仲良し?三兄弟
メガ兄がすっかり慣れたある日のこと。学校が休みなので魔王城に来ていた。魔王妃の仕事があるのだ。大半はデキる夫とデキるクケンビー嬢が捌いてくれているのでそこまで大変じゃないけど。
「な〜な〜、ユアン〜」
「はいはい、な〜に〜?」
そんなわけでヤス兄とゆるゆるぐだぐだな会話をする余裕もあるわけだ。
「ウチの兄さん、ズルない??」
「……………どのへんが?」
全くもってわからん。まあ、メガ兄は驚くほどあっという間に魔王城に馴染んでたが。
最初こそかっちりした服着てたけど、今はジャージで仕事してるはず。異世界の衣装なんだと言ってます。まあ間違ってはいない。
メガ兄曰く、城で腰みのが許されるのならジャージぐらい余裕と判断したそう。まあ、確かに間違ってはいない。
魔王城、種族的な正装が腰みのだけとか半裸とか普通にある。毎日がネズミーランドのハロウィン的な感じ。ヘタをしたら全裸とかいるもんな……。こないだ人魚が人化してたけど全裸だったからカーテン巻きにしてやった。でも海の中では普通……………まあそうね。でも陸ではナニをブラブラすんなし。
魔王城の人達は、ジャージに対してむしろカッコいいと思ってるフシがある。あと、本人が堂々としているので違和感がな……くもない気がしないでもない。
「ボクは超頑張って頑張って馴染んだのに、兄さんの昔からいました感、何?!」
「あ〜〜〜……………適性?」
予想外なほどあっという間に馴染んで、昔からいましたが何か?と言わんばかりに溶け込んでいるメガ兄。
「ホント、ズルいと思わん?!」
「そもそもの原因はお前だろうが……」
「メガ兄」
「兄さん!?」
ジャージ姿のメガ兄が書類を持ってきたらしい。
「ユアン、ここに印を」
「かしこまり〜」
「読まないで捺すやつがあるか!」
「え?だってメガ兄が変な書類持ってくるわけないじゃん。急ぎなんじゃないの?けどまあ確認は大事だよね。読むから待って」
あ〜、治水工事の許可申請か。急ぎだからメガ兄が直接持ってきたわけね。そんでこのまま魔王様にも持ってくつもりだな。
「まったく……仕方のない妹だ」
「うへへ、いやでもマジで2人がいて助かるよ」
「フン……」
「そらよかったわぁ。そういや兄さん。さっきの、ボクのせいやろってどういう意味?」
「そのままだ。お前が!私のことをお前より強いとか、目から魔法を出すとか!眼鏡が本体だとかわけのわからん噂を流しおって!!」
「え、ナニソレ詳しく!」
「あ〜……酒に酔ってたんよぉ。歓迎会で軽いジョークのつもりやったんよぉ……。まさかあんなホラを真に受けるとは……」
魔族領の住人は(種族差があるものの)総じてピュアな人が多い。
「おかげで私の眼鏡を狙う馬鹿が多いこと多いこと……!まあ逆に眼鏡を狙われているとわかっていたので対処しやすかったのはあるが、同僚から曇りなき眼で『クルメガネス様って眼鏡が本体なんですよね?』と言われた私の気持ちがわかるか!?」
「ンッフ………」
「グフッ………ひ、ひゃははははは!!あーはははは!あかーん!兄さん笑わせんといてやぁ!」
「笑い事ではない!!違うといくら言っても『大丈夫、内緒にします』と優しい瞳で頷かれ、微塵も理解されなかった私の気持ちがわかるか?!ここでは配慮や空気を読むより自分のしたいようにやるほうが楽だと身をもって学んだんだ!お前は未だに猫を被っているだろう。その差が出ただけで私はズルくない!!」
「なるほど?」
メガ兄は配慮とか空気読みする必要性を感じなかったので好き勝手やることにした結果、馴染んだのか。
それもパワーアップしたメガ兄だからこそだろう。実力があるものがこの魔族領では正義なのだ。
「え〜……でもボク装うクセがついちゃってるもんなぁ……」
「まあ、いい機会なんじゃない?ヤス兄は社交的な反面気を使い過ぎなんだよ。魔族領では大雑把なぐらいが楽だよ」
「……………確かに。私たちよりユアンのほうがよほどやらかしているしな」
「んえ」
「知らんとは言わせんぞ?メイドに公開尻叩き、メイド大量解雇事件、抜け毛事件、鱗ハゲ事件、猛毒拷問事件」
「後半ハゲばっかやん。あと最後ナニ?ヤバすぎる気配しかせぇへんのやけど」
「それは樹たんと晶たんのせいだも〜ん!!」
拷問なんかはメイドさん達が殺る気になったからだもん!!
「それから、気になっていたが、その胸」
「あ〜…………」
胸元にあるのは濃くなった聖女の証。
「せやな。ナニしたん?そっちのんが重要やわ」
「……あたし、聖女になることにしたわ」
「…………は?」
「えええええええええええ!?」
「ヤス兄声デカ………」
耳がキーンてなったんだが。
「いや、考え直したほうがええで!もし聖女やって知られたら王太子妃にさせられてまうやん!!」
「………オコシャス、ユアンは考えがあるようだ。当然理由を説明してくれるな?」
「モチのロン。といってもまだ検証段階なんだけど……」
あたしの予想だと、本来魔王と聖女は2人で1セット。世界と繋がり、歪みや澱みを集める魔王。そして魔王を浄化する聖女。
ところが、何者か……聖女なのか勇者を騙るモノかはわからんが、その在り方を歪めたバカがいる。そしてそのバカは恐らく…………。
「恐らくは現在の王家、その祖先が元凶と思われます」
こんなにも資料がないことがそもそもおかしい。歴史研究家も違った見方をするものがいない。本来なら聖女アンチな歴史書とか絶対あっていいのに、見当たらないし見つけられない。
魔王は悪でなければならないと、誰かが指示したとしか思えな。資料はすべて破棄または書き換えされたのだろう。
そしてその何者かは、恐らくまだ生きている。
「それで、ユアンはどうするつもりだ?」
「ウチの魔王様を王太子にしたらいいじゃん」
「なるほど」
「うええええええ!??本気!?」
「本気本気〜」
そもそも、現時点でこっちが優勢だし!
「それで………聞いたからにはお手伝いしてくれるよね?いやあ、本当にいいお兄ちゃんたちだわぁ」
「当たり前だ」
「そうやで!お兄様に任しとき!」
2人は思ったよりやる気で、私の頭をワシャワシャしてくれた。髪はグシャグシャになったけど、なんでかすごく嬉しかった。




