2 セシル
「セシル、見たわよ〜。」
ニヤニヤしながらナタリーがセシルに近寄って来た。
「何を?」
「ルーカスとカップルカフェに行ってたでしょ〜?最近付き合い悪いと思ったら、ああいう事だったのね!」
セシルはナタリーに事の発端を話したが終始ニヤニヤしていて誤解を解くのを諦めた。
この場にアホティーナが居なくて良かったと思った。
授業が終わり印刷準備室に向うと、いつもの様にマツリドが待っていてセシルに書類を渡し作業を始めた。
「もうすぐ進級ですね。3年生になる準備は終わりましたか?」
「はい。メイドが全て準備してくれました。」
「そうですか。」
暫く沈黙が続いた。
「もう少しで準備も終わりますね。あとやる事はありますか?」
「あー…いや。大丈夫。何か有ったら頼もう。」
「分かりました。…先生、何か有りましたか?」
「えっ?」
マツリドは困った様に微笑んだ。
「いつものマツリド先生じゃないみたいでしたから。気のせいなら良いんです。」
セシルは事務作業に戻り手を動かし始める。
「君は僕の心の変化に気付くのか…。」
小さな声で呟くマツリド。
その小声をしっかり聞いたセシルはマツリドを見た。
「何かあったんですか?」
「…もうすぐ君達は進級するだろう?前に話したかもしれないが、君達は私が受け持った中で優秀な者が多くもっと君達に色々と教えたかったと思ってね。…特に君は向上心の有る生徒だったから寂しくなるなと最近思うんだ。」
「…そ…そうですか…。」
「君には僕の心の内を話してしまうな。…今の話しは他言無用でお願いしたい。」
マツリドはそう言って作業を始める。
セシルは表情が出ない様に作業を始めたが、マツリドの言葉が嬉しくて口元が緩んでしまう。
そして諦めると決めていたのにもっとマツリドに近付きたいと思った自分が居た。
本日分の作業と片付けが終わり部屋を出る二人。
「先生、質問良いですか?」
「ん?久し振りの質問だな。答えられる質問なら答えよう。」
嬉しそうに笑うマツリド。
「好きな人に好意を持っていると分かってもらうにはどうすれば良いですか?」
「…それは…難しい質問だな…。他の先生に聞いた方が良い質問だ。」
「マツリド先生の考えが聞きたいです。」
マツリドは真っ直ぐ自分を見つめるセシルと目があった。
「私は学生時代、勉学しかやって来なかったから人との接し方は分からない。まして恋愛なんて…。しかし生徒の質問に答えなければいけないな。少し時間を貰っても良いだろうか?」
「勿論です。」
セシルはマツリドには申し訳ないと思ったが、学生時代から今現在に至るまで恋愛をしていないと知り嬉しかった。




