売られた喧嘩は買い漁ります
先制パンチ効果か、翌日すぐに自称妃のお茶会に招かれた。当然あたしは参加すると伝えた。
まあ、敵陣に乗り込むから予想はしていた。クスクス笑うクソ女達。気の弱いご令嬢は辛かっただろうな。お茶会に呼んどいて『席がないわ、ごめんなさーい』ときたもんだ。気のない謝罪をした女が主催者だな。豚………いや、オークかな?名乗りもしないとは、敵ながら天晴れだ。
「せい」
とりあえず、手袋を主催者の顔面に叩きつけた。鼻血出た。ダサーイ。
「な、何をしますの!?」
「え?だって自分でわたくしを呼んでおいて席がないなんて……わたくしと戦いたいのかなと思いまして」
「………………………は??」
「ですから、人間の流儀にのっとり手袋を投げましたの。ちなみに手袋を相手にぶつける意味は『決闘しろ!』ですわ」
いや、こっちのやり方は知らなかったからさあ?仕方ないじゃない。魔族の礼儀作法は独特すぎてね……種族間で違いすぎるから、流石に全部覚えるのは無理だったよ。まあ、手袋を顔面に叩きつけるのは人間マナーではないがな。イラついたから仕方ないじゃなーい。
「………………へ?」
「貴女からの挑戦状は受け取りましたわ!さあ、存分に戦いましょう!!」
「いやいやいやいや!おかしいでしょう!?」
「わざわざほぼ内定した魔王妃候補を招待したのに案内も席も無いことがですか?」
「ぐっ!?ち、違いますわ!何故貴女と私が決闘しなければなりませんの!?」
え?今さら??
「だって、わたくしを招待したくせに席すら用意していないだなんて……斬首ものですわ。なんて無能なのかしら。でも、いきなり処刑は可哀想だから、頑張って足掻いたら命ぐらいは助けて差し上げようかしらと思いましたの」
「……………は?」
ここでようやく、彼女達は気がついたらしい。
こいつ、ヤベエ………ということに。
色々考えたんだけど、最初からアクセル全開で行くことにした。意味不明な存在に怯むのは、魔族も人間も変わらない。相手も失礼なんだから、知らない事を逆手にとって、あたしも好き放題しちゃうもんねー。
「わ、ワタシ……気分が……」
「ワタクシも……」
あたしのヤバさに気がついたらしいが、もう遅い。お前らも同罪だっつーの。
「貴女達……わたくしのお友達にも同じことをなさったとか……」
身体強化で瞬時に移動し、唯一の出口であるドアの前に立つ。逃がさないよ?どんな嫌がらせを誰にされたかはバッチリリサーチして覚えといたからね。
「いつ、どのご令嬢がどんな嫌がらせをなさったか……私の日記にきちんと記録済みにございます」
うちのメイドに調教されたリーダー格の侍女はマメなタイプで、きっちりしていた。減刑する代わりに、嫌がらせを全て証言するよう話している。
「さらに、この日記とわたくしのお友達から聞いた話がピッタリ符合するのよねえ。我が国との国際問題に発展してしまうわ。魔王様と対策を話さなければなりませんわ。さらに、何らかの罰を家に与えなくてはなりませんわね」
「家は関係ないでしょう!?」
立ち上がったオーク娘に一本背負いをかましてあげた。うーん、よく飛んだわ。
「愚かね。魔王妃候補の娘達がたまたま大人しかったから訴えなかっただけですわ。貴女方の行為は、一歩間違えば魔族と人間との潰し合いに発展しかねなかったのです。その程度の教育もできなかった家に問題がありますの!当然、それをせずに送り出した家の責任でしてよ!!最低でも降格……悪くて処刑ね」
「あ、あんたになんの権限があるって言うのよ!」
指を鳴らすと、侍女が書類を見せつけた。そこには、魔王様からの署名捺印がある。
『ユーリフィアン=ヒールを魔王妃候補とし、魔王妃としての権限を与える』
「改めまして……お初にお目にかかりますわ。わたくしはユーリフィアン=ヒール。ヒール公爵令嬢……王に次ぐ権力を持つ家の娘にして、魔王妃候補ですわ!!」
あ、あれ?襲いかかってくるかと思いきや、令嬢達は固まってしまった。人間と違い、頭の回転がいまいちなのかな??
「そして、樹のマスターできゅ!」
あ、まずい!!
「に、逃げなさい!!」
咄嗟に逃がそうとしたが、遅かった。
「きゃああああああ!?」
「イヤアアアアアア!!」
「毛……ワタシの自慢の毛皮があああああ!!」
樹たんが、ご令嬢達を無毛にしてしまった。大人しくしててねって言ったのに……。
「きゅーっきゅっきゅっきゅ!樹のマスターをいじめるやつは、みーんな丸ハゲにしてやるっきゅ!」
「えっと……オイラも……」
「しなくていいから!」
ご令嬢達は、それはもうあたしがドン引きするぐらいにスゴかった。もう、靴を舐めろと言われたら『喜んで』って舐め回さんばかりにガチ謝罪をしてきたのだ。
後に知ったが、魔族のモフモフ系種族にとって人間の髪より毛皮は大事なもの。美醜=毛皮なんだそうだ。報告したらエルセオルネさんからエグいとドン引きされた。あたしが指示したんじゃないやい。
噂が噂を呼び、尾ひれ背びれが付きまくった結果、モフモフ系種族は謝罪文を残して後宮から去った。
あたしに逆らうと、無毛にされるらしいよ……微妙に間違ってないのが切ないね!でも、一日でモフモフ系種族の自称妃達を追い出せたから、つかみはオッケーかな?どんどんやるぞー!
あ、もちろんやらかしたモフモフ系種族の自称妃 達のお家には慰謝料請求して降格処分してあげた!いい見せしめになったよね!




