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ダンスパーティー当日。

事件は起きた。

パーティに参加する為、入場待ちをしていた時である。


「ちょっと、アイーシャ様どういうつもりなのっ!?」


ターシャが大きな声でアイーシャを非難する。

アイーシャはにっこり微笑んでアルゼルと腕を組んでいた。


「私はアルゼル王子の婚約者候補デス。ですから私がアルゼル王子にエスコートされ最初のダンスを踊りますと言っていマス。」

「私だって婚約者候補よ!私の方がずっと長くアルゼル様と一緒に居たし、アルゼル様だって私をエスコートしたいに違いないわ!…そうですよね?アルゼル様…。」


子犬の様な表情と甘えた声を出しアルゼルを見るターシャ。


「ターシャ様は本当に優秀な方なのか疑問デス。…分かりやすく説明しマス。貴女よりも私の方が身分が上デス。そして貴女よりも優秀な成績をおさめていマス。よって同じ候補者でも私の方が格が上デス。格上の私がアルゼル王子と踊るのが妥当だと思いマスガ?」


ターシャは歯を食いしばって涼しい顔をしてアルゼルと腕を組んでいるアイーシャを睨み付けた。


「ターシャ、ごめん。2回目のダンスからは君としか踊らないから我慢して欲しい。」


ターシャに惚れ込んでいるとはいえ、社交界の常識を弁えていたアルゼルは申し訳なさそうにターシャに言った。


「でもでもっ!ずっと私と一緒に居てくれるって言ってたのにぃ…」

「…ターシャ…。」


ターシャに触れようとしたアルゼルだがアイーシャが歩き始め慰める事が出来なかったアルゼル。


「始まりマス。しっかりエスコートして下サイ。」


アルゼルは途端に無表情になりエスコートを始めたがアイーシャに笑顔でいないと駄目だと散々ダメ押しされていた。

その様子を見ていたターシャは爪をかみ舌打ちをした。


「…こっわ…。ちょっとナタリー先行ってよ…。」

「嫌よっ!あっちょっとセシル!?」


ティーナとナタリーがターシャの抜かす押し付け合いをコソコソしていたがセシルは知らん顔をして一人で先に行ってしまった。


「あーもうっ!あの子は本当にマイペースなんだからっ!仕方ない。ティーナ一緒に行きましょう。」


ティーナは首を振って令嬢らしく通り過ぎた。

何とか会場に着き、パーティが始まった。

ナタリーはダンスを次から次へと誘われていたし、セシルは軽食用テーブルからあまり離れていない所で軽食を食べている。

ティーナはターシャに喧嘩を売られていた。


「あーららっ!上級貴族だというのに誰からもエスコートされていないなんてティーナ様ったら恥ずかしくないの?」

「別に恥ずかしくないわ。たかが学生のダンスパーティー位でエスコートうんぬん言っているのは貴女だけよ。」


あくまでも生徒同士の親交を図るためであり、社会に出た貴族が行うパーティではない為エスコートをしているのは王族か恋人同士だけである。


「まあ王族でエスコートする必要のあるアルゼル王子はアイーシャ様と仲良くダンスしていらっしゃるみたいね。もう1曲目が終ったのご存知?」


ターシャは怒りでプルプル震えながら持っていたジュースを掛けようとした。


「かけても良いけど、弁償してくださいね。これサマー・マザーの特注品なので。」


それを聞いたターシャは通り掛かったボーイのお盆に音を立ててグラスを置いた。


「やあ、久しぶりだね。」

「ゼムス様。」


ニコニコとティーナに話し掛ける。


「そうですわね。本日はアイーシャ様と御一緒じゃなくてよろしいのですか?」

「あ、何か怒ってる?」

「いいえ。」

「ティーナ。僕は君に会いたくて仕方なかった…。」


美しい顔がティーナを見つめる。


「…何故ですか?」


ティーナの手を取り膝を付き手の甲にキスをするゼムス。


「貴女の事が好きだからです。」

「っっ!?ゼムス様、ご冗談はよしてください。」

「冗談じゃないよ。本気さ。だから僕は君に求婚したんだ。」

「!?」


ゼムスはティーナの手を取りテラスへ連れて行った。

空は星が無数に輝いていてとてもロマンチックだった。

意中の人に告白をするのならこんな良いタイミングとロケーションはないだろう。


「ティーナ、聞いて。1年の3学期が終わる頃、王宮が大変な事になる。その時に心から僕の側にいて欲しい。」

「…え?」

「本当は婚約の話、君の返事を気長に待つつもりで居たんだ。…ごめんね。」

「ゼムス様…どういう事?」

「ごめん、今はここまでしか話せない。…もう行かなくちゃ。」


そう言ってゼムスはティーナを残しアイーシャの元へ向かった。


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