やられたら百倍返しが基本です
ヒーロイ嬢の事件から一週間が経過した。今はゴールデンウィーク的な連休前。聖誕祭と言われる一週間のお休みで、神様に感謝を捧げつつ、各地で盛大なお祭りが開催される予定だ。皆どこに行くとか話し、楽しげな空気に包まれている。
「ユーリフィアンはどこに行くんだ?」
あたしの予定はすでに決まっている。黙って微笑み、返事をしなかった。言うと面倒なことになりそうだしねぇ。
馬車に揺られること五時間。馬車酔いもなく、快適な旅だ。学校以外で領地の外になんか出ないから、色々なものが珍しい。しかし、公爵令嬢のバカンスって大変なんだな。衣装にメイドに護衛に……あと何を積んだから馬車五台も使うの?引っ越し?大規模夜逃げ?荷物は馬がかわいそうだからと容量がおかしいポーチにしまっておいたのだが、体裁があるからと空の馬車がついてきている。あたししか使えないから、セキュリティもバッチリだよ。
魔族領との境に来たら、オルネース様が出迎えてくれた。
「待っていたわよ!」
うあ、ピョンピョン跳ねてる。無駄に可愛い。ちょっと、だいぶ、かなりキュンとした。
「わたくしも、楽しみにしておりましたわ」
「荷物が多いわね。長旅で疲れたでしょう?お茶を用意するから、先に部屋へ案内するわ」
魔族領を通ってお城へ。黒を基調にしており、内装がホラーっぽかったが綺麗に掃除されていた。
案内された部屋は、実家の自室そっくりだった。しかもオルネース様の隣室らしい。いいのかな?まぁ、嫁予定だからいいのかも。
「荷物が片付いたらお茶会をしましょう。待ってるわ」
ウキウキした様子のオルネース様が可愛い。美人で可愛いとか最強じゃないだらうか。やられっぱなしは嫌なので、あたしも反撃する事にした。
「楽しみにしておりますわ、ダーリン」
騎士の所作で手の甲にキスをした。ん?手がモフモフ……?オルネース様は狐の頭に変わり、手足も毛がフサフサでモフモフになった。よく見たら、手のひらに肉球もある。ぷにぷに~。
「ととととにきゃきゅまってりゅわ!!」
オルネース様はすごい速さで走り去った。台詞をめっちゃ噛んでいた。素晴らしく可愛い。
「さ、片付けましょうか」
とは言うものの、公爵令嬢なあたしは片付けに参加させてもらえない。荷物をポーチから出すだけだ。それでもクソ重たい荷物を持たなくて済んだと感謝された。
ところで、さっきから部屋付きだとかいうメイドが嫌な感じなんだけど。テキパキ働くうちのメイド達を手伝おうともしない。ニヤニヤしているし、悪意を感じる。
ベッドに腰かけようとしたら、晶に止められた。ふむふむ。ふーん、そういうことね。その挑戦、受けた!
「このベッドメイクをなさったのは、どなたかしら?」
「私ですわ」
なかなかに体格がいい……オークらしきメイド。文句を言えるもんなら言ってみろという態度だ。
「そう、ならここで寝てみてくださいな」
身体強化に加速。併用して、瞬時にオークメイドをベッドへぶん投げた。
「痛い!」
ベッドに仕込まれた針が刺さったのだろう。知っていて、わざと勢いよく落としたからねぇ。
「あら、痛いんですの?でも、お客様が寝るベッドですのよ?痛いわけがないわ。クッションがきいていますもの。ほら、ほぉら」
わざとオークメイドをベッドに押し付け、さらに刺さるようにしてやった。
「やめて!痛い!痛いってばああ!!」
泣き叫ぶのでやめてやった。根性がないなあ。いやあ、晶がベッドに仕込まれた針に気がついてくれて良かった。
「あら?血がついていますわ。あら!こんな所に針が沢山!まあ、大変!貴女がベッドメイクをしたのですわよね?わたくし、これでも公爵令嬢……人族の貴族の中で最高位なのですが………これは魔族領の宣戦布告なのかしら?それとも、彼女の独断なのかしら?」
不思議だわ、と首をかしげる。しでかしたことのまずさにようやく気がついたのだろう。すでに私のメイド達が馬鹿なメイドを捕縛している。悪いな。私は今までのご令嬢とはひと味もふた味も違うぞ。
「不敬罪で斬り捨てますか?」
私の護衛兼メイドであるアサが怒りを隠しもせずに告げる。
「は!?」
魔族領ではこの程度の嫌がらせで殺したりはしないのだろう。まあ、あたしも血が見たいわけじゃないから同意しないけどさ。慌てたのは針を仕込んだオークメイドだ。いや、他もかなり慌てているな。一人だけ動揺を隠している奴がいるが……そいつが主犯格だろう。
「いいえ。どうせだから見せしめになっていただきましょう。わたくしにイタズラをしたらどうなるか……身をもって示すのです」
生きた縄で捕縛し、身体強化してオークメイドを担ぎ上げた。泣きわめこうが、無視である。人通りが多い階段の踊り場で、あたしはオークメイドを降ろして自分の膝に乗せ、正座した。そう、よく母ちゃん勘弁してと泣き叫ぶ自称ガキ大将なミラクルスーパー音痴様が母にされる体罰………尻叩きをやってみせたのである。流石に下着は脱がさなかったが、ぱんつは丸見えだ。身体強化しているのであたしの手は痛くないが、相手のダメージは甚大である。しばらくは椅子に座れないだろうな。
「痛い、痛い!やめて、やめてください!」
「あらあら。貴女、わたくしにお願いできるような立場なんですの?貴女は生贄。わたくしに危害を加えた者がどんなに惨めで屈辱的な目に遭わされるのか、皆に教える役目なのですわ。ほら、ごらんなさい」
そこでようやく気がついたのだろう。あたし達が大勢の魔族に見られていたということに。慌てて逃げようとするが、できるはずもない。
「う、うわああああああああああん!!やめて、いや、いやあああああ!!」
「おーほほほほほ!!まだまだ許しませんわよお!!」
そもそも、奴らは罪もない令嬢達をいじめていたんだから、許さん!こいつらのせいで魔族領の評判が悪いと言っても過言ではないのだ。その性根を物理で叩き直してくれるわあああ!!
「ちょ、姫さん!?何してるの!?」
騒ぎを聞きつけたのか、エルセオルネ様が来た。
「躾をしております」
「しつけ」
あたしのメイド達がエルセオルネ様に事情を話した。あたしはまだ尻叩きで忙しいからね。百は叩くよ。事情を聞いたエルセオルネ様は、虚ろな瞳で呟いた。
「頼もしすぎるぜ、姫さん……」
そして、踊り場にあたしの高笑いが響いた。いじめっ子なんて、あたしが片っ端からいじめ倒してくれるわあああああ!!あたし、意外に悪役王妃様向いてるかも……と思ったのはナイショだ。
ようやっと書く予定だった幻の第一話にたどりつきましたwww




