表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/83

21.モブ令嬢は巻き込まれる覚悟を決める

遅くなりました。

誤字脱字報告ありがとうございます。

 零れ落ちんばかりに大きく目を見開いたメリルは、先程までの“可哀想な美少女(ヒロイン)”の表情を歪める。


「何で?! 何で、アンタが生きているのよ!」


 絶叫に近い声で叫び、シュバルツの後ろに立つリージアを睨み付けた。


「シュバルツ先生、少し彼女と話させてください」


 シュバルツに断りを入れて、前へ出たリージアは鬼女の形相となったメリルと初めて戦う意思を持って対峙した。平和な学園生活のために、ブッ飛んだヒロインと関わりたくなくて彼女を避けていたが、これでもう終わりにしよう。


「貴女の身勝手で理不尽な理由で殺されるだなんて、冗談じゃないわ。貴女は何をしたかったの? マルセル様だけでは満足出来ないの?」


 言いたいことは沢山あるが、努めて冷静な口調でメリルの目的を問う。


「アンタはモブでしょう! モブが私よりモテるだなんて許せないじゃない。モブはヒロインの引き立て役なのに。私はハッピーエンドを目指しているのよ。 だから、一番の推しを狙っていたのに、アンタが邪魔をするから台無しになった! でも、これからやり直しをするのよ。最初からやり直すの!」


「メリルさん、貴女は本気で自分がこの世界のヒロインだと思っているのね」


 メリルがどのタイミングで、この世界がゲームの世界と酷似していると知ったかは知らない。マルセルやルーファウスとの交流をゲームの好感度上げと同じ感覚で行っていたとしたら、ゲーム補正が働くと思い込み自分の欲望に忠実に行動していても仕方がないのかもしれない。

 寒気がしてきて両腕を両手で擦る。

 今まで地味で大人しい女子を装い、目立たない努力をしてきた自分が馬鹿らしく思えてきた。メリルのように自分を偽らずに学生生活を送っていたら、巻き込まれなくてすんだのだろうか。

 巻き込まれなければ、ユーリウスと自分と出会わなければ、彼はゲーム通りにヒロインに惹かれ二人は結ばれていたのかもしれない。

 視線を動かしてユーリウスを見る。アレルゲン除去役のリージアと離れているせいか、顔色を悪くしているユーリウスは心配そうにやり取りを見守っていた。

 彼の隣にメリルが立っている光景を想像してみて、無理だと首を振った。


(そんなの、嫌だ)


 二人が寄りそう光景など見たくない。メリルが王妃になってしまったら国が傾き、ユーリウスは暗殺されそうだ。




「もう、いいか? これ以上はユーリウスが限界だ」


 シュバルツの声で顔を上げれば、額に汗をかき苦しそうなユーリウスと目が合う。


(タラレバを考えても、今さらだわ。早くユーリウス様の近くへ行かなきゃ)


「はい」と、頷いたリージアは後ろへ下がる。

 下がったリージアの前へ立ったシュバルツは、ジャケットの内ポケットから取り出した四つ折りにされた紙を開きメリルへ提示した。

 紙を見たメリルの顔から一気に血の気が引き、今にも倒れそうなほど青ざめていく。


「メリル・ウルスラ。リージア・マンチェスト伯爵令嬢殺害を依頼した疑いで拘束する」


 狼狽えるメリルを、暗部の者達が一斉に取り囲む。


「わ、私はこの世界のヒロインなのよ! バッドエンドなんて許されないの! だって、だって」


「話にならないな。捕らえろ」


「嫌よ!」


 距離を縮めた暗部達へ向けてメリルは右手を突き出した。


「触らないでっ!」


 バチッ! 右手から放たれた青い電撃が暗部達へ襲いかかる。

 電撃が暗部の足止めしている隙に、包囲から抜け出したメリルは生け垣の方へ身を翻した。

 後を追おうとする暗部を、シュバルツは手で制止する。



「メリル? 其処にいるのか?」


 生け垣の向こうから場違いなくらい明るい声が聞こえ、メリルは声の方へ手を伸ばす。


「マルセル様ぁ! 助けて!!」


 叫び声を聞いたマルセルが生け垣の間から顔を出し、勢い良くメリルが彼の胸へと飛び込んだ。

 暗部達と自分に抱き付くメリルを交互に見て、マルセルは目を吊り上げる。


「お前達、メリルに何を?!」


 怒りで声を震わせながら問うマルセルの胸へ、メリルは顔を埋める。労るようにメリルの肩を抱き、マルセルは彼女の頬を撫でた。

 抱き合う二人の姿は、一見すれば傷付いたメリルを労っているように見える。この場面を何処かで見たことがある気がして、リージアの心臓の鼓動が不安で速くなっていく。


 暗部が後ろへ下がり、代わりにユーリウスがマルセルの正面へ歩み出る。


「マルセル、メリル・ウルスラは重大な学則違反と犯罪行為を犯した」


「そんな筈は無い! 殿下達が有りもしない罪をでっち上げて一方的にメリルを責め立てているのでしょう!!」


「マルセル……それがお前の答えか」


 もしかしたら目が覚めるかもしれないと、解呪魔法や魔石、魅了耐性のある魔道具を使用してもマルセルは以前の彼には戻ってくれず、それでも「いつかは」と心の何処かで信じていた。

 かつては幼馴染みとして、側近候補として共に切磋琢磨してきたマルセルが、受け入れずに自分の声を聞き入れようとしない様に、ユーリウスは諦めに似た気持ちで息を吐いた。


「理由はどうであれ、殺害依頼は犯罪だ。さらに、中庭での攻撃魔法は禁止だ。学生といえども法の下で裁かれなければならない。庇い立てをしてお前も懲罰を受けたいのか? その女のために全てを捨てる覚悟があるのか?」


 迷いを振りきったユーリウスは、冷徹さすら感じさせる顔つきで淡々と告げる。


「懲罰、だと?」


 事態の大きさにマルセルは呆然と呟く。

 動揺を感じ取ったらしく、胸元へしがみついているメリルが涙で濡れた顔を上げる。


「マルセルさまぁ、助けてください」


「……これは事故だよ。事故ならば、仕方ないよね」


 コクリ、唾を飲み込んだマルセルは目蓋をきつく閉じ、ゆっくりと開いた。

 暗い光を宿した瞳を細めて、自嘲の笑みを浮かべたマルセルの周囲が歪んでいく。


「まさかっ! マルセル! 止めろ!」


 破壊のため、高位攻撃魔法を撃とうとしていると気付いたユーリウスは、対抗するための魔法詠唱を始める。口角を上げたシュバルツは、リージアを庇うように立ち暗部へ命じた。


「結界を展開しろ」


 魔法の完成を邪魔するユーリウスの魔力とマルセルの魔力が(せめ)ぎ合い、火花と空間に軋みを生じさせていく。

 吹き荒れる強風により中庭の木々が大きく揺れ、地響きが起きる。後夜祭会場のホールから聞こえていた音楽が突然止んだ。

 メリルを腕に抱いたマルセルは更に魔力を放ち、彼の体からはどす黒い霧が四方へ放出される。


(ユーリウス様が押されている! この光景は、ゲームと一緒?! この後の展開は、マルセルの魔力が暴走して学園が吹き飛び、ユーリウス様も攻撃される!)


 傍観者となっていたリージアの脳裏に、前世で見た崩壊した学園の映像が浮かぶ。

 考える前に体が動いていた。

 シュバルツの後ろから、魔力をぶつけ合うユーリウスとマルセルの間へと全力で走る。


「駄目ー!!」


 両手を広げてユーリウスの前へ躍り出たリージアを、闇色の魔力と金色の魔力が飲み込もうと襲いかかった。魔力の塊がリージアへ触れる直前、水が蒸発するように白い蒸気が立ち上ぼり輝く光の粒となって消滅していく。


(気持ち悪い!!)


 無効化のスキルでも追い付かないほどの、自分を飲み込もうとする大量の魔力の奔流に呻く。

 体をくの字に折り、倒れそうになるのを歯を食いしばって耐えた。


「リージア!!」


 悲壮感の響きが混じったユーリウスの声で、顔を上げて声のした方を見る。

 必死の形相でリージアへ近付こうとしているユーリウスを、背後からシュバルツが羽交い締めにして止めていた。


「だいじょうぶ」と言いたいのに、魔力に押し潰された喉から声は出ない。

 闇色の魔力が全て光の粒となり夜空へ消えたのを確認した直後、リージアの視界の全てが白に塗り潰された。



急ぎ更新のため、見直しは後程。

あと2~3話の予定です。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ