クリスマス番外編:前編 サンタに届け、私の願い
このクリスマス番外編は本編とは別物として読んでください。
クリスマス、それは特別な日。ある者は大切な家族と共に過ごし、ある者は最愛の人と一夜を過ごす。また、ある者はクリスマスなど関係ないと言うかの如く働き、ある者は1人寂しくクリスマスを過ごす。
そして、子供達にとってクリスマスとは、サンタさんが良い子の元にプレゼントを配ってくれる特別な日だというのが世間一般的な認識だ。それ故にクリスマスの時期が近づくと悪戯っ子な子供さえ親の手伝いをして善行を積み、サンタさんからプレゼントを貰えるよう努力するだろう。
そして、それはカルーア・・当時は小学校に入学したてのまだ6歳だった桜野 春香も例外ではなかった。
当時の私は他の子達と比べて暗い子だった。それも当然だろう、私の両親は入学式も参観日も運動会の日さえ仕事を優先し、お手伝いさんを代わりに行かせるのだから。
そして、小学校に入学してから最初のクリスマスが近づいてきた頃、クラスメイト達が楽しげに談笑しているのを本を読みながら聞き耳を立てていた。
「ねぇねぇ今年のクリスマス、サンタさんに何お願いした?」
「俺、最新モデルのサッカーボール!」
「私は新しい猫ちゃんが欲しいからスコティッシュフォールドの子猫をお願いしたわ!」
「僕は・・。」
この学校はまあ、世間から見ればそれなりに裕福な家庭に生まれた子が通う学校な為か、一般的な子供が欲しがる物よりもちょっとお高めな物を欲しがる子が多かった。
「ねえ!春香ちゃんはサンタさんに何お願いした!?」
「え、私?私、は・・。」
突然話を振られた私は言葉に詰まった。だって何をお願いした?って聞かれてもサンタさんにお願いなんてした事ないし、それ以前にサンタさんに欲しい物を伝える手段を知らない。
「・・その、サンタさんにお願いする仕方を、知らない、から。」
「そうなの?じゃあお願いする方法を教えてあげるね!」
それから時間は過ぎていき、放課後、皆それぞれの帰路につく。私も迎えの車に乗り自宅へと帰ってきた。
自室に入ると私は早速教えてもらったやり方でサンタさんへのお願いを書き始める。
教えてもらった方法は実にシンプルだった。サンタさん宛に自分が欲しい物を書いた手紙を身内の大人の人、主にお父さんやお母さんに渡せばその手紙をサンタさんに渡してくれると言うものだった。私の場合はお手伝いさんに渡せば良いのかな?
「できた・・!」
手紙を書き終えた私は早速お手伝いさんの元に向かい
「サンタさん宛に手紙を書いたから届けてください。」
と、お願いして自室に戻り、ちょっとだけ期待を胸に抱きながらクリスマスがくるのを楽しみにしていた。
お手伝いさんがその手紙を読み、悲しい表情をしていた事など知らずに・・。
そして、クリスマスはいつも通り何事も無く過ぎていった。・・そう、何事も無く・・だ。
私は少し期待していた分ショックが大きかった。
最初はただ私が良い子じゃなかったからだと思い、良い子になるために色々やってみた。
お手伝いさんのお仕事を手伝ってみたり、クラスメイト達とも良好な関係を築く努力をしてみた、勉強も頑張り100点とはいかなくとも高点数を何度も取った。
そして次の年のクリスマス、私はサンタさんに去年と同じお願いを書いた手紙をお手伝いさんに渡した。・・その翌年もまた同じ手紙を渡した。
だがサンタさんは私の欲しいモノをプレゼントしてはくれなかった。
一度なら私が良い子じゃなかったと思えよう、二度ならまだ足りなかったと思おう、・・だが、三度ともなれば流石に理解できる、私の欲しいモノはサンタさんには用意できないと、そもそもサンタクロースという人物は最初から存在しないのだと。
だから私は、諦めた。
【サンタさんへ
サンタさんにお願いがあります。私のお父さんとお母さんは毎日お仕事が忙しくて一緒に居られる時間がありません。だからどうか、私に、クリスマスに2人と一緒に居られる時間をプレゼントしてください。
桜野 春香】