似た者同士だったようです
可愛い鼠のメイドさんからお茶を受け取りつつ、紅茶を飲む。お気に入りの銘柄を持ってきたので、いつも通りおいしい。ちなみにあたしは、オルネース様の膝に座っている。
溺愛アピールの一環なのだそうだ。新婚さんは大概こんなもんらしい。なので、あたしは暇があればオルネース様の膝の上にいる。重たくないか聞くと、そんなに軟弱ではないとのこと。確かに、足が痺れたような様子もないから大丈夫なのだろう。見た目こそ華奢だが、大きな狐さんでもあるのだし、見かけによらないというやつだな。
「優音、これどう思う?」
「これでしたら……」
そして、仲良く執務をしている。王妃教育が役立ち、普通にお手伝いできるのが嬉しい。あたしが本当の魔王妃になったら、条約を色々見直さないとだなー。オルネース様の縁故で、かなり向こうに有利な条約ばかりなんだもの。
「お妃様のおかげで休憩がまともに取れますよー!」
エルセオルネさんが嬉しそうに笑った。古参だという執務補佐官のバルトラさんも頷く。
「なにせ、普段は公務に嫌気がさした若を捕獲するところからが仕事でしたからなぁ……。さすがの若も新妻に良い所を見せたいのでしょうな。妃殿下、このままよろしくお願いいたします」
「フン!無駄に仕事が多すぎるからよ!」
確かに仕事量が異常なので、うまく振り分けられるようにしなければならない。そこら辺も考えておかなきゃなー。考えている間に休憩時間となった。
雑談のついでに聞いてみたら、自称妃の中には大物もいるらしい。この国でも種族によるランクのようなものがあるそうで、あたしがぶちのめしたバカ達は下っ端妃なんだそうだ。蛙は中級らしいけど。
ちなみに高位種族とは、ドラゴン族、魔人族、幻獣族なのだとか。幻獣族はいくつか種類があるものの、子供が生まれにくいため妃は二人だけなんだそうだ。モフモフ系だが、当然まだ後宮にいるらしい。
「そういえば、修理依頼が来ていたから拒否したわ」
後宮は取り壊すので修理の必要はない、と拒否したそうだ。
「そうなんですか?」
「ええ、だからきっと怒鳴り込みにくるでしょうね」
オルネース様は楽しげに笑った。まあ、来たら返り討ちコースだな。楽しみー!
「失礼します。妃殿下にお手紙でございます」
それは、今噂していた妃達からの招待状だった。時間は……今日の午後か。
「陛下、早速ご招待をいただきましたわ」
「期待してるわよ。でも、無茶はしないでね。何かあったら即連絡よ!安全第一!命大事に!」
「はーい!」
オルネース様との幸せ新婚生活のためにも、頑張るよ!心配したオルネース様からアミュレットをたくさんいただいた。後で効果ををまとめておくとしよう。
「…………ふむ」
午後、予定通りに指定された場所に行くと美女が二人並んで待っていた。片方は白いモフモフつり目の美女……白狐の幻獣人で名前はモクレン様。もう片方はモフモフタレ目の美女………銀狼の幻獣人で名前はシルビア様。
「ようこそ、人族の姫君。わらわは白狐族のモクレンじゃ」
モクレン様は表面上フレンドリーにふるまった。挨拶をしないシルビア様にも目線でナニかを合図している。
「…………ヨウコソ」
目をそらしながらも、なんとかシルビア様も挨拶をしてきた。
「はじめまして。わたくしはユーリフィアン=ヒール。残念ながら姫ではなく、人の国の最高位貴族、公爵の娘でございます」
「ふむ………つまり、わらわ達と同じ立場じゃの」
「いえ、魔王妃候補でもありますから、正確には違いますわ」
「そうじゃったな。ユーリフィアン姫は、本気で、人族の娘でありながら魔王妃になるつもりか?」
どこかあたしの内面を見透かしているような瞳を真っ直ぐ見つめながら頷いた。
「ええ。わたくしは魔王妃になって、オルネース様を公私ともにお支えするつもりですわ。そもそも魔族領では多種多様な種族がおります。人族だなんて些事ですわ」
そうでしょう?とモクレン様に笑いかけた。何故かモクレン様とシルビア様は固まっている。
「くふ………くふ………あっはっは!!些事!確かにな!些事……些事よな!ユーリフィアン姫は面白いな、気に入った!!」
「ありがとうございます?」
あ、姫じゃないですと言いそびれた。シルビア様は……なんで剣を準備しているのかなー?
「俺と、戦え!」
「…………はい?」
まあ、やれと言われれば………売られた喧嘩は買うけど、唐突だな!あ、このドレスはオルネース様がくれたお気に入りだから汚したくないな。着替え、待ってくれるかな?
「戦え!お前、モクレンと同じ……いや、それ以上だ!」
「…………お相手をしてさしあげてもよろしいですが、服を着替えさせてくださいまし。このドレスはオルネース様からいただいたものですので」
そんなわけで、ジャージを装備した。それから、脛当と手甲もつける。正直なところ、あたしはケンカが好きだった。ゴチャゴチャ考えるよりも殴り合うほうが楽だったから。強いやつと戦える喜びを……あたしも知っている。
「では、わらわが審判じゃ。先に降参するか、戦闘不能になったものの敗北とする!では、はじめ!!」
瞬時に脛当のエフェクト、加速を起動した。長剣が相手では、どうしても射程の長さで不利になる。だから、勝敗を決めるのは距離。いかにして距離を詰めるかが鍵となる。
「ぐっ!?」
エフェクトに加え、ジャージによる身体強化と魔法による身体強化を施した結果、瞬時にあたしはシルビア様の頭を……いや、咄嗟に左腕でガードした!歓喜が体を支配する。そうだ、もっと続けたい。さらに蹴りを繰り出そうとした所で、シルビア様が剣をおさめた。
「………まいった」
「は?」
「…………折れた。見かけによらず、すごい力だな。あんなに威力がある蹴りは初めてだ。この腕では、万に一つもお前相手では勝てない。俺の負けだ」
負けと言いながら、シルビア様はとても嬉しそうに笑った。正直なところ不完全燃焼だが、仕方ない。あたしもそれを受け入れた。
あれ?これ、妃同士の………戦ってるけどコレジャナイ感が半端ないですわー。




