授業は真面目に受けましょう
今日も退屈な授業……の合間のお楽しみ!剣術の授業なのであーる!残念ながら今日は模擬戦ではなく応急処置について。剣を習うならば怪我はつきもの。戦場では必ず近くに治癒魔法が使える者がいるわけではない。戦場に立つならば、必須の技能と言えよう。
異世界の知識があるとはいえ、ただの学生にすぎない。剣道の道場で脱臼の直し方と骨折時の簡易的な包帯固定の仕方ぐらいは知ってるけども、正しい知識かは微妙なところだ。
今回の授業は、止血についてがメインのようだ。下腿動脈圧迫による止血。ふむふむ。万が一がないほうが良いが、覚えていて損ということもあるまい。メモを取り、真面目に聞くことにした。
「マジで?」
「マジマジ」
「あはは」
あたしは真面目に聞こうとしているのだが、後ろがうるさい。今日は実戦じゃないからか、後列の男子生徒達は気が抜けているのか雑談している。滅してやろうかと拳を握りしめたところで、教官が雑談していたバカ共に声をかけた。
「お前ら、患者役な」
そして、話を聞いていなかったバカ共三人が寝かされる。その中にはノウルキンスもいた。両肩をしっかり押さえつけるよう指示された。教官が悪い笑顔だぁ!何をするのかな?ワクワクすっぞ!
「ここをこう!!!」
教官の膝が、ノウルキンスの鼠径部に突き刺さった。なんか、圧迫というか突き刺さったという表現が正しい気がする。ゴリュッという音とともに悲鳴をあげて悶絶するノウルキンス。ドン引きする生徒達。暴れようとしたがノウルキンスは私に両肩を抑えつけられている上に教官が全体重をかけて乗っているので、逃げることもままならない。
うむ。容赦していては血は止まらない……必要な犠牲ということだろう、多分。痛みによる気付け効果もありそうだ、多分。教官は、ノウルキンスを生贄にして、それをあたし達に教えてくださったのだ、多分!!
「はばねぅろうつうとりにだーどすこるぴおえええええ」
なんだか辛そうな悲鳴だ。ノウルキンスは呻き続ける。しかし、教官はとてつもなくいい笑顔でこう言った。
「このまま、止血帯で止血する。足で太い動脈をおさえることで、両手があく。大量出血は時間との勝負だ。遅ければ、相手が死ぬ。それだけは覚えておけ」
この止血法が必要になるのは、生きるか死ぬかの極限状態。失敗は許されない。自然と背筋が伸びた。きちんとマスターしなければならない。
長時間に及べば、足は腐るだろう。だが、命には代えられない。真剣にやらなければなるまい!
先生は止血帯で手早くノウルキンスの足を縛って見せた。おお、さすがの手際!!
「では、何人かやってみろ。最終的に全員やるからな!」
「では、わたくしが!」
「あぎゃ!?」
鼠径部の付け根部分を膝で圧迫するが、教官が首を振った。
「そこじゃねえ。こっちだ。ずれてる」
「ぎゃひぃ!??」
少し位置がずれていたらしい。むむむ、難しいな。なれてないせいか、止血帯も上手く巻けない。
「今度こそ!!」
「ひぎゃ!!」
「ご、ごめんなさい……」
「樹、縛るの得意できゅ!」
「い、樹!?それはもうなんというか、前衛芸術というか、止血ではないでしょう!?わたくし、もうホルソマッチョ様とはスッパリズッパリ縁を切りましてよ!?なので、これ以上の責め苦はよいのです!!樹!おやめなさーーーい!!」
お茶目な樹の出現により、ノウルキンス=ホルソマッチョ前衛芸術のオブジェ化事件が勃発したが、なんとか解除に成功した。明日のおやつはナッツクッキーだ(おやつで釣ったから)
「し、死ぬかと思った……」
ホルソマッチョはとんでもない姿勢で縛られていたが、怪我はない。どこかを痛めた様子もない。体が柔軟なんだな。
「チッ……しぶといやつできゅ……樹のマスターをいじめるやつは、樹に縛られて地獄に落ちたらいいっきゅ」
「物理的かつ積極的にやるのはおやめなさい。わたくし、仕返しは自分でいたしますわ。ええ、やる時は……きちんと事前準備が必要でしてよ」
「きゅっきゅっきゅ……マスターも悪よのうできゅ」
「ほほほほほほほ」
もう、おしゃべりをする男子はいない。皆が緊張した面持ちで授業に臨んだ。これ以降、剣術の授業での私語はなくなったのであった。
追伸……何故か、さらに男子達からビビられてしまい、模擬戦闘は王太子かホルソマッチョしか相手になってくれないんだが……解せぬぅ……。
友達からネタを提供されたので書いてみました!
さて、何を提供されたでしょーか!
とりあえず、優音さんは自業自得というか……樹が怖いのもあるけど技量的に王太子かホルソマッチョしか相手にならないのです。
そこに気がついていない優音さんなのでした。




