23 アイーシャとゼムス
「お話は出来て?」
アルゼルと3曲踊ったアイーシャが戻って来たゼムスに問い掛ける。
「はい。お蔭様で。」
「なら良かったですわ。…しかし本当に良いのですね?」
「はい。父も了承した事です。あとは大臣達がどう動くのか分かりませんが…。」
いつも笑顔で居るアイーシャは目を開けてゼムスを見る。
「国王が了承しているのなら構いませわ。随分長く待ったかいがありました。」
「あまり…酷い目に合わせないで下さい…。あんな兄だけど彼女に会うまでは優しい兄だったのです。」
ゼムスはアイーシャを見る。
アイーシャはゼムスを見て微笑んだ。
「もちろんです。お約束しますわ。」
砂漠の国は名前の通りの国だ。
だが巨大なオアシスの運河のお陰で水は贅沢品だが困ることはないし、豊かな鉱山を持ち各国々に宝石から砂金まで輸出していて資源に恵まれている。
そんな大国だが何故か男が圧倒的に少ない。
元は他国と同じ男尊女卑だったが男子が生まれず時代と共に女尊男卑となり男が行っていた仕事も女が行うようになっていった。
いつしか結婚するのは貴族だけが許されるものとなり貴族でない者は子種を買うのが当たり前になる。
そうして手に入れた種が男で有れば王宮に召し上げらる可能性もある。
そうなれば一生安泰。
夢を見る女達は働き子種を買い子供を生み育てる。
一方、王族は他国の男子を婿にしたり婿の数と婿の身分がステイタスとなっていた。
王族として生まれた女児は将来女王の椅子を奪い合い、男児は政治の駒として他国に嫁がせる。
こうして砂漠の国は各国と繋がり有る国となった。
今回、アイーシャがアルゼルの婚約者候補者として来日、そして同じ学校に編入してきたのはアルゼルを婿として迎える為であった。
「…それにターシャ様もくださるのでしょう?」
「約束ですので…。」
通常第一王子でしかも将来の国王を他国に嫁がせるなんて有り得ないのだが運が良いのか悪いのか第一王子は双子で弟のゼムスの方が優秀である。
それだけならゼムスを婿入りさせれば良いだけだったが第一王子が他国の犯罪者の娘を囲っていれば話は別。
ターシャの母は砂漠の国で禁を犯していたのだ。
王宮で働いていたターシャの母は女王の婿の一人と男女の関係になりターシャをお腹の中に宿した。
これは砂漠の国では罪が重い。
ターシャの母は出産ギリギリまで過酷な状況下に置かれ、本来なら親子諸共死ぬまで牢屋に居るはずだったがターシャの父の計らいで脱国する事に成功した。
これを知った女王は自分の子供たちにターシャ親子を見付け連れ帰った者を次期女王とすると宣言したのだ。
女王の椅子を奪い合う者達は血眼になりながら探したが見つからず諦めていた。
そんな中、ひょんな事でガグガアール国の第一王子の噂を聞いたアイーシャは外務省に連絡を取り、調べる内に探していた罪人の子が第一王子の寵愛を受けている可能性が高くなりアイーシャは確認の為、留学する事を決めた。
事前にある程度の内情を話したアイーシャは、もし罪人の子本人ならばターシャの母とターシャの引き渡し、そして身分の高い王子の婿入りを承諾すれば砂漠の国の次期女王としてアイーシャが女王で居る限り親善国で居ると約束したのだ。
巨大な力を持つ国に脅迫とも取れる交渉に国王は国の利益を考え、他国の罪人の子を囲ったと理由付け第一王子を婿に出し第二王子を将来の国王とする事を内々決めた。
この事を知っているのは国王、王妃、第二王子、そして国王の信頼する家臣だけだ。
「そんな警戒なさらないで?私は約束は必ず守りますわ。」
アイーシャは何も知らないアルゼルとターシャが仲良く話しているのを見ながら独り言を言った。
「…あの顔が絶望する様は見物ね。」




