ご挨拶は大事です
晶が仲間になったのはいいが、きっと精霊のお仲間が心配しているに違いない。
「きっと晶の仲間の精霊達が心配していますよね。地上に戻りますか?」
「ここからだと、多分ダンジョンマスターを倒した方が早いぞ」
「………そうですか」
「ま、まさか……」
「せっかくですから踏破しましょうか」
「や、やっぱりぃぃぃ!?」
いや、だってホルソマッチョが進んだ方が早いよって言うからさあ。別にあたしはどっちでもいーよ。
「大丈夫、全部凍らせますわ」
「効かなかったら?」
「蹴ります」
「俺も斬るから大丈夫だ!」
魔法が効かないなら、蹴ればいいんだよ。魔法がダメなら物理だよ。得意技は力押しだよ。バカの考え休むに似たりだよ。バカなら力押しなんだよ。考えるより即行動!!
「…………わかりました」
なんだかんだでモルヤシスが諦めたんで、最下層にたどり着いた。
「じゃ、開けるぞ」
重たそうな、明らかなボス部屋の扉をノウルキンスが開いた。ダンジョンマスターは、ゴーレムだった。
「………えー」
てっきり、ドラゴンとかかと思ってた。ここまで倒してきたやつより倍ぐらい大きいだけのゴーレム。あ、材質は岩じゃなく金属だね。しかし正直、面白みもないよなー。
「よくぞここまで来たナ…………」
来たナの辺りで凍らせてしまった。いや、先手必勝だよね。急いでるから長ったらしい前口上聞いてる暇ないし。今まではそこで終了だったが、どデカゴーレムは氷を割って中から出てきた。おお、やるじゃな~い。
「キサマ、ヒトの話は最後まで聞ケ……」
高温の炎で熱する。あっつい。周囲の気温まで上がった。赤く熱された金属のボディは正しく触るな危険だね。
「ふはははははは、その程度!効かぬわああああああア!」
これで終わりなんて誰が言ったよ。冷たい水で一気に冷却し、ひび割れができたのでヒビめがけて種をばらまく。
「樹!」
「よーやく出番ゲッツできゅうううう!!」
「OH……………」
樹たんのやる気がマシマシだった結果、ダンジョンマスターは立派な木になった。あっれ~?あたしが撒いたのはモヤシ的な植物の種だったんですが??ヒビは木の根っこで広げられ、もはやバラバラになっている。
「うわ~、僕ら出番なし………。ユーリフィアン様は何をしたんですか?炎は効かなかったはずなのに、水をかけただけでヒビだらけになりましたよね」
「熱疲労というものですわ。特に金属に有効なんですの。急激に熱し、冷やした金属は脆くなる。例外はございますが………今回はそれを狙いましたの」
「…………それも、向こうの知識、ですか?」
「聞きかじりでしたが、上手くいって良かったですわ」
モルヤシスは何かブツブツ言っていたが、まだダンジョンマスターを倒してはいないようなので放置した。
「これがダンジョンコア?」
「やめロ!やめてくれえええエ!!」
割れた胴体から転がる、光輝く球体。そこから声がする。
「割ればよろしいの?」
「ダメです!」
「やめてくれえええエ!!」
いや、冗談だよ。ダンジョンが壊れたり爆発したら嫌だし。
「ダンジョンコアを壊したら、ダンジョンが崩壊します!!」
「ああ、やはりそうですの」
しかし、どうしたものか。しくしくメソメソ泣いているんですが、ダンジョンマスターが。倒しにくいんだけど。
「ダンジョンコアは普通、外に持ち去り別の場所にダンジョンを作ったり、コアを使った大規模な魔術回路……大半は兵器ですね……に流用したりします」
「……別の場所に?」
「はい。別の場所に移転させれば、最初は弱い魔物しか出ないダンジョンになりますから。ダンジョンは年数と共に広がって、深くなり、強力になります。だから定期的に弱体化させる必要があるわけです。ここはまだ、あと十年は移転対象にならないでしょう。そうすればそれこそ莫大な金額が手に入りますよ」
どうしますか?とモルヤシスが問いかける。あたしが倒したからか、決定権はあたしにあるらしい。
「んん……ねえ、ダンジョンマスターさん」
「なんでしょうカ!」
「お願い、聞いてくださらない?」
結局、あたし達はダンジョンコアを持ち出さなかった。対価として求めたのは、知識だ。ダンジョンマスターが言うには、ダンジョンはそもそも大地のマナ……魔力と密接な繋がりがあり、万象を識るそうだ。対価はその知識。いつでもダンジョンマスター部屋へ行ける鍵をそれぞれもらった。
「良かったんですか?僕としてはすごく嬉しいですが、コアを売れば、すごいお金になりますよ?」
「だって、ここは冒険者さん達の稼ぎ場ですし……無くなったら宿屋や宝石職人……この一帯の住人まで路頭に迷いますわよ?」
「あ」
「そうだな」
だから、そもそもダンジョンコアをどうこうする気は最初から無かったのだ。
「ユーリフィアン様って……実はかなり頭がいいですよね」
「そう、でしょうか」
ユーリフィアンは秀才だったが…………あたしは………どうだろ?バカだと思うけどな。ユーリフィアンの知識があるから、人並みじゃないかな?うん、そうだね。人並みに違いない!
「人並みだと思いますわ」
「いや、絶対頭いいですよ!目先のことにとらわれず、先読みできるじゃないですか!」
「………普通、できませんの?わたくし、一応王妃教育を受けておりましたから、できて当たり前なのですが」
「そうでした!基本的な能力が高いんですよ!」
あたしが頭いいかはどーでもいいので、晶の仲間にこのまま会いに行くことになった。そして、もめた。
さて、ここで問題です。何故もめたのでしょーか。とりあえずノーヒント。正解は次回です。




