36 ゼムスの過去
ガクガアール国には双子の王子がいる。
第一王子アルゼル、第二王子ゼムス。
生まれた時から病弱だったゼムスは王宮内が無駄な派閥争いにならない様、早々に跡継ぎ争いから外された。
国王、王妃は少しでも病気が良くなるようにと様々な医者を用意したが医者から原因不明の病だと診断されるばかり。
諦め掛けた時、1人の医者が空気の澄んでいる場所で療養してはどうかと提案をした。
藁にも縋る思いでその提案を呑んだ。
とは言え前王が贅沢を嫌った為、王宮には別荘地がない。
国王は公爵達に何処かいい場所はないかと聞いた所、王族達と縁が出来ると目論んだ公爵達が我先にと場所を提供したが何処もゼムスの病が良くなる事はなかった。
最後にロレッタ公爵が提供した土地がゼムスの身体に合ったのか咳をする事が少くなった。
国王は喜びゼムスをロレッタ公爵に任せる事にした。
この時ゼムスは3歳だった。
ロレッタ公爵地に身柄を移したゼムスは咳をする頻度はぐっと下がったが2日に1度は高熱を出すのは変わらなかった。
ゼムスはこんな苦しい日々が続くなら生きていたくないと思うようになったある日。
珍しく体調が良いゼムスはロレッタ公爵屋敷内の芝生の上で本を読んでいた。
「あっ!貴方が毎日おねしょをしている人ね!」
ロレッタ公爵に連れられていた1人の少女が満面の笑みでゼムスに話し掛けてきた。
「こらっ!ティーナ!お前なんて事を言うんだっ!」
父親に怒られたティーナという少女はブスくれた。
「ゼムス王子、大変申し訳ない…。この子はティーナと言って私の娘です。どうぞ仲良くしてやってください。」
ゼムスはにっこり笑いティーナに挨拶をするとティーナは顔を赤く染め父親の足に隠れた。
その日からティーナはゼムスの部屋に行くようになった。
熱のある日は庭園から花を持って来たり、体調が良い日は一緒に外で本を読んだり。
「…毎日、本を読んでるなんてつまらないわ!かくれんぼをしましょ!」
「かくれんぼ?」
「かくれんぼ知らないの?」
そう言ってティーナはかくれんぼのルールを教えて、かくれんぼを始めた。
ティーナは外遊びを知らないゼムスにオニごっこ、色鬼、縄跳び…色々な遊びを教えてくれた。
最初こそ遊び始めると咳をしたり熱を出したりしたが4歳になる頃には咳はまだ出るが熱を出す頻度がぐっと下がった。
体調が落ち着くとその知らせを聞いた王宮が家庭教師を派遣し王族としての教育が始まった。
ゼムスと親友となったティーナも一緒に受ける事になり二人で切磋琢磨しながら勉学を始めマナーレッスン、お稽古毎に励む。
そして休日には外遊びを力一杯楽しんだ。
二人は面白い様に学習していき6歳になった時点で中等部レベルの知識を習得していた。
そんな時、街で有名な魔女がやってきた。
魔女と言っても魔法が使える訳ではなく姿格好が魔女に見える為、皆魔女と呼んでいるが蓋を開けてみれば薬剤師だった。
「まだ咳は出ますか?熱はどうですか?」
軽い診察を受けたゼムスは魔女の質問に全て答えた。
魔女は頷き、その場で持って来て居た大きな鞄を開き薬を調合し始めた。
「これは薔薇の夜露。お前さんの症状に合うように作ったお前さんだけの薬だ。毎日飲んで、無くなったらお店に買いに来なさい。」
魔女の薬を受け取り、言付け通りの薬を飲む。
しばらく薬を飲み続けていると、いつも咳をすると苦しくなり動けなくなってしまっていたが軽い症状になっている事に気付いた。
「良かったね!これで街に遊びに行けるね!」
誰よりも喜んでくれたティーナにゼムスも嬉しくなる。
王宮からの医者が来てゼムスの回復に驚愕した。
騎士を連れ街を案内するティーナ。
殆ど食べ物関連のお店だったがゼムスは楽しくて仕方なかった。
7歳になりゼムスは王宮に戻る事となった。
ロレッタ公爵夫妻は我が子の様に可愛がってくれたし、ティーナはいつも一緒に居てくれたから屋敷を去るのはとても寂しかった。
「泣かないでティーナ。僕は薬を買いにここに来なくちゃいけない。その時、必ずまた一緒に遊ぼう。」
泣くティーナにゼムスは指切りをしてロレッタ公爵地を後にした。




