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満身創痍だろうが容赦はしません

 ヤス兄とまったり食後のティータイムをしていたら、やたら顔色が悪いユーリフィアンの父が現れた。なんか、怪我が増えてないか?顎のアザはヤス兄だが、顔には引っ掻かれたような傷まである。瞳は血走っていて怖い。


「ユーリフィアン…すまなかった…」


 ユーリフィアンの父が土下座した。すまんで済んだら警察も騎士もいらんと言いたいところだが…昨日の今日で、どんな心境の変化だ?ボロボロ涙を流しながらあたしの足にすがらないでいただきたい。蹴り飛ばすわけにもいかな………容赦なくヤス兄が蹴り飛ばした。ヤス兄はあたしと同じく拳で語らう人種であった。糸目と間延びした口調に騙されてはいけない。敵にまわしたらあかんお人や!!


「ぐふっ………オコシャスが怒るのも無理はない。昨日、夢に我が妻が現れたのだ。ユーリフィアンの言う通りだった。妻は…妻はキレていた……」


 何故かな?昨夜お会いした変態鳩マスクがウインクした画像が脳裏をよぎったゾ☆

 もちつけ、私の脳よ。まだそうと決まったわけではないだろう。

※優音はソワソワしている。


「嫁の末期の望みを無視したばかりか、実の娘に八つ当り…最低だ、こんな男を選んだ自分が情けない、子供達に謝罪したいと泣き叫んだ」


 おお…ユーリフィアンママ…私の母でもあるのか?その辺りがややこしいな。こっちの母はまともではあるが、かなり気性の激しい女性だったようだ。鳥が誉めてアピールしているが、気のせいに違いない。


「いつまでもウジウジウジウジしやがって!最初こそ私の事を愛してくれてたのねと思ったけど、それで私達の娘に辛く当たるとか意味わかんない!!むしろそこは母を亡くした娘に優しくするところだろうが、このクズが!!ユーリフィアンは頑張っていただろうが!努力を見ようともせず叱るテメエがクソだ!クズ以下!排泄物以下!!お前が生まれてくるべきじゃなかったと罵られてな……」


「うわぁ…………」


 前言撤回。凄まじく気性の激しい女性だったのね。またしても鳥がウインクして私がやりましたアピールしている。わかったよ。お前の仕業なのな。よくやったよ。マジグッジョブ。


「妻に殴る蹴るの暴行を受けている時に気がついた。私は暴力こそしていないが…暴言は妻と同じぐらいお前にぶつけていた。確かに、私は間違っていた。私にはお前に償う義務がある。なんなりと言うがいい。なんでもする」


「……………」


 少しだけ考えてから口を開いた。


「あたしは、あんたに虐待されていたユーリフィアンじゃない。ユーリフィアンは現実が辛すぎてあたしに助けを求めた。あたしが応えたから今ここにいる。この身体の持ち主はあたしだけど、あんたの八つ当たりに耐えていたユーリフィアンはあたしじゃない。そのユーリフィアンは、もうここにいない。その謝罪を受けるべきは、あたしじゃない。つまり、あんたは永遠に許されない。許されるべきじゃない」


 そもそも贖罪したいなら自分で考えろよ。そう言って席を立つ。あたしは口調も態度もあからさまに素で対応しているのに、その違和感にすら気がつかないなんて、救いようがないね。


「ユーリフィアン!?」


 制止する声を無視して食堂からでた。背後からヤス兄がついてきているようだ。裏庭でようやく立ち止まる。


「どうやら路頭に迷うことはなさそうだね」


「気にするとこ、そこ!??」


 いや、おうちがないと辛いじゃないか。バイトしようにも、流石に公爵令嬢を雇うところなんてないだろう。城でバイトはしたくないし。


「うん。とりあえず出ていかなくて済むみたい。だから、今までユーリフィアンがやられていたことをまるっとそのまま返してあげようと思う」


 人の痛みを知って、己の罪を悔い改めるといいよ。無視と罵倒は辛いんだよ。とりあえず一年はネチネチやるよ。許さないよ。


「うん、ええわぁ。ボクとキミ、めっちゃ気が合いそうな気ぃするわぁ」


「あたしもそう思うわぁ」


 ヤス兄もあたしと同じ、拳で語る派閥の人間だもんな!軽く拳を合わせる。マジで気が合うよ、私達!


「ところで、ユアンはなんでずっと頭に白い鳥を乗っけてんの?」


「へ?」

「くるっぽー」


 見た目文鳥なのに鳩的な鳴き声……間違いない、鳥だ!!


「……お前、夢の中だけじゃないわけ?」


「特にこちらの世界は様々な危険があります。ユーリフィアン様の知識はありますが、優音様への負荷軽減のため無意識に記憶をセーブしているようです。なのでちゅーとりある役を神から仰せつかりました。ついでにちょいちょいっと天国の母君を連れてきて馬鹿親父の夢に出演していただきました」


「鳴き声は鳩なのに見た目文鳥やな」


 ヤス兄は現実逃避しているのか心底どうでもいい感想を述べた。しかし着眼点が似ていて、この人ってやっぱあたしの兄ちゃんなんだなと思った。


「よくやった、ポッポ。グッジョブ!!」


「ええ、母君があそこまで苛烈な方とは思いませんでしたが……結果オーライですね。優音様に色々お教えいたします。今後ともよろしくお願いいたします」


「おう」


「……この喋る鳥は精霊さんなん?」


「神の使いらしい」

「神の使い、ポッポちゃんです。精霊の上位存在だと思ってください」


「は??」


 鳥からの自己紹介に、ヤス兄は硬直するのだった。

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