忘れていたけどやっぱり無駄にトンデモだったアレ
翻訳アイテムは隠し玉として取っておくことになり、落ち着いたので当面あたしは学業優先となった。ちょっとさみしいが、とりあえずオルネース様の負担が大幅に減らされて満足。そのため空いた時間でデートの約束をした。
騎士さん達も少しずつ増員していくそうだ。あとはヤス兄が何とかするし、メガ兄が文官もつれて来るので更に負担は減るはずだ。
そんなことを考えつつ、理由をつけてオルネース様の所に行こうと思って着替えていたら違和感に気がついた。
「あれ?」
どんなに擦っても消えなかった聖女の証が薄くなっている。なんで?まあ、このまま消えるかもだし、別にいいか。
オルネース様に会うため、魔王城の廊下を歩く。もう頻繁に通う必要はないのだが、一日一回は顔が見たいんだよね。
「コッチ………デ……」
「ん?」
「コッチ二……デヨ」
なんか呼ばれているようだ。かなりしんどそうな声だったな。
「マスター、苦しそうな声でちゅ」
「マスター……あ、行くんできゅね」
「とりあえずしんどそうだから、なんとかできそうならしてやろうかなーと」
そう言いながら声の方向へ歩き始める。できるかどうかは状況を見てからだな。声は少しずつ近くなって……ん?こんな通路あったっけ?これ、ちゃんと元の場所に戻れるかなぁ?いざとなったらオルネース様に連絡すればいいか。
「お人好しできゅ……」
「流石はマスターでちゅ〜」
変な通路がやたら長い。一本道なのはありがたいのだが、とても長い。
「なんかこの通路、変じゃね?」
「今ごろ気がついたんできゅか?」
「この道は精霊の通り道でちゅ。近道でちゅ」
どうも普通の道ではなく、私を呼んでる誰かが作った道らしい。これだけ進んでも誰ともすれ違わないし、そもそも気配すら感じないから変だなとは思ってたんだよね、うん。
「これだけの道を作れるとか、ヤバいやつできゅよ。マスター、ちゃんと気をつけるっきゅ!」
「そうなのか」
「こっちにおいで」
あ、声はこっちにおいでって言ってたわけね。はいはい、行きますよー。
「素直に進むあたりがマスターできゅね……」
「オイラ達がマスターのぶんも気をつけるでちゅー!」
「そうするしかないできゅね……」
樹たんと晶たんの信用が全くない件。いや、声に悪意がないから素直に進んでるだけよ?一応気をつけてるってば、一応。
「お?」
通路が終わったようだ。
通路を抜けたら……。
「ここどこ??」
いや、マジでここどこだ。洞窟??ヒカリゴケ的なほのかな明かりしかない洞窟に、あたしはいた。通路はすでに消えている。え?いきなり強制サバイバル??
「こっちに……おいで……」
そして、声は洞窟の中央にある大きな水槽からだった。
「うわ、ナニコレ!?」
水槽の中の水はにごりきっていて、中の魚が苦しげにしている。しかし、水槽からあふれる水はきれいという不思議。
「これは……マスター!触ったら駄目できゅ!ここから逃げるできゅよ!」
なんかヤバいものらしい。見るからに汚いからあたしも触りたくはない。
「いやでも、多分あの魚があたしを呼んだわけでしょ?見捨てるのはちょっと……。あのヤバいのはなんなわけ?」
「あれは、穢れできゅ!精霊を、世界を蝕む毒できゅ!」
「よし、わかった」
とりあえずそっと鞄から持ち歩いていたブツを取り出して水槽に投げ入れた。ちゃんと蓋も外して投げた。ブツはあっという間に広がり、水槽は綺麗になった。
「「え……」」
「これにて一件落着!」
水槽の魚もなんかポカーンとしている。水が濁っててよく見えなかったけど、この魚はあれだ。ベタってやつに似てるな。さっきまですげー苦しそうだったけど、今は平気そうだ。いい事したな。よし帰ろう。あ、向こうに明らかに人工的っぽい通路があるわ。あそこから帰れるのでは………あれ?
マイダーリンがポカーンとしているような??しかし、彼はすぐこちらに駆け出してあたしを捕獲しガクガクした。
「ユアン、アンタ何したの!?何をどうやったらこうなったの!??」
「えっと、コレをポーンしました」
先程と同じブツを鞄から取り出す。魔改造されているので見た目より収納力が高い優れものである。オサレな容器に入ったブツを見せる。
「コレの中身は?」
「聖なるミントフレグランスウォーターです。爽やかなミントの香りが全てを浄化する。効果は一週間。抗菌、消臭、防カビ、防虫、浄化作用があり。全ての汚れ、穢れを消し去り、よせつけない。防虫は虫の魔物にも効果ありですって」
オルネース様が崩れ落ちた。
「ナニソレナニソレ!!なんなの、そのトンデモアイテムううううう!!」
オルネース様がのたうち回る。えええ……。薄々気がついてたけど……やっぱこれもトンデモアイテム枠?いやまあね、薄めれば普通のと同じように使えるからいいかなと思ってたんだけど。
「えっと……いっぱいあるから良ければあげますよ?量産は……ちょっと怖いのであまりしたくないけど」
あの破裂の恐怖は地味にトラウマである。あんまりやると錬金釜も破裂しそうで怖いし。
「ユアン、大事な事だからよおおおおおく話し合いましょうか」
「は、はい……」
あたしは何かやらかしたのだろうか。オルネース様の目はマジだった。




