ヒロインに絡まれた。
男装はかなり好評で、女子が皆誉めてくれた。さらに、追加効果があった。
「ユーリフィアン嬢、いい茶葉が手に入ったのです。王族であってもなかなか入手できない一級品ですよ。一緒にどうですか?」
「すまないな。私は私より男前な男性にしか興味がないんだ」
相手が固まった。名前……なんだっけ?申し訳ないが、興味がない。望まないモテ期って嬉しくないんだな。男装した私よりもいい男なんて、そうそう居ない。ユーリフィアンは美少女。男装すれば凛々しさが増す。当然だね。
「そうですわ!身のほど知らずですわ!」
「そうですわ!ユーリフィアン様の方が数百倍、いえ数千倍か素敵でしてよ!」
そう、追加効果とは、女子達が言い寄ろうとする男子を蹴散らしてくれるのである。実は対応に困っていたので超助かる。悪意がない人に冷たくするのも心が痛いし、勘違い貴族の対応は面倒だからありがたい。
「ユーリフィアン様、あちらに行きましょう」
「ユーリフィアン様、向こうを見てはいけませんわ」
「………?」
女子達が何かを隠そうとしている。ああ、ヒーロイ嬢か。彼女は貴族女子全員から無視されているようだ。まあ、他人をはめようとするような女子とは、誰も仲良くしたくないよね。
「ヒール様!」
「ユーリフィアン様、行きましょう」
「いや、呼ばれているし」
無視したら無視したで面倒なんじゃないかな?無視されたって騒ぐ気がする。
「酷いです!私を無視するように指示をするだなんて!!」
ヒーロイ嬢の言葉を聞いて、あたしを引っぱっていた女子達が行動を停止した。これはまずいのではないかなぁ?
「いいかげんになさい、ヒーロイ嬢!貴女はどこまでユーリフィアン様を貶めようとするのですか!?」
「わたくし達だって、貴女に仕返ししたいですわ!でもユーリフィアン様は貴族の子女として恥じぬよう振る舞いなさいとおっしゃいました!この程度で済んでいるのは、間違いなくユーリフィアン様のおかげです!それを………この、恩知らず!最低!」
口々にヒーロイ嬢を罵る令嬢達。真っ青になって震えるヒーロイ嬢。これはちょっとまずいかもしれない。
「何をしている!」
王太子と取り巻きが来た。言い過ぎた自覚があるのか、女子達の顔色が悪くなる。まあ、言い過ぎてないけどね。概ね事実だよ。しかも彼女、王太子達が来たらニヤッて笑ったよ。懲りてないよ。さて、先手必勝だな。
「ヒーロイ嬢から身に覚えのない誹謗中傷を受けたので、彼女達がわたくしに代わって叱ってくれていました」
「は?」
まさかの被害者はあたし。実際に思い返してみよう。被害者は、あたしなのだよ。自分が悪いのに被害者ヅラすんな。
「婚約者を奪ったばかりか、彼女を無視するよう指示しただなんて……酷いですわ……」
実際、あたし何もやってないしー。むしろやり過ぎないよう取り巻きに釘を刺しておいたぐらいだしー。
「わたくし、皆様に『貴族の子女として恥じぬよう振る舞いなさい』と言いはしましたわ。それなのに、無視するよう指示した?事実無根ですわね。大体無償で指導していた相手の婚約者を略奪したあげく、ろくに謝罪もせず、よくもまあ、わたくしの目前に来られたものですわね。皆様はわたくしと彼女がかち合わないようにしようとしたのに、それすらも台無しにしましたわ」
女子達全員が頷いた。そもそも、なんで被害者ヅラしてるわけ?悪いのは全部ヒーロイ嬢でしょ?完全に身から出た錆で女子から無視されてるのに、意味わからないわぁ。
「それから、悪いのは貴殿方もでしてよ」
王太子と取り巻きの騎士、魔法使いを指さした。
「貴殿方がキチンと婚約者との関係も清算せず、自分だけを選ばせることもできなかった。その結果が、今ですわ。あげく、人に濡れ衣を着せて失敗したのに、また同じあやまちを繰り返す!愚かにも程がありましてよ!」
「そうですわ!流石はユーリフィアン様!!」
「ユーリフィアン様、素敵!!」
「一生お供しますわ!!」
女子達はあたしを守ろうとしてくれたんだもの。あたしが守るのは当然だね!
「仕方がないだろう!大体、婚約破棄しようとすればお前がごねるに決まっている!だからあの場で破棄したのだ!そもそもお前に繋ぎ止めるだけの魅力が無かったせいもあるだろうが!なんだその格好は!みっともない!!」
「ふっ」
いかんいかん。変なこと言うから笑っちゃった。ユーリフィアン、本当に男を見る目がなかったね。こんなのと結婚しなくて良かったね。
「何がおかしい!」
「いえ。そもそも殿下とわたくしの関係は冷めておりました。政略に魅力は不要……とまでは申しませんが、魅力は寵姫にあればよろしい。わたくしとの婚約の意味もわからぬ男と結婚せずに済んでよかったですわ。ありがとうございますね。みっともない殿下」
「みっともないのはお前だ!私のどこがみっともないと!?」
あたしの格好がみっともないなら、お前もみっともないんだよ。同じ制服じゃないか。そう言おうとしたら、可愛い声がした。
「全部できゅ」
樹さん、我慢してくれていたけど、ついに出てきた。あまりのイライラに、我慢できなくなった模様。地味に辛辣、ワロタ。
「大事な毛なし、無駄毛ぶわっさ~男の分際で偉そうに樹のマスターに話しかけんなっきゅ!」
「ぐふっ!」
やべ、ぶわっさ~がツボだった。やめて、樹さん!笑っちゃうから!
「き、貴様は………」
「マスターをいじめるバカは、ボクに呪われるがいいっきゅ!」
またしても巨大モフモフと化した樹が王太子にドロップキックをかました。
「キャアアアアアアアアア!?」
「うわあああああああああ!?」
「イヤダアアアアアアア!!」
ヒロインを含めた三人が丸ハゲになった。王太子には頭頂にやたら長い毛が一本だけ生えた。
「い、樹……」
「悪は滅びたっきゅ」
とりあえず、面倒なので泣き叫ぶヒロインは放置した。ドン引きするかと思いきや、女子達は清々しい表情でスッとしましたわ。流石はユーリフィアン様ですわと言っていた。
丸ハゲをやったのはうちの樹さんであたしじゃないからね。そこは全力で強調しておいた。気に入らないやつを丸ハゲにしたいわけじゃないんだ。
すると、女子達は樹をめっちゃ褒め称えた。女子達を本気で怒らせてはいけない……と思った瞬間だった。女子、怖い!!




