101?匹?精霊さん大行進
「きゃああああああああああ!」
「いやああああああああああ!」
「うわああああああああああ!!」
爽やかな朝、悲鳴で目が覚めた。元からジャージで寝ていたので、髪をざっくりまとめて靴をはき、窓から飛び出した。
「何があった!?」
「お、お嬢様!」
「来てはいけません!危険です!」
制止する使用人達の声を無視して走る。二倍効果か普段より体が軽い。使用人達の頭上を軽々飛び越え、騒ぎの場所に到着した。
「きゅ…」
「きゅきゅ!」
「きゅ」
「きゅーきゅ」
厨房が緑のモフモフに占拠されていた。モフモフ達はあたしに気がついたらしく、あたしの周りに集合した。
「昨日の精霊達か?」
「きゅ!」
皆で元気にハーイしてくれた。なにこれ、可愛い。
「マスターはボクのマスターできゅ!他の精霊にベタベタしたらダメできゅ!」
「ずるいっきゅ!」
「ぬけがけのくせにっきゅ!」
樹があたしの肩に来るとスリスリしてきた。なにこれ、可愛すぎか。うちの樹が世界一可愛い。そんな樹に文句を言う精霊さん達も可愛い。
「とりあえず、腹へったからメシにしよう。料理長、厨房ちっと貸して」
「は?はあ……」
簡単にパンケーキでいいや。卵、牛乳、薄力粉……錬金釜が脳裏に浮かび、この粉で膨らむとか、分量を教えてくれる。うちの錬金釜、便利すぎる。リンゴをシナモンで軽く炒め、樹蜜をたらして完成!我ながらうまそうだな。味見、味見~。うん。うまし!
「マスター!樹もあじみ!あじみしたいっきゅ!」
「熱いから気をつけろよ~。ほれ」
小さく切ったやつをフーフーしてから樹蜜にからめて樹にあげた。ハフハフ食べてて可愛い。
「おいしいできゅううう!」
「ぼくらも食べたいっきゅ!」
「くださいっきゅ!」
「おー、分けてやるから向こうに行くぞー」
『きゅ~!!』
「料理長、邪魔したな」
「お、お嬢様」
「んあ?」
「わ、私にもひと口いただけませんか?」
「おう、かまわん。あ、ついでに食材をもらっていい?」
「う、うまああああああああい!!」
食材をいくつか受け取っていたら、料理長が叫んだ…のはいいが、残りを全部食われた。
『きゅうううううう!??』
樹を含め、精霊達の悲痛な叫びがこだました。食べたものは仕方ない。もっかい作るべ。さっきより多目でな。
「ひどいできゅ!ひどいできゅ!」
料理長が精霊さん達にめっちゃ責められている。ゴツいおっさんが手の平サイズのリス的な生き物に責められて土下座する姿はシュールだ。
「す、すいません!すいません!あまりにもおいしかったもので!」
言葉は通じなくても、責められているのはわかるらしく、料理長は必死で謝罪していた。うん、こんがり焼けた。我ながらうまそう。
「ん」
「これは?」
「これのレシピ。せっかくだから兄様達にも作ってあげて。ほれ、皆で朝メシ食べるぞ~」
『きゅ~!!』
きゃわゆいモフモフ達はあたしについてきた。食堂に入ると、あたし達以外の全員が固まった。
「なんで!?なんで増えてんの!??」
増えるってナニが……あ、精霊さんか。
「増えて…?いや、樹は増えてないよ。樹と住んでた精霊さん達ですよ。ほれ、小さくしてやるから仲良く食べな」
食器が欲しいけど、精霊さんサイズは……錬金釜で普通のナイフからミニチュアサイズの皿とナイフとフォークを作って渡した。意外にテーブルマナーもわかるのか、器用にパンケーキを切って食べている。
「優音、それは?」
「あたしが焼いた、焼きリンゴのパンケーキです。こら、ちゃんと並んで。割り込み禁止!」
はぁん、必死でパンケーキを貪るモフモフ、きゃわゆい。
「……ふむ。ユアン君はそういったモノを好むのか。獣人…魔族はどうだ?好みかね?」
緊張した様子で話しかけてきた血縁上の父。見合いでもさせるつもりか?
「んんん…会ってみないとなんとも……あ、こないだ会った尻尾がモフモフなお兄さんはいい感じだったかな」
とても美人だったし、いい人だった。また会いたいな。
「どこで会ったんだ?」
「え?城でだよ」
「……………ふむ」
血縁上の父は何やら考え始めた。精霊さんにテシテシとおかわりを催促されたので切り分ける。
「ユアン、それボクらが食べても美味しい?」
「え?うん。ヤス兄は甘いの平気だったよね」
「甘すぎないなら」
厨房に行き、もう一回パンケーキを焼いてきた。なんとなくメガ兄分も。いらなかったらあたしが食べよう。
「お待ち~」
「わ、うまそうな匂い!いただきまーす」
パクパク食べるヤス兄。幸せそうな表情だ。逆にメガ兄は戸惑っている。
「…わ、私にもか?」
「食べれなかったらあたしが食べるよ。メガ兄はあんまり甘いもの、好きじゃなかったもんね
「いや、食べる。残さな…………うまい」
「だから無理はしなくて………ん?うまい?」
「いや、初めてだ。甘いのにうまい……」
どうやら、甘すぎるものがダメなだけだったらしい。二人とも完食してしまった。
「…ユアン君」
「はい」
「君に山ほど縁談が来ている。とりあえず年齢が離れすぎたものや条件が悪いものは除外した」
「ちなみに最高年齢は?」
「八十六歳。資産家だから、遺産目当てで嫁ぐか?」
「いや、いい」
でも、最悪ありかもしんない。老後を看取って自由に暮らす……アリだな。
「その八十六歳はこう…色事が大好きなエロじじいとして有名だ。老後を看取ってなら、七十八歳がいる」
「心を読まないでくれ。あくまでも最終手段だから!」
「心は読んでいない。君が口に出していた」
気をつけよう。気が緩みすぎている。好奇心で聞いてみた。
「ちなみに最低年齢は?」
「………一歳だ」
貴族って頭がおかしいんじゃないかな。どうしろと言うんだよ。光源氏っていうか、もはや育児。結婚して出産すっ飛ばして育児。
「まあ…十歳差ぐらいはよくある」
「そうなんだ……」
「お婿さん探してるっきゅ?」
「ユアンは綺麗だから、綺麗なお婿さんがいいっきゅ!」
「ヤルムンデレスは?」
「こっちのテルンネンドも捨てがたいっきゅ」
何故かあたしよりも精霊さん達が盛り上がり、最高のお婿さんを連れてくると出ていってしまった。あと、チラチラ攻略対象を出すな。ヒロインと骨肉の争いをするつもりはない。
「……大丈夫だろうか」
「……まあ、お婿さん(笑)がちょっと迷惑するぐらいできゅよ」
それは大丈夫ではないような。そう思ったがすでにモフモフ達は走り去ってしまったので、パンケーキをモグモグするのだった。




