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数日後、ティーナはメイドのエナから一通の手紙を貰った。
「っっ!?えっエナ!?こっこれは…」
エナは聖母のごとく微笑んだ。
「見ての通りロウ様からでございます。」
「いや…嫌よ…。私は見ないわ…!」
手紙をエナに渡し返すとエナはすんなり受け取り心を込めて読み始めた。
《ティーナ・ロレッタ公爵令嬢様》
ご無沙汰しております。ロウ・ロレッタでございます。
大変遅くなりましたが、御入学まことにおめでとうございます。
在学中の御様子をメイド・エナが報告をしてくれます。
賢いティーナお嬢様ですので、この先私が言いたい事がお分かりになりますね。
音を立て廊下を歩くとはみっともない事はご存知ですか?
令嬢は大声で叫んではいけません。
貴女は令嬢で有る事をお忘れになったのですか?
次の学期末休みでは、このロウが令嬢とは何たるかを1から教えて差し上げますからね。
今からティーナお嬢様に会えるのを楽しみにしております。
ロウ・ロレッタ
「エナ…どういう事なの…?何故エナが私が学校に居る間の事を知っているの…?」
エナはティーナの授業中は寮に居て部屋を掃除したり買い出しに行ったりしているし、緊急時以外生徒以外学校に入れないのだ。
だからエナはティーナの振る舞いを知るはずがないのだ。
「…メイド同士のコミュニケーションのお陰でございます。」
メイドを持つ事を許されているのはAクラスの生徒のみ。
つまりAクラスの誰かがメイドに話してそれがエナの耳に入ったのだろう。
ティーナはがっくり肩を落とした。
「…今後気を付けます…」
「えぇ、是非そうして下さいませ。」
エナは微笑みティーナが寝室へ入るのを見届けた。
2学期が始まり2ヶ月が経った。
ロウの怒りの手紙以降、学校内外でも完璧な令嬢を演じるティーナは心無しかげっそりしていた。
「…アンタ大丈夫?」
いつもガゼボでランチをする3人と1人。
「もう…疲れた…。」
「2ヶ月も良く持ったと思うわ。」
ナタリーとセシルがティーナを慰める。
「僕の婚約者になれば完璧な令嬢の振りなんてしなくて良くなるよ?」
「…今凄く貴方と婚約しても良いと思ったわ。」
ゼムスは目を輝かせティーナの手を取った。
「そうさ、そうしなよ。それに僕はティーナの全てを知ってるんだよ!君を受け入れられるのは僕しか居ないよ!」
「と言うか、ゼムス王子。いつの間にか私達とご飯を食べてますよね?」
「ナタリー嬢。僕の事は気軽にゼムスと呼んでくれないか?もちろんセシル嬢もそう呼んでおくれ。」
ティーナの手を握りながらナタリーとセシルを見る。
ナタリーはドン引きしているがセシルは冷静に答えた。
「第二王子を呼び捨てにするなんて恐れ多いですわ。」
「なに、気にする事はないさ。僕たちは友達なのだから。」
『い…いつの間に私達友達になったの…?』
ナタリーは心の中でセシルに問い掛けながらセシルを見るとセシルは小さく首を振った。
反応がない二人を見てゼムスはティーナの手を離し顔を隠しながら身体を震わせた。
「…そうか…友達だと思っていたのは僕だけなんだな…。勘違いしていたんだな…。そうさ僕は勘違い王子さ…。友達も居ない孤独な王子さ…。」
「いいえっ!お友達ですわ!」
ナタリーが慌ててフォローした。
「そうですわね!お友達同士なのに他人行儀なのは良くないですわよね!私ったらゼムス様に言われるまで気付かずにごめんなさいね!」
ナタリーはセシルに肘で合図し、セシルはうんうんと首を縦に振った。
「私も気が付かず…大変申し訳ございませんでした。」
二人から友達だと言われ晴れやかな笑顔に戻るゼムス。
「…二人共ゼムスに甘いわよ。」
存在を忘れ去られたティーナがナタリーとセシルを見た。
二人にはティーナが一瞬、幽霊に見えた。
「そんな事はないわよねぇセシル?」
「そ、そうよ。ティーナのお友達は私達のお友達でもありますわ。」




