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退任式当日。
朝10時からと言う事も有ってもティーナは朝5時から起きてメイド達に体中を磨き上げられ、いつもより少ない朝食を食べドレスに着替える。
鏡を見るとやはり自分が自分じゃないみたいだった。
準備が終わり一息つこうとしたが両親に急かされ王宮に向かう事になった。
王宮に到着するといつもはホールに通されるのだが今日は応接室に通された。
しばらく待っていると国王と王妃、ゼムスがやって来た。
一通りの挨拶を終えると国王が口を開いた。
「今日は知っての通りワシの退任式と共にゼムスの戴冠式でもある。今日の日を持ってワシは国王ではなくなる。その前にロレッタ公爵令嬢と話がしたかったのだ。」
国王はまず、ティーナの意見を聞かずゼムスとの婚約を強引に進めた事を謝った。
ティーナとゼムスの婚約話になる前に実は退任し後継者をゼムスにすると決まっていて新国王になるのに婚約者が居ないままでは新たな争いの火種になる可能性がある為、ティーナの父は最後の最後までティーナの意思を尊重すると言っていたが最終的に折れてもらった事を話した。
そして、ティーナには気に入らない結婚かもしれないがこれから国王になるゼムスには様々な苦難が待ち受けているだろうと話し、妃としてゼムスを支えて欲しい事をティーナに話した。
ティーナは父が最後までこの婚約に異議を唱えていたのを知ったティーナは父親の方を見た。
父親はティーナと目が合うと目を逸らした。
「国王陛下、お話してくださってありがとうございます。もう婚約は成立しておりますがゼムス王子との婚約、そして結婚謹んでお受け致します。」
ティーナは微笑んで国王を見ると国王は涙を流し何度も頷いた。
「ティーナ嬢、これから妃教育が始まりますが貴女なら大丈夫でしょう。私の娘として心から歓迎致します。」
王妃は優しくティーナを見た。
「では、退任式が始まるまで若いもの同士ゆっくりしていきなさい。我々はこの後の話があるからの。」
そう言ってティーナとゼムスを残し部屋を出て行った大人達。
「ティーナ、久しぶりだね。元気だった?」
「えぇ。」
「ティーナ、何でそっぽ向いてるの?」
「…寝違えてしまったみたいでそちらを向くと首が痛むのです。」
嘘をついたティーナ。
本当はゼムスの事を直視出来ないでいた。
応接室に入って来た瞬間、ゼムスがゼムスじゃないみたいに見えてしまったのだ。
学校に来なくなる前のゼムスより身長は高くなり顔も元々整っていたが、国王になる覚悟がそうさせるのか大人びた魅力の有る男性となっていたのだ。
「えっ大丈夫?」
ゼムスがティーナの目の前に跪き、ティーナの顔に触れ優しく首を動かす。
『ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいっ!顔が近いっ!良い匂いするっ!ゼムスって前からこうだったっけ!?』
「…だっ大丈夫ですっ!たった今治りましたっ!」
ティーナが勢い良く立ち上がったのでゼムスは尻もちをついた。
「…プ…あはははっ!ティーナどうしたの?父上の前で緊張しちゃった?」
「緊張はしていませんっ!」
ゼムスは立ち上がりティーナに手を出した。
「ちょっと付き合って欲しい所があるんだ。」
ティーナはゼムスの手を取り、とある部屋の前に案内した。
その部屋の前には兵士が二人居てゼムスを見ると一礼しドアを開けた。
部屋に入ると4人の兵士がおり、ゼムスはその兵士達を下がらせた。
「ティーナ、見て。」
そこには宝石が散りばめられた立派な王冠が鎮座していた。
「これを今日、僕が被るんだよ。そうしたら晴れてこの国の国王になる。…望んで諦めたものが手に入る…。そして僕が諦めたくても諦められなかった人がここに居る。」
ティーナはゼムスを見た。
ゼムスは、やっと目が合ったと微笑むとティーナはすぐに目を逸らした。
「…ティーナ、今日は1日ずっと僕の側に居てくれないか?」
「貴方がそう望むのなら。」
二人は部屋を出てチラホラと今日の出席者達がやってくるのを見つめた。
時間になり二人はホールと繋がっている部屋に向かうと既に国王と王妃が待っていてティーナの両親はホールに居る事を教えて貰いティーナが向かおうとするとゼムスが止めた。
「側に居るって言ったでしょ?」
「あ…そうね…。え?今から?終わってからじゃなくて!?」
「もうすぐ王妃になるのに?」
「えっ!プロポーズされてないし結婚式してないのに??」
ゼムスは、ふむと頷いた。
「分かった。じゃあ取り敢えず婚約者として側に居て。」
ティーナは渋々頷いた。
それ見ていた国王と王妃はニコニコしていた。




