控えめに言ってもドン引きです
今回、気持ち悪いシーンがありますので、食事中の方は読むのをおすすめしません。
樹たんモフ獣人スフィンクス化により、モフ獣人は皆あたしを恐れるようになった。わざとじゃないんだ……!と言いたいが、今後を考えると誤解させとくぐらいでいいので、仕方なく放置している。
とりあえず、今は自称妃の排除を優先だ。たった一日でモフ獣人の自称妃を追い出したのだ。かなり上出来と言えよう。
あれだけド派手にやらかしたので自称妃が大人しくなってしまうのでは………と思ったけど、杞憂だった。今、目の前で嫌がらせされてるからねー。
今度は、父親同伴で仕掛けてきやがりましたよ。隣でオルネース様が顔をひきつらせております。大丈夫だよ、オルネース様。敵か否か判定してから締めるから。
現状を説明しよう。オルネース様と蛙魔族からお茶会に招かれた。今回は正規の手順で招かれ、席もちゃんとある。問題は、テーブルの上で存在感を主張するモノだ。
おびただしい虫料理が、並んでいた。
多分蛙魔族に悪気はない。本当に虫料理が好きらしく、パクパク食べている。あたし自身は日本でもイナゴの佃煮とかハチノコとかがあったから、食べなきゃ生きていけないなら食べれなくもない感じだ。可愛らしい女子達みたいに見ただけでキャーキャー言ったりはしない。
「ごちそうでちゅー!」
「食べていいよ、晶」
「わーいでちゅー!」
晶にはごちそうであるらしく、食べてもらうことにした。しかし、ここでにこやかにしていた蛙魔族のおじ様が怒りだした。
「妃殿下は、私の提供した食事が獣の餌だとおっしゃりたいのですか?」
言葉は穏やかだが、かなりお怒りだ。だが、仕方ないと思うのだ。あたしは素直に話すことにした。確か、名前は……。
「トードス様はわたくしを亡き者にしたいのですか?」
うん、トードスって言うんだよね。蛙なのにトド……いや、蛙だからトード?
「ゲコッ!?なぜそうなるのです!私は善意で最高級の虫料理を提供した!だが貴女は食べず、料理をペットに与えている!自分の非礼を棚にあげて、何を言うか!」
「だって、こちらとそちらを人族が食べたら、死んでしまいますわ」
「……………………………ゲコッ?」
間の抜けた顔が可愛いな。本当に善意で虫料理を提供したわけね。知らなかったようだから、丁寧に解説してあげることにした。
「こちらは人族にとって猛毒の『ズウズウシイオバチャン』神経毒があるので、大体これ一匹の毒で十人は死にますわ。こっちは『ソトヅラガイイヤツノナイメン』こちらを人族が摂取すると内臓が溶解し、苦しみ悶えて死にます」
「し、しかし我々は………」
「貴殿方の種族には毒に対して種族的に強力な耐性があるそうですわ。だから食べられますのよ」
「……………………」
ちなみに、これらを瞬時に見分けたのはうちの有能なメイドさん達。元暗殺者でもあった彼女達は、毒に対して異常に詳しかった。
トードス様はうなだれてなにも言わない。本当に知らなかったようだ。
「貴殿に害意がないのは解りましたが……知りながら止めなかった方達が居るようですわね?」
チラリと意味ありげにトードス様の娘とニヤニヤしていたメイドを見る。すでにその背後にはうちの有能なメイドさん達が待機している。無理矢理も楽しそうだが、あたしにはこんなときに役立つスキルがある。
パチンと指を鳴らすと、有能なメイドさんが料理を持ってきた。
「こんなこともあろうかと、ご用意いたしました。ハラグロガエルの姿焼きと、毒虫のケーキですわ。それから、トードス様」
「ゲコッ!?はははははい!?」
ハラグロガエルのインパクトに固まっていたトードス様が再起動した。あわあわしていて可愛らしい気がする。にっこりと笑いかけた。
「わたくし達人族は、基本的に虫を食べる文化がありませんの。よほど貧しいわけでなければ、食べませんのよ。虫は、特に女性から忌避されております。貴殿方にこういったモノをすすめるのとほぼ同じ感覚なのです」
「げ、ゲコォ!??」
しかも、このハラグロガエルの毒は、強力な毒耐性を持つ蛙魔族にも効果がある。言わないけどね。あたしは『知らなかった』から罪にならないよね?
「ああ、貴殿を責めてはおりませんわ。貴殿は知らなかったようですもの。これから知ってくださればよいのです。ただし、知っていて……悪意をもってわたくしに害をなそうとした方を、無罪放免にはできませんわ。しっかり見せしめになっていただきませんとね」
すでにうちのできるメイドさん達が害をなそうとした二人を確保している。蛙魔族の娘と魔人族のメイドだ。無理矢理食べさせるのも楽しそうだが………せっかくスキルがあるから実験したいな。
『スイーツ』の発動条件は、相手をあたしの瞳にうつしてスイーツと唱えること。声に出さなくてもいい。
スイーツ、と唱える。姿焼きとケーキを見せつけるように蜜を垂らしながら。
「「!??」」
スイーツを発動すると、対象の二人は明らかに驚いたようだった。
「い、イヤあ………!?」
「食べたくない………!!」
意思とは裏腹に、二人は蜜まみれの料理に釘付けだ。しかし、手を伸ばそうとはしない。まだ足りない?それとも、魔族だから効きにくいのか?
スイーツ、スイーツ、スイーツ………と数回連呼して………あたしは後悔することになってしまった。
「あまいの、たべたぁい……」
「あまいのぉぉ………」
スイーツは重ねがけしすぎると、甘味中毒になるらしい。よだれをたらし、目もイってしまわれている。正直、怖い。マジでドン引きである。
「でしたら、きちんとお話してくださる?でないと甘いものはあげませんわ」
しかし、頑張る!あたしは今、そう………女王様!悪役女王様を演じるのだ!スイーツの威力は本当に凄かった。あたしを暗殺する計画をベラベラ喋り出す娘達。その瞳は蜜まみれの料理達に釘付けのままだ。スゲーけど、あんまり使いたくないなぁ………。
計画の全容を喋らせ、皿を地面に置いた。
「貴女達は罪人ですもの。獣のように這いつくばってお食べなさい」
許した途端に床に置かれたことなど気にもとめず、二人は奪い合うように毒入り料理を食べた………ところでスイーツ解除!!
ものすごい悲鳴が響いたのは言うまでもない。スイーツは、ハズレスキルではなく恐ろしいスキルであると実証してしまった。なんちゅースキル寄越すんだよ!しかもこれ、相手が格上でも使えるんだろ?こっわ!!
自分でやっといてスイーツにドン引きする優音なのでした。




