最後の夜
あっという間の一週間だった。すっごく働いたなって感じ。明日からまた学校だなんて、嘘みたい。
「……絶対絶対絶対、また来てね」
「はい」
「絶対絶対絶対絶対、絶対だからね!」
「はい」
オルネース様はボロボロ泣きながら、何度も念押しをした。
「学校を卒業しましたら、ここに住みますわ。卒業してすぐに結婚いたしましょう。ね、約束」
オルネース様の髪に、あたしの宝物をさす。
「……………櫛?」
「わたくしの……あたしの宝物!あたしの世界から持ってきた貴重品だから、次来たときに返してね。人質ならぬ、物質!」
オルネース様が頷いた。堪えるような様子で、何度も頷いてくれた。
「今からこれでは、先が思いやられるのう」
「ああ。先が思いやられるな」
モクレン達は平気そうだな。それはそれで、ちょっと寂しい。なんだか、二人とはずっと昔からいたような気がするから、不思議だ。
明日から学校なのだが、オルネース様が送ってくれるとのことなので、明日の朝まで居ることになった。本当はこのまま居たいが……当面は学校が休みの日に行くしかないな。また週末には来るのに、盛大なパーティがひらかれた。
いや、あたし週末には来るよ!?気まずいんだけど!?
オルネース様の部下さん達はまた地獄の書類仕事かと白目をむいていた。
週末できるだけお手伝いするとして、もう少し人員を確保しないとなー。慢性的な人手不足はいなめない。考えておこう。
メイドさん達はすっかりあたしに忠誠を誓ってしまっており、最後の別れかってぐらい泣かれた。いや、毎週できるだけ来るよ。
あまり戦闘力のない獣人さん達も、最後の別れかってぐらいに泣かれた。いや……だからまた数日後に来るって。
竜人達は大号泣だった。どうにもできなかったので、晶パパドラゴンに宥めさせた。相変わらずドラゴンは樹にビビっていた。樹たんはあたしに害がなきゃ、暴れたりしないよ。
とりあえず、基本的に魔族って人の話を聞きゃしない種族だなと感じるパーティだった。
パーティが終わり、あたしはオルネース様と背徳の宴を開催していた。二次会って奴だな!
「これは…………なに?」
「コーラ」
コーラって、見た目のインパクトがスゴいかもな。机に並ぶのは、コーラ、ポテチなどのスナック菓子や、チョコ菓子。夜中に食べるとか、背徳感!カップ麺もあるよ!ハイカロリー!
「甲羅?」
「詳しいレシピは知らないけど、コカの実だっけか?を使った飲み物。慣れると癖になるよ。この辺りは、ちょっとずつ友達に頼んで持ち込んだ異世界のお菓子と食品」
そう、この日のために少しずつ貯めていた異世界の食品達!特にカップ麺、驚くんじゃないかな?わくわくしてしまう。
「カラカラに乾燥しているわね。このまま食べるの?」
「カップ麺はお湯で戻して食べるんだ。保存食としても使われてるよ」
「そうなのね……」
「美容には悪いけど、今日は特別ってことで」
オルネース様が興味津々なので、まずはカップ麺から。ユーリの趣味なのか、可愛らしいボケモンヌードルにお湯を注ぐ。かまぼこがペカチュウの形になっている。パッケージもピンクベースで可愛い。あたしだったら絶対に選ばないやつだな。
「醤油とシーフード、どっちがいい?」
「お任せするわ」
あたしは醤油が好きなので、シーフードをオルネース様にあげた。
「優音のは真っ黒ね。アタシのは……魚介かしら……美味しそうな匂い……」
クンクンとカップ麺の匂いをかぐオルネース様……可愛い。
「出来上がりは三分待たないといけないので、ポテチどうぞ」
「パリパリ!美味しいわ!」
「これはこちらでも簡単に作れますよ」
オルネース様といると、時間があっという間だ。気がつけば、三分計の砂時計の砂が落ちきっていた。
「あ、できましたね。食べましょう、のびると美味しくないですよ」
「え?これ、どうやるの!?」
はしを使い、ラーメンをすすってみせた。
「ふは、こんな感じで食べるんです。スープは飲む人もいますが、塩分が高いのであまりおすすめしません」
「わ、わかったわ。あっつ!ふー、ふー……んん!ほいひい!!」
すするのは難しいらしく、少しずつ食べるのがなんだか可愛い。
「オルネース様」
「んん?」
この一週間で、だいぶうちとけたと思う。こんなに無防備な表情を見せてくれるようになった。
「あたし、魔族領のために何ができるか考えてくる。残りはもう一年ないけど……絶対無駄にしないよ」
もう魔王妃になることは決めた。学校に行くのは卒業資格のためだけではなく、この魔族領のために学ぶのだと思えば、無駄にはならない。むしろ、やることが山積みだ。
「そんな風に言われたら、行くなとワガママが言えないじゃないか。優音……待っているよ。卒業したら、結婚してくれ。私も君に相応しい男になれるよう、努力する」
「は……はひ……」
オルネース様……真顔で男言葉は禁止したい!これがギャップモエってヤツだな!?友人が親指を立てているのが頭に浮かんだ。
ちょっぴりワガママ言われてみたいと思ったのは、ナイショだ。そんな感じで、あたしの休暇は終わったのだった。
実は作者も今回がゴールデンウィーク的な休暇だって設定を忘れていたなんて言えません(笑)
間が空きすぎるとだめですね!気をつけます!




