったのかまだ教えては貰えませんか?…実はずっと気になっていて…。」

「…では先生、前に質問した答えを教えて下さい。教えてくださったら理由を教えます。」


セシルは前に好きな人に好意を持っている事を知ってもらうにはどうすればいいかという質問をしていて、まだマツリドから解答が返って来て居なかったのでそう言った。

もしマツリドが納得する解答を言ってくれればセシルも心の内を全て言って振られて今度こそ諦めようと決めた。


「…分かりました。以前にも言った通り、私には人間関係…特に恋愛に関しては分かりません。だからこそ、言葉に出して気持ちを打ち明けてはどうかと思うのですが…。単純過ぎでしょうか?」


セシルはマツリドらしい答えに首を振り顔を上げ真っ直ぐマツリドを見た。


「私が飛び級したくないと言ったのはマツリド先生が好きだからです。高等部は3年間しかないのに飛び級して残り1年間しかマツリド先生に会えなくなるのが嫌だったからです。」

「…生徒から好かれているとは思わなかったな…。生徒から好かれるというのは教師としてこんなに嬉しいものなのか…。」


照れながらマツリドはブツブツ言っていたが教師として好きだと言われていると勘違いしているマツリドに気が付いたセシル。


「先生?私は異性として先生が好きだと言っているの分かりますか?」

「…ん…?…イセイ…?っ!??」

「そうです。」


マツリドはセシルに見つめられどう対処して良いのか分からず、顔だけが赤くなっていった。


「セッ…セシルさんっ!?…そう言う冗談は頂けない。」


何とか冷静さを保とうとしているマツリドにセシルは、はっきりと告げた。


「冗談ではありません。私も人の心を弄ぶ冗談は嫌いです。約一年間、マツリド先生と一緒に過ごしてもっと一緒に居たいと思ってしまったんです。」

「…でも…君はルーカスと…。」

「ルーカスは友達です。」


セシルは悲しそうに笑い会場に戻ろうとした。


「あれ?セシルじゃん!あっマツリド先生も。こんにちはー!」


ルーカスがガーデンテラスにやって来たのだ。


「こんな所で何してるんですか?」

「…ああ、空気を吸いに。あまり賑やかな所は好きじゃないんでね。」

「そうなんですか。セシルは何やってんの?」

「マツリド先生を見掛けたので挨拶をしてたところ。」

「そっか!会場にお前が好きそうな食いモン有ったぞ。」

「そう。…ではマツリド先生、失礼します。」

「失礼しまーす。」


そう言ってセシルはルーカスと会場に戻って行った。


「今日のお前、めちゃくちゃ綺麗で別人みたいだな。」

「っ!?何言ってるの?お世辞を言っても何も出ないわよ。」


用意されていたテーブルに座りケーキを食べるセシルにルーカスが言った。


「別に何もいらねーよ。あっでも同じ飛び級同士、3年になっても仲良くして欲しいな。」

「言われなくても友達なんだから仲良くするわよ。」

「えっ!まじ!?俺ら友達っ!?」


物凄い喜ぶルーカスを放置して、ひたすらケーキを食べながら次から次へダンスの誘いを受けるナタリーを見続けるセシル。

結局、終始ルーカスが隣に居たのでダンスの誘いを受ける事なくパーティを終えたセシルだった。



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