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始まりはファーストざまぁから

 次に瞳を開くと、何故かあたしはユーリフィアンになっているとわかった。一気に彼女の記憶が流れ込んでくる。あたしには言わなかったが、予想以上に彼女は戦っていたらしい。ずっと、ここで泣きながらも頑張っていたんだね。


「何を呆けている!?ユーリフィアン=ヒール!!私は貴様との婚約を解消する!!」

「喜んで」


「…………………は?」


 あたしの不安は見事に的中してしまったようだ。友人の小田郡(オタク)にしつこく勧められたゲーム。ユーリフィアンはそこの悪役令嬢だった。いや、詳細は省くが、二度もざまぁされちゃう悪役令嬢だったのだ。この場面は恐らく、馬鹿王太子による初回ざまぁだな。

 さらにこの後ユーリフィアンは魔王妃になり、またこいつらにざまぁされるのだ。最悪、殺されるルートもある。


 よくある…のかは知らんが、庶民よりの男爵令嬢なヒロインに聖女の託宣が下り、エリートだらけの魔法学園に入学。最初は学園のストーリーパート。後半は聖女として学園パートで恋人になった相手を連れて魔王討伐をするのだ。確か王太子は私らより一学年上だから、シナリオが早いんだよね。王太子だけ一年早く卒業式で婚約破棄をするんだが、それが今というわけだ。


 唯一の救いは、ユーリフィアンがシナリオ通りにヒロインをいじめなかったことだね。あたしもなんとか回避させようと思って『イジメかっこ悪い!』とユーリフィアンに囁きまくったのだが、効果があったらしい。よかった!そもそもユーリフィアンは私と関わったせいか、性格がゲームとはまったく違うから言わなくてもいじめなかったかもしれないがな!


 さて、いつまで皆様は固まっているんだい?…帰っていいのかな?まあ、帰宅したらしたで大変だろうけども。


「い、今……なんと?」


「ですから、喜んでと申しました。流石に愛想が尽きましたの。とてつもなく苦労するとは思いますが、せいぜい頑張ってくださいませね。とりあえず、わたくしは頑張って全力で殿下に仕返しいたしますから!」


 ユーリフィアンを裏切って傷つけたんだもの!やったるどー!むしろ私はこのためにここに来たのではないだろうか!


「は!?どういうことだ!??」


「わたくし、殿下がおっしゃるようなイジメはしておりません」


 彼女の記憶が教えてくれる。語るべき言葉も、ふるまいも。しかし、ユーリフィアンはどこに行ったのか。今は考えない。ユーリフィアンの敵は叩き潰すのみ!!


「わたくしは、教師に依頼されて彼女の面倒を見ておりましたの。呼ばれもしない茶会にずうずうしく割り込んだり、いくら学園で表向き身分は平等をうたっているとはいえ、格上に敬語を使わない……苦情に対応して頭を下げて、それでも改善しない馬鹿娘に多少キレるのも仕方ないと思いませんこと?」


「そうですわ!」

「殿下、酷いですわ!」

「悪いのはヒーロイ男爵令嬢ですのに!!」


 ヒロインの名前、そんなんだったね。ユーリフィアンもよほど嫌っていたらしく、名前を呼ばなかったみたいだから記憶がな………いや、もしかしたら忘れたのかもしんない。変なとこ天然だからなぁ。

 女子生徒達がユーリフィアンを擁護してくれた……というよりは彼女達の我慢も限界なのだろう。なにせ学園の優良物件をのきなみかっさらったのだから。しかも一人に定めず独り占め。そりゃあ反感も買うだろうよ。


「わたくし、ヒーロイ嬢に言いましたのよ?婚約者がいるいないに関わらず見目がよい殿方にすり寄るのはやめなさいと。何度も何度も。婚約者の方から苦情も来ました。何故、わたくしが怒りながらも対応したのだと思いますか?」


「「……………」」


 なんか、王太子もヒロインも馬鹿なの?わりと答えは簡単じゃない??


「わたくしはいずれ王太子殿下の正妃になるからです。妾妃としてふさわしいふるまいを身につけていただこうと思っていましたの」


「ジュリアを愚弄するな!彼女は私の正妃にするのだ」


「お好きにどうぞ。ですが、そもそも殿下は王太子でいられますかしら?」


 この王太子、勉強はできるが真面目すぎて為政者としてはイマイチだ。


「どういう、意味だ?」


「そもそも、婚約破棄をしたいなら殿下がわたくしに打診すべきですわよね?こんな大勢の前で恥をかかされる必要はありませんわ」


「ぐっ」


「わたくしと殿下の結婚は政略です。臣下といえど、蔑ろにすべきではございません。殿下は、身勝手なふるまいで我が家に泥を塗りました。その結果…殿下は我が家という後ろ楯をなくします」


「!??」


 あれあれ?真っ青だよ??パンピーなあたしでも解ることが解らないってヤバくね??


「さらに、よりにもよって他者の婚約者とまで親密にしている下位貴族を正妃にすると世迷言を述べております。別の方を推す貴族が増えそうですよね。例えば…弟君とか。当然当家は弟君を推しますよ」


「や、やめてくれ!」


 やめるわけないじゃん、ばぁぁか!私は平然と王太子を無視した。


「さらに、彼女の正妃教育。妾妃教育をしたわたくしをはめようとするような馬鹿娘に、教えたい奇特な方を見つけられたらよいですわね。ああ、でも殿下が王太子でなければ……いえ、王太子であったとしても難しいでしょうね。聖女様とはいえ、彼女は男爵令嬢ですもの。まあ、頑張ってくださいまし」


「ひ、酷いです!私、ヒール様をはめようとなんてしてません!!」


「無意識ならさらに悪いわ。嘘泣きはおやめなさい。みっともなくてよ」


 見た目は清純派だけど、中身は違うな。かなーり性格が悪いよなぁ。女子に嫌われるタイプだ。


「それでは皆様、ごきげんよう。わたくしという後ろ楯を無くした貴殿方がどうなるか……新学期を楽しみにしていますわ」


 堂々と講堂を出ていき、ダッシュする。時間との勝負だ!とりあえず、弁護士雇って違約金ぶんどろう!王太子の予算から分割で払わせよう!最悪家を出されても、それで食っていけるはずだ!!

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