40 ゼムスの過去
結局、宰相が折れた。
第一王子派以外の重鎮達を集め何日も会議を行った結果、国王を失脚させ反逆の可能性の有る第一王子をアイーシャ王女に嫁がせようと決まったのだ。
宰相は会議の内容を聞かせ、国王に通知する時に同席する様にアイーシャとゼムスに連絡した。
「賢い判断ですわ。」
納得のいく返事を貰えたアイーシャは満足していたが、ゼムスは気が重くなった。
宰相との約束の日、ゼムスとアイーシャは大広間に居た。
すでに家臣達は着席していて国王を待つばかりだった。
しばらくすると国王が現れ報告会が行われた。
全ての話を聞いた国王は黙っていたが口を開いた。
「…分かった。お前達の好きな様にするといい。」
重苦しい空気のまま報告会が終わり次々と家臣達が部屋から出て行った。
残されたのは国王とゼムス、アイーシャだけ。
「国王陛下、聡明なご判断お見事にございました。砂漠の国、第二王女として引き渡し終了後、ガクガアール国を親交国とお約束致しますわ。」
アイーシャは一礼をし部屋を出ていた。
「父上…。」
ゼムスは国王に話し掛けようとしたが次の言葉が見付からず黙り込んでしまった。
「…ゼムス、すまなかった。」
「っ!」
ゼムスが顔を上げると短い期間にシワを増やした国王が悲しそうに微笑んでいた。
「ワシが愚かだった…。ターシャ嬢の身辺をよく調べておけばこんな事にはならなかっただろう…。いや…跡継ぎを決めるのが早急過ぎた…。お前はアルゼルよりも優秀だと知っていたのにワシのつまらないプライドや王宮の争いを危惧したせいで宣言を撤回する事が出来なかった…。」
ゼムスは苦しい思いもしたが、派閥争い回避の為に早めに跡継ぎを決めた事は国王として間違いではないし宣言を簡単に変えることが難しい事も知っているから謝らなくても良いと言ったところ国王は涙を流し何度も謝った。
国王が何とか落ち着き、宰相を呼ぶ。
「イグニシ宰相、なるべく早く私の退任式をして欲しい。ここに立派な国王が居るのだから。」
「かしこまりました。…しかし問題が…。」
「何だ?」
宰相はゼムスに婚約者もしくは婚約者候補が今現在いない事を言い、空席のままゼムスが国王になればガクガアール国だけではなく他国の姫達が競って国際問題になりかねないと話した。
「…そうか。退任式の前にゼムスの婚約者を探さなくてはならないと言う事か。」
宰相は頷いた。
「年頃の令嬢達は学校に通っているからパーティを開くことは難しいな。ゼムス、今までパーティに参加しておっただろう。妻に迎えても良いと思う令嬢はいたか?」
「…ティーナ・ロレッタ公爵令嬢が良いです。」
手に入らないと思っていたゼムスはすぐに答えた。
「お前が世話になった領地の令嬢か…。イグニシ、その令嬢は次期王妃としてどうなのだ。」
「ティーナ・ロレッタ公爵令嬢は大変聡明な令嬢だと聞いております。…ちなみにですが我が娘セシルとナタリー・マスカゼ令嬢とも仲が良いようです。」
「何と…マスカゼ公爵令嬢とも親交が有るのか。」
「はい。」
宰相は続けて王宮の内部争いを避けるのであればティーナ・ロレッタ公爵令嬢が婚約者として相応しいと言った。
国王は頷き、すぐにロレッタ公爵を呼び寄せる様早馬を出した。
3日程経ってロレッタ公爵は王宮に到着した。
すぐに玉座に通され一連の出来事を話した。
「申し訳ございませんが、お断りします。」
貴族であれば王族との婚姻は喉から手が出る程の名誉だが、ロレッタ公爵は断った。
「国王も宰相もゼムス王子もご存知だと思いますが、我が娘にはアルゼル王子とゼムス王子からの婚約候補としての手紙が来ており返事は娘に任せております。…もっともアルゼル王子の手紙には辞退するとお返事をしたようですが…。」
「まあそんなすぐに断る事もなかろう。しばらく留まりワシの相手をしておくれ。」




