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「なるほどねぇ…。」
「セシルったら案外激高型のね。」
「ティーナ…そうじゃないでしょ…。」
セシルはもう涙がポロポロと頬を伝っていた。
ナタリーはハンカチを渡しセシルの肩を優しく擦った。
「セシル、本当にマツリド先生が好きなのね。」
「そうよ…。だから先生が好きなのに好きって言えないし、少しでも近付きたくて授業外の授業だって毎日出てたのに…。少し位、好意に気付いてくれても良いと思うの…。」
「それは無理でしょー。だって勉強以外興味なさそうな先生じゃん。はっきり異性として見てます、好きですって言わないと伝わらないと思うなー。」
ティーナがケーキを食べながら言う。
「まあ…私もティーナの意見に賛成だわ…。先生の都合なんか関係なく困らせてやれば良いのよ。どんな顔をするか見ものだわ。」
ナタリーがセシルを落ち着かせながら言った。
「マツリド先生は本当はとても良い先生なの…。授業外の授業だと私の話をよく聞いてくれるし分からない所は丁寧に教えてくれるし何度聞いても怒らないのよ。」
「…ごめん、想像出来ないわ…。」
ナタリーが頭を抱えながら言うとティーナは少し考えながら言った。
「セシルが先生に特別な生徒って思われてなくてもセシルだけが先生の特別な顔を知っていれば良いんじゃない?先生は気付かないだろうけどセシルだけ見せてるんだろうし。」
「そんな事無いわ。以前授業外の授業を受けているクラスメイトがいたらしいからその子達も知っているはずよ。」
セシルは泣いた事でスッキリしたのか、いつものセシルに戻りつつあった。
「…もう良いわ…。好きになるのやめる。」
「えっ!?良いの?」
ティーナがセシルの言葉に驚いたがセシルは無表情になり頷いた。
「私は卒業後、父の決めた人と結婚するわ。」
「セシル、本当にいいの?」
「良いわ。」
ナタリーが心配そうに言ったがセシルは無表情を貫いた。
「まあセシルが決めたなら良いけど…。ティーナはあれからゼムス様とはどうなの?全然学校来ないけど。」
ナタリーは話を変えティーナに聞いた。
「何にもないよ。昨日、アイビーって葉っぱを部屋中に届けられた位。」
「…アイビー?アイビーって植物の?」
「そうよ。お陰で部屋がジャングルになったわ。何の嫌がらせよ。」
ナタリーとセシルは顔を見合わせ、少し怒ったティーナを観た。
「…なるほどねぇ…。ゼムス様がティーナにアイビーをねぇ…。」
「案外情熱的ロマンチスト。」
「え、何で?」
ティーナは二人を見て全く意味が分からなかった。
「さて、帰りましょうか。」
「そうね。」
ナタリーが帰宅自宅を始めセシルが頷く。
「ちょっと待って!?セシル、さっきの意味は何?」
「自分で調べて。さっき恋を諦めた私からは教えたくない。」
「えっ!?」
ティーナを置いてさっさと帰って行った二人。
ティーナも寮に帰ることにした。
「エナ、ゼムスからアイビーを貰ったって話をさっきナタリーとセシルにしたらセシルがゼムスの事を情熱的ロマンチストって言うのよ。どういう意味か分かりますか?」
寮に帰り夕食の支度をしているエナにティーナは聞いてエナは手を止めずに答えた。
「えぇ、存じております。」
「本当に!?…なら教えてくださる?」
「…ティーナ様、乙女心が有るのなら分かるはずでございます。」
「…乙女心がないのはお父様のせいですわ。」
エナは少し考え、手を止めてエナの部屋に行った。
それからエナはかなり古い本をティーナに渡した。
「ならば、学んでください。私の本ですがお貸し致します。」
「…花図鑑?」
「ええ。私が少女だった頃に良く読んでいた本でございます。夕食が出来るまでお読みになってお待ち下さい。」
そう言われティーナは自室に戻り図鑑を開いた。
その図鑑は花の写真といつ咲く時期なのかとどういう特徴があるのか、そして花言葉が書かれていた。
ティーナは索引でアイビーを探し、記載されている文を読んだ。
《アイビー》
時期:年中
特徴:壁や木にツルを伸ばす。育て安い。
花言葉:永遠の愛
「っっ!?え…永遠の愛ぃぃ!?はぁっ!?何で??」
ティーナは何度も自室にも飾られたアイビーを見て図鑑の写真と見比べ本当に自分が貰った物がアイビーを確かめたが何度見てもアイビーだった。
食事を済ませたティーナは後片付けをしているエナに聞いた。
「エナ、アイビーの花言葉知ってた?」
「はい、存じておりました。」
「えっ…ゼムスは知っていたのかしら…?」
「そうだと思いますが…ティーナ様まさかゼムス様からのメッセージカードご覧になっていないのですか?」
「あっ忘れてた…。」
ティーナは再び自室へ戻りメッセージカードを診た。
《ティーナへ》
僕の気持ちです。
ゼムス
たった一言だけしか書いていなかったが、ティーナはゼムスが花言葉を知っていると分かった。
そして何故セシルがゼムスの事を情熱的ロマンチストだと言っていたのかが分かった。
「…意味が分からない…。永遠の愛って…ゼムスが私の事好きみたいな意味になっちゃうじゃん…。」
ティーナは全く会えないゼムスに勘違いするような花言葉がある植物は贈ってこないようにとかなり遠回しに手紙を書いて送った。
すると5日後、今度はかすみ草が部屋いっぱいに贈らてきた。
ティーナは図鑑を見ながら意味を調べるとため息をついた。
「…永遠の愛って…アホか。」
ティーナは前回よりも少しはっきりと手紙を書いたが、また5日後に桔梗が贈らてきた。
また図鑑を見てため息をつくティーナ。
今度ははっきりと手紙を書いた。
が5日に届いたのは、あなただけを見つめるという意味のあるひまわりだった。
「エナ…ゼムスは元々頭が悪かったみたいだけど、もっと悪くなったのかしら…。手紙を送っても送っても花が届くわ。」
「ティーナ様、ゼムス様はティーナ様よりも賢い方だとそうエナは記憶しておりますが?」
「そういう頭脳的な事じゃなくて…うーん…。」
ティーナは毎回部屋中花だらけになるのが嫌だったので、何度言っても分からないみたいなので花は受け取りますが1輪とか数を減らして欲しいと手紙を書くと5日後に届いたのは1つの鉢に入ったサギソウが贈られてきた。
みんな贈られてきた花が愛を囁やく物で最初は信じられなかったが、ゼムスは自分の事が好きなのか?と疑問を抱くようになった。
「そうなんじゃない?」
飛び級テスト以降、2学期の授業についていけなかった生徒達に合わせながらの授業になり心に余裕のあるナタリーが言った。
「え、でも好かれるような事何もしてないよ。」
「幼い時はいつでも一緒だったんでしょう?」
セシル激怒事件から一切授業外授業に出るのをやめたセシルはティーナに聞いた。
「まあね。でも殆ど寝てるか勉強してるかだったよ?あ…喧嘩して鼻くそつけた事あるわ。」
「えっアンタ…王子にそんな物つけたの!?」
「そうそう。でも4歳位だったし、ゼムスも気にしてなかったし大丈夫でしょ」
「…多分心の中で10回は殺されてるわね。」
セシルが紅茶を飲みながらティーナに言った。
「取り敢えず、理由はどうあれアンタの事が好きなんでしょ。良かったじゃない。政略結婚とは言え相手に好かれてて。」
「そうね。羨ましいわ。」
「でも私はゼムスに愛を感じない…。だってずっと友達だったのに…。」
「…ティーナ、男女の友情はないわ。」
ナタリーがはっきり言い、セシルは頷いた。
ティーナはゼムスと一緒に居た時を思い出したが、馬鹿な事を一緒にしてる事しか思い浮かばなかった。
「うーん…。」
「お子ちゃまにはまだ恋愛は早いのかもねー。」
ナタリーはティーナの頭をポンポンと軽く叩いた。
「ティーナはゼムスと一緒に居て楽しい?」
「うん。楽しいよ!」
「なら、今の所それでいいんじゃないかしら?その内、ゼムス様の事をもっと知りたいとか一緒に居たいとか、何気ない仕草で胸が苦しくなったりするわ。」
セシルは紅茶を飲みクッキーを食べ、ナタリーは頷きながらケーキを口にした。
ティーナは首を傾げながら紅茶を飲んだ。




