『銀の死神』の現実
いきなりですがほのぼのではないです。すみませんm(_ _)m
光に包まれた後、私がいたのはGMが言っていた通りLOLのログイン空間だった。今すぐにテキーラが本当に消えたのか確認したかったが、稼働時間をリセットしたいから確認は後にすることにして私はヘッドギアの電源をOFFにして外す。
「・・・ただいま。」
私はいつもの変わらない天井にそう呟きベッドから起き上がり部屋を出る。
リビングに行くとお手伝いさんが作ってくれたお昼が用意されていた。時間を見るともう昼の1時になろうとしている。
「・・いただきます。」
私は用意されたお昼を食べ始めた。今日もお手伝いさんが作ったご飯は美味しい。
私の家は両親が2人とも大企業の社長・副社長という立場からか家にいる事が殆ど無い。それに私は多分、愛されてないと思う。運動会や参観日、憶えてる限りじゃ幼稚園のお遊戯会もお手伝いさんが来て1度も両親が来た記憶が無い。
子供ながら、いや、子供だからこそ両親に愛されてない現実に心が傷ついていく。
そんな時だ、LOLのPVを観たのは。現実にはいないファンタジーな生き物、恐ろしいモンスターに挑む人々、色鮮やかで現実にはないような美しい景色、私はそれらを観て心が惹かれた。私はそのゲームをやってみたいと思い、初めて両親に我儘を言うことにした。・・・だけど。
「ごめんね春香、お母さんお仕事があるから何か欲しい物があるならこれで買ってね?」
私の初めての我儘はその一言と1枚のカードを渡されて終わった。それでわかった。私の両親は不自由しないほどの物は与えてくれる、だけど愛情は与えてくれないのだと。
それから私はヘッドギアとLOLのソフトをネットの予約注文で自宅まで配達を頼み、当日届いたヘッドギアとソフトを持って部屋に引きこもりLOLをプレイし始める。
その日から私は学校にも行かず部屋に引きこもりひたすらにLOLで親に愛されない鬱憤を晴らすかのように戦って、戦って、戦い続ける日々を過ごし、そして、疲れ果てた。
それがLOL最強のソロプレイヤー『銀の死神』と呼ばれるテキーラの、たった12歳の桜野 春香という少女の現実である。