小さな野望を抱いて
「この桃のタルトも美味しい♪」
あれから暫くエレベーターが降りてくるのを待っていたが、どうやら上に登って行った直後だったらしく、なかなか降りてこなかったため私は追加で桃のタルトを注文していた。
今までは料理なんてバフがあれば良いとしか考えてなかったから、ちゃんと味わったことってなかったんだよなぁ。こんなに美味しいのならもっと味わえば良かったよ。
「ふぅ。ごちそうさまでした。」
暫くは此処を拠点に活動するのも良いかもしれない。と、考えている間にどうやらエレベーターが降りてきたようだ。それに気がついたプレイヤー達が皆移動を始めた。
エレベーターの扉が開いたため私も他のプレイヤー達と移動してエレベーターに乗る。2〜300人くらいは乗っただろうか?それでもエレベーター内はまだまだ余裕のある広さだ。
「ツギ、ハ、ニ、カイソ、ウ、ダイ、イチ、ショウギョウ、クニ、ナリ、マス。」
ドライアドの澄んだ声がエレベーター内に拡がる。私は現実で見たことはないが彼女のやってる仕事はエレベーターガールと言うらしい。
彼女の言葉と同時に扉が閉まりエレベーターが動き出す。
〜〜〜
2階層に到着した。2階層は第1商業区と言われ、主に複数の冒険者クラン、戦闘で必要になる装備やアイテムを売っている店などがメインとなる階層だ。
「さてと、採取専門って行ったことないんだよね。・・どっちだったかな?」
私が言った採取専門とは冒険者クランの事だ。何故、採取専門かと言われると、この《魔と共存の街》は《始まりの街》よりも広く、プレイヤー人口も多い。そのため混雑を避けるために複数の冒険者クランに分かれ、それぞれ違う種類の依頼を扱っているのだ。
私が今から向かう冒険者クランは先程も言ったとおり採取系の依頼を専門に扱う冒険者クラン。
他にも討伐、護衛、生産、雑用などがある。
その中でも私が採取系を選んだ訳は主に3つある。
1.この先のエリアボスが居る《恵みの森》は様々なフルーツや花を採取できる場所であること。
2.《恵みの森》にはドライアドの他に《フェアリー》や《トレント》。あと、憶えてるだろうか?私が《滅びの再誕》をクリアした時に現れたGMのアバターを。そう、あのキャ○ピーのようなアバターだ。あれに似た《キャタピラー》という魔物もいるため是非ともテイムしたい。
3.そしてあわよくばドライアド、フェアリー、トレントのレア種である《フルーツドライアド》《フラワーフェアリー》《フルーツトレント》を多めにテイムしたい。
この3種は分類的には家畜魔物とされていて、フルーツトレントは果物を実らせ、フルーツドライアドは果物のお世話を得意とし、フラワーフェアリーは花をお世話するのを得意としてる。
まあ、テイムをメインにするなら受ける依頼は採取系が良いかな?っていうだけの理由なんだけどね。
そして、今はテイムしていないが平原にいるハニービーをテイムして蜂蜜を量産できれば自作スイーツが作れるかもしれない。
「・・うん。良いかも。」
それに、思い返してみると戦闘以外の事もやろうと決めてたのに、戦闘している事の方が多い気がする。ここらで1つ、料理にチャレンジしてみるのも悪くない。
「それに、上手く作れるようになったら、お留守番してるスラミー達にも食べさせてあげれるもんね。」
私はちょっとした野望?を抱きながら採取系冒険者クランへと向かって・・。
「・・その前にどっちにあるか聞こうっと。」
・・向かって行くのだった。