《悪鬼夜行》その五
ストックができたので1週間は毎日投稿します。
「原爺さん、いつでも行けるぜ!」
「おう。・・出航だ!」
ブォォォォン!!!!!
原爺がそう言うと船が動き出した。・・え?うん、船だよ。舟じゃなくて船の方の船ね。勘蔵さんが言うには此処らじゃ初の蒸気エンジンを搭載した最新の船だそうだ。
今までの舟は人力なのに対してこの船はエンジンで動くって、何だろうなぁ。何だろうなぁ!!
「これで良いのかなぁ?」
「ーー?」
まあ、私が悩もうが悩まなかろうが関係なく船は進んで行く。もう開き直ってこの状況を受け入れよう。
「ところで原爺、質問いいですか?」
「何だ?応えれる事なら応えてやる。」
ふむ、それじゃあ遠慮なく。
「さっき言ってた違和感って何のことですか?」
「・・そのことか、おい勘蔵、暫く運転を頼む。」
「了解。」
原爺は勘蔵さんに運転を変わると私の方にやって来た。
「・・違和感について、だったな?」
「はい。」
「・・俺と勘蔵はな、あの港町で起こってること全部に違和感を感じてるんだ。」
「全部、ですか?」
「おう、人喰い鬼が出た事も、その鬼が鬼ヶ島に居るという話も、桃太郎が鬼ヶ島に鬼退治に行ったきり帰ってきてないって事全部だ。それに気づいてからはこの違和感を抱いたのが昨日のように思えるし、何年も前から思ってるような気がしてならねぇ。それは勘蔵もだ、そして俺達はあの鬼ヶ島にその秘密があるんじゃないかと推測した。そして勘蔵が船を造り、俺が戦える奴を探すことになった。」
「そこに鬼退治に行く私が現れた、と。」
「ああ、お前が鬼退治に行くと言った時、お前ならもしかしたら、とな。お前は見た目は小娘だが纏ってる気配が違う。歴戦の猛者を感じさせる気配だ。」
うーん、仮にも女の子に猛者はなぁ、いやテキーラの時にやってきた事を考えれば否定できないけどさ。
「原爺さん、話の途中ですまねぇけど、霧が出てきた。鬼ヶ島は近いぜ。」
「おう。・・おい、そういえばまだ名前を聞いてなかったな?」
「・・いや、あの時ちゃんと聞いてましたよね?絶対。」
「かかか!バレたか!・・んじゃあカルーアよ、これは俺が違和感を抱いてから気づいた事だ。よく覚えとけよ?」
「気づいた事?」
「港町の、俺と勘蔵を含む全員を信用するな。」
原爺の言ったその言葉の意味が何なのか、私がその事を聞こうとした時、周囲に霧が出てきた。
その霧は進む程濃くなっていき、やがて隣に居る原爺すら見えなくなっていった。私は原爺と勘蔵さんがそこに居るのか不安を抱き、そこに居るのか確認するために話しかける。
だが、私がいくら話しかけても2人から返事が返ってこない。
そんな状況でも船は進み続け、やがて霧が晴れてきた時、私は見た。
確かに先程までそこに居た、話していた、共に鬼ヶ島へ向かい違和感の正体を探るために歩み始めた2人の男性。
鬼ヶ島は霧が晴れると同時に姿を現した。目的の地である鬼ヶ島は目前であるというのに。
原爺と勘蔵さんが居た場所には、彼等が着ていた服と白い粉の山だけがあった。




