意外な真相
しばらくダンスを楽しんでいたら、なんと王妃様がオルネース様をダンスに誘った。これは恐らく『魔族領は王家と友好関係だ』というアピールも兼ねているに違いない。
「わたくしはお待ちしておりますね」
「絶対誰かに声をかけられてもついて行かないでくださいね。絶対ですよ。約束ですよ。必ずですからね」
オルネース様は必死だ。あたし、そんなに信用がないのか?
「ええ。お約束いたしました」
まあ、悪い気はしない。あたしを疑っているというよりは、さっきみたいな輩を心配しているんだとわかるし。
「あらあら」
王妃様がニヤニヤしている。あたしはそれに気がつかないふりをして、壁の花になろうとした。しかし、王太子とヒロインに絡まれた……というか、巻き込まれた。
「殿下、私と踊ってください!」
ヒーロイ嬢が王太子にアタックするのが見えた。普通は男性が女性を誘うもの。明らかなルール違反だ。しかし、それが下位~中位貴族の令嬢達に火をつけてしまった。
「殿下、私と踊ってください!」
「殿下、いえいえ私と!」
「殿下、お願いします!」
「殿下、いい匂いですね!」
最後にナニか変なのが居たような気がするが、王太子は令嬢に囲まれてしまった。他人事なので見るともなしに眺めていた。あ、ヒーロイ嬢が突き飛ばされてカツラが飛んだ。これ、どっかで見たことがあるな……なんだったっけか。
「殿下は私と踊るのよ!」
「いいえ、私よ!」
「私が殿下と踊るのよ!」
「最初に声をかけたのは私よ!!」
「殿下をクンカクンカする権利は譲らない!」
やっぱりナニか変なのが居たような。あ、あれだ。
OBATYAAAAAAAAAAN☆
ウインクするおばちゃんの映像が脳裏に浮かんだ。バーゲンセールのおばちゃん軍団みたいだなあ。巻き込まれたくないので距離をとったら、バーゲンセール品……じゃなかった、ちょっと服が乱れた王太子が出てきた。涙目ざまぁ。
王太子と目があった。嫌な予感がした。逃げようとしたがハイヒールだし公爵令嬢ユーリフィアンは裸足で逃亡したりしないだろうから、逃げられなかった。無理矢理肩を抱かれる。
「私はユーリフィアン以外とは踊らない!」
ナニを言っちゃっているのかな?あたしを巻き込むんじゃねーよ。冷たく王太子を睨みつけ、手を叩き落とした。罵詈雑言を浴びせてやりたいが、それではヒール公爵家にも影響があるかもしれない。
「わたくしは、もう殿下の婚約者ではありません。何度もユーリフィアンと呼ばないでいただきたいと申し上げたはずです。それに、わたくしが殿下のお兄様の婚約者候補なのだと理解されていますよね?それなのに、軽率すぎではありませんこと?誰とも踊らない事が誠意だと?わたくし、殿下に微塵も未練はございません。好きになさいませ」
「ユーリフィアン!」
「ヒール嬢、ですわ。きちんとけじめをつけてくださいませ」
すがる王太子に違和感を覚えた。お前、ヒーロイ嬢が好きだったんじゃないの?なんであたしにすがるわけ??
「女々しいっきゅ」
でかくなった樹たんと晶たんが王太子からあたしを庇ってくれた。
「何故精霊が増えているんだ!?」
「な………なりゆきで………」
そう。なりゆきで、なのだ。しかし、あたしと同じ身長のモフモフ………ありだな。サイズが自由に変更できるのなら、樹か晶の腹布団で昼寝とかしてみたい。
「細かいことはいいのできゅ」
「細かくはないだろう!?」
「マスターはボンクラ王太子がマスターにかまう理由が知りたいっきゅ。樹は知ってるから教えてあげるっきゅ」
ボンクラ……やめて、樹たん!地味に笑いの爆弾をポイしないで!
「ボンクラ王太子は、そこの丸ハゲ女の呪いで魅了されていたっきゅ」
「は?」
「呪いといっても、ごく微弱なものっきゅ。好かれやすくなるぐらいのささやかなものっきゅ。だから、樹はもっと強い呪いで上書きしたっきゅ。さらにボンクラ達は呪い耐性のスキルをもらったみたいっきゅ。だから丸ハゲ女に興味がなくなったんできゅよ」
樹が丸ハゲ女……自分でハゲさせといて地味に酷い………いや、それより呪い!?王族相手にヤバすぎない!?ヒーロイ嬢は真っ青になって首を横に振っていた。
「し、知らない!わた、私は知らない!そんなのできない!ねえ、そうでしょ!?オル様はちゃんと、私が好きだったんでしょ!?」
「正確には丸ハゲ女じゃなく、そこの鳥が原因できゅが……」
「ピーちゃん!?なんでそんなことしたの!?私はそんなの、望んでない!」
「…………………本当に?」
樹がヒーロイ嬢を睨みつけると、ヒーロイ嬢は怯えて震えた。あたし……ユーリフィアンの時と同じ。誰も助けない。
「本当に、望まなかったできゅか?仲良くなりたい、好かれたい。オマエの精霊に、言わなかったできゅか?」
「ただの独り言だもん!別にいいじゃない!」
そこは否定しないらしい。予測にすぎないが、ヒーロイ嬢の願いを精霊が叶えようとした結果、彼らに呪いをかけたようだ。
「………つまり、私は……私達は操られていた?」
呆然とする王太子。大概貴族は呪いに抗う魔具をつけているが、あれは悪意あるものに反応する仕様だ。悪意なき魔法に反応していたら使えないからね。恐らく弱い魔法であり、仲良くなりたいや誰かのためという悪意なきものだったから、阻害されなかったのだろう。
「私のせいじゃない!なんで私が悪役令嬢みたいに断罪されなきゃいけないの!?」
その叫びと共に黒い男がヒーロイ嬢の元に現れ、彼女を拐っていった。そうか。あの女もあたしと同じ世界から来たのかもしれない。消えた男に見覚えがあったが、そもそもざっくりしかゲームをしていないので覚えていなかった。
当然、夜会は中止。ヒーロイ家は捕縛されたが、ヒーロイ嬢だけは見つからなかった。




